この太古の時計が私たちの暮らしを支配し、健康を左右する

A clock hangs above the bench in the courtroom of the U.S. Supreme Court in Washington, U.S. April 4, 2016. REUTERS/Jonathan Ernst SEARCH "SCOTUS" FOR THIS STORY. SEARCH "THE WIDER IMAGE" FOR ALL STORIES.
Our biological clocks help time our sleep patterns, alertness, mood, physical strength, blood pressure and much more.Image: REUTERS/Jonathan Ernst
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私たちの暮らしは時間に支配され、時間を使って何をすべきかを決めています。しかし、朝に私たちを起こす目覚まし時計や、夕食に遅れていると知らせる腕時計は、不自然な時計です。私たちの生物学的な営みが従うのは、おそらくあらゆる生命の進化の初期に刻み始めた、はるかに太古のリズムです。

私たち自身、そして地球上のほぼすべての生命の遺伝子には、生物時計の仕組みが組み込まれており、それが約24時間の経過を刻みます。生物時計、すなわち「概日時計」は、睡眠のパターン、覚醒度、気分、身体能力、血圧など、さまざまな働きのタイミングを整えます。

通常の環境では、私たちは24時間周期の明暗を経験し、概日時計はこの信号を使って生物学的な時間を昼夜に合わせます。そして時計は、24時間の一日のさまざまな要求を予測し、状況の変化に先んじて生理機能や行動を微調整します。就寝に備えて体温が下がり、血圧が低下し、認知能力が落ち、眠気が増します。一方、夜明け前には、目覚めて活動が増えることに備えて代謝が活発になります。

概日時計は、すべてのことが同時に起こるのを防ぎ、生物学的なプロセスが適切な順序で進むようにもします。細胞が正常に機能するには、必要な物質が、適切な場所に、適切なタイミングで存在しなければなりません。

何千もの遺伝子を、順序と調和を保ってオン・オフにする必要があります。タンパク質、酵素、脂肪、炭水化物、ホルモン、核酸などの化合物は、厳密な時間内に吸収、分解、代謝され、生成されなければなりません。エネルギーを得て、成長、生殖、代謝、運動、細胞の修復に振り分ける必要があります。

これらすべてのプロセスをはじめ、ほかにも多くの働きにはエネルギーが必要で、いずれも一日の適切な時間に合わせて進めなければなりません。時計がなければ、私たちの生物学的な営みは混乱してしまうでしょう。

先駆的な研究を行ったジェフリー・ホール、マイケル・ロスバッシュ、マイケル・ヤングの3氏は、今週初めに2017年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。この研究により、ショウジョウバエを例として、あらゆる生物において生物時計がどのように時を刻むのか、初めて明確に理解できるようになりました。

時計はどのように働くのか

時計の中心にあるのは「負のフィードバックループ」で、次のような一連の出来事から成ります。時計遺伝子がメッセージを作り、それがタンパク質へと翻訳されます。タンパク質は相互に作用して複合体を形成し、細胞質から核へ移動して、自らの遺伝子の働きを抑えます。こうした抑制作用を持つ時計タンパク質複合体が分解されると、時計遺伝子は再びメッセージと新たなタンパク質を作れるようになり、この周期が毎日続きます。

この負のフィードバックループは、タンパク質の生成と分解にほぼ24時間周期のリズムを生み出し、体内の生物学的な一日を動かします。

ショウジョウバエでのホール、ロスバッシュ、ヤングの発見をもとに、非常によく似た時計遺伝子がマウス、ヒトをはじめ、多くの動物で見つかりました。つまり、私たちの体内で「時を刻む」生物時計は、昆虫、ミミズ、魚、鳥に見られる時計とおおむね同じ仕組みです。

現在では、自らを「朝型」または「夜型」と表現する人の朝と夜の好みも、概日リズムを速めたり遅らせたりする、時計遺伝子の一部に生じる小さな変化に関係していると考えられています。

邪魔をしないで

概日時計の仕組みと、生物学において果たす中心的な役割への理解が、多くの分野の進歩につながりました。なかでも、概日リズムが乱れると、健康とウェルビーイング全体が深刻な影響を受けるという認識が深まりました。

交代勤務者は日中に眠ろうとしますが、睡眠は通常、夜に眠る場合より短く、質も低くなります。ひどく疲れていても、概日システムが体に「起きているべきだ」と指示するためです。その後、概日システムが体を睡眠に備えさせている時間帯に働くことになり、覚醒度も仕事の能力も低くなります。つまり、眠いときに働き、眠くないときに眠るのです。

短期的な概日リズムの乱れは、記憶、問題解決能力、感情反応、注意力に大きな悪影響を及ぼすことがあります。また、長年にわたる夜勤は、心疾患、感染症、がん、2型糖尿病、肥満のリスクを高めることが示されています。概日リズムを軽視すれば、深刻な結果を招きかねません。

概日リズムの乱れは、現代の特に対処が難しい病気のいくつかにも共通して見られます。統合失調症、双極性障害、うつ病などの精神疾患、アルツハイマー病、脳卒中、多発性硬化症などの神経疾患、自閉症などの発達障害、そして白内障の発症を含む重篤な眼疾患では、いずれも概日リズムの乱れが見られます。

概日リズム研究の今後の課題は、この乱れがどのように生じるのかを解明し、その知見に基づいて、健康のあらゆる段階で体内時計を調整する新たな薬や治療法を開発することです。私たちはまさに、刺激に満ちた時代を生きています。

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