新型コロナウイルス感染症の流行下でスタートアップを守ることが不可欠な理由

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Starts up employ around 20% of workers across OECD countries.Image: Unsplash/CoWomen
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  • スタートアップは経済成長、雇用、イノベーションの主要な原動力だが、新型コロナウイルス感染症により新規事業の創出が大幅に停滞している。

  • ポルトガルでは、4月の新規事業創出が70%減少した。

  • 危機の時期は機会をもたらすこともある。Dropbox、Uber、Airbnb、WhatsAppは、2008年の世界金融危機の最中または直後に創業した。

  • 3人の経済学者は、企業の「失われた世代」と、それがもたらす恩恵を防ぐため、政策立案者は3つの重要な方法で、より多くの対策を講じるべきだと論じている。

スタートアップは経済成長と雇用創出の主要な原動力として台頭し、抜本的なイノベーションの触媒となることも多い。若い企業は雇用の約20%を占める一方、OECD諸国全体では平均して新規雇用のほぼ半分を生み出している(OECD 2016)。また、若い企業によるイノベーションは総生産性の伸びに大きく寄与し、米国ではその半分を占めている(Klenow and Li 2020)。

新型コロナウイルス感染症の危機下でも、スタートアップは経済にとって重要な役割を果たし続けている。革新的な若い企業の中には、パンデミックに迅速かつ柔軟に対応し、多くの国が仕事、教育、医療サービスを全面的にデジタル化するうえで重要な役割を果たした企業もあり、医療用品やサービスにイノベーションをもたらしている。1

OECDのCOVID-19 Hub向けに最近発表したノート(OECD 2020a)では、新型コロナウイルス感染症の流行中および流行後にスタートアップが直面する課題と、生じ得る機会を分析している。危機により、スタートアップの創出は減少し、その存続が脅かされ、成長も制約されている。新しい企業が生まれない世代がもたらす経済的影響は大きく、とりわけ雇用への影響が懸念される。スタートアップは雇用創出に不均衡なほど大きく貢献しているためだ。既存のスタートアップと新規企業の創出を支援すれば、こうした影響を緩和できる。政策立案者は短期的な課題に取り組むだけでなく、スタートアップが新たな事業機会をつかむ力を育むことも重要である。起業の障壁を減らし、適切なインセンティブを設け、起業家としての潜在力を高める必要がある。

新型コロナウイルス感染症の流行下でスタートアップが直面する大きな課題

既存のスタートアップの多くは、新型コロナウイルス感染症の危機による大きな課題に直面している。パンデミックがもたらした衝撃に対し、既存の大企業より脆弱だからだ。スタートアップは他の中小企業(SME)に比べて高リスクの活動に取り組む傾向があり、従来型の資金調達に制約を抱え、サプライヤーや顧客との関係もまだ十分に確立されていない。また、少人数の創業チームに大きく依存していることも多く、パンデミック下で労働供給にショックが生じた際、脆弱性がさらに高まる可能性がある。

大きな経済的不確実性が続き、封じ込め措置や需要の大幅な落ち込みによって収益が影響を受ける中、スタートアップの財務基盤はいっそう脆弱になる。存続に不可欠な短期の流動性ニーズを支える支援が必要だ。

多くの国では、危機から経済を守るための政策対応が、特に中小企業の財務上の脆弱性をすでに対象としている。融資保証、直接融資、助成金、補助金など、短期的な流動性ニーズを支える措置が含まれる。しかし政策対応では、他の中小企業と異なるスタートアップの特性を考慮すべきである(OECD 2020b)。スタートアップに特化した措置を導入した国もある。例えばフランスは、スタートアップの資金調達ラウンドのつなぎ資金を含め、流動性を支援するため40億ユーロの基金を設立した。ドイツは、ベンチャーキャピタルによる資金調達を拡大・促進する、スタートアップ向けの支援プログラムを発表した。英国は、資金難に直面する革新的企業を対象とした共同出資基金を発表した(OECD 2020a)。

新型コロナウイルス感染症は、既存のスタートアップだけでなく、新たなスタートアップの創出にも課題をもたらす

危機の時期には通常、事業登録が減少する。最新データの分析(図1)から、2020年3月と4月には多くの国で企業創出が大幅に減少したことが確認できる。前年の同月と比べると、2020年4月の減少率はポルトガルで最大70%に達し、ハンガリー、フランス、トルコではそれぞれ46%、54%、58%だった。オーストラリア、米国、スペインでも、減少幅は比較的小さいものの、依然として大きな落ち込みが見られる。

図1:新型コロナウイルス感染症の流行下における企業創出の減少Image: Vox EU

以下のシミュレーションは、OECD DynEmp3データベースに基づいている。これは、15を超える国の新規企業と雇用創出に関する情報を機密データに基づいて調和・収集したデータベースであり、ある年に参入する企業数が20%減少した場合の、3年から14年にわたる雇用全体への影響を評価する(図2)。シミュレーションでは、Calvino et al.(2016)が提示した、新規企業の雇用創出への寄与の分解方法を用いている。存続した新規参入企業が生み出す平均雇用者数を、スタートアップ比率、参入時の平均規模、生存率、参入後の成長という4要素に分解する。これにより、新規企業の雇用への貢献を左右する4つの側面が明らかになる。この考え方は、Sedláček and Sterk(2020)が紹介したStartup Calculatorと類似している。

最初の側面に着目したシミュレーションでは、参入企業数が20%減少すると、ショックから3年後に総雇用の約0.7%に相当する雇用の減少が持続し、14年後にも0.5%の減少が残ることが示唆される。新しい企業が生まれない世代が経済全体に大きな影響を及ぼすという見解(例:Gourio et al. 2016、Sedláček 2019)を裏付ける結果であり、企業の特性、生存率、参入後の成長の変化によって、影響がさらに強まる可能性もある。新規企業数の減少は、多くの国ですでに見られる企業活動の活力の長期的な低下傾向を強めるおそれもある。

新型コロナウイルス感染症の流行はスタートアップのエコシステムにとって大きな課題であり、今後もそうであり続けるが、現在の危機は短期および長期の機会を生み出す可能性もある。

図2:新しい企業が生まれない世代は、雇用に持続的な影響を及ぼすImage: Vox EU/OECD DynEmp3データベース

危機の時期にもスタートアップには重要な機会がある

新型コロナウイルス感染症の危機が大きな経済的混乱を引き起こしているものの(OECD 2020e)、今、既存のスタートアップと新規企業の創出を支援する措置を講じれば、雇用やイノベーションへの長期的な影響を緩和し、前節で述べた悪影響を抑えられる可能性がある。景気後退期には構造転換が活発化することが多く、それが最終的に、より強く、回復力の高い経済につながることもある。

実際、景気後退期には新規事業の登録数が一般に減少する一方、危機の時期から多くの革新的なスタートアップや企業が生まれ、成功してきた。例えば、Dropbox、Uber、Airbnb、WhatsApp、Groupon、Pinterestはいずれも世界金融危機の最中または直後に創業した。また、AlibabaのTaobaoは、2003年に中国でSARSが流行した時期に創設された。

危機の時期は課題をもたらすだけでなく、起業家に新たな機会を提供することも、こうした事例から確認できる。スタートアップは、厳しい保健衛生上または経済的な状況が生み出す制約への対応に役立ち、変化する選好やニーズにも応えられる。新型コロナウイルス感染症の流行下での関連事例を以下に示す。

第一に、短期的に役立つ抜本的なイノベーションを導入(または拡大)するスタートアップには機会がある。現在であれば、遠隔医療、遠隔パーソナルケア、医療機器、宅配、食品加工、テレワーク、オンライン教育、接触者追跡などのイノベーションが考えられる。こうした短期的なニーズに応えるスタートアップは、的を絞った政策介入による支援を受けてきた。その一例として、欧州委員会は、新型コロナウイルス感染症の治療、検査、監視、その他の側面に関連する技術を持つスタートアップに対し、EIC Acceleratorプログラムの迅速な資金提供に申請するよう呼びかけた。ただし、こうした支援は最終的に、差し迫った需要やニーズがある特定の活動への対応にとどまりがちである。

第二に、そして重要な点として、新型コロナウイルス感染症の流行は、社会や消費者の習慣、ニーズに持続的な変化をもたらす可能性がある。こうした変化を先読みできるスタートアップにとっては、有望な事業機会が生まれる可能性がある。例えば、リモートワーク、電子商取引、教育、医療サービスへの需要は中期的にも変化し、グローバル・バリューチェーンや都市も変容する可能性がある。

そのため政策立案者は、こうした機会への認識を高めるための介入を検討すべきである。特に、デジタル集約型セクターのように、新型コロナウイルス感染症に対してより高い耐性を示す産業が対象となる。こうしたセクターは一般に、参入後の雇用の伸びが高く(図3)、雇用創出にも不均衡なほど大きく貢献している。

図3:デジタル集約型の新規参入企業は、参入後の雇用の伸びが高いImage: Vox EU/OECD DynEmp3データベース。

政策対応は回復の加速に役立つ

政策介入では、短期的な課題に取り組み、短期の流動性と資金調達の利用可能性を支えるとともに、革新的なスタートアップや起業家予備軍に適切な環境とインセンティブを整え、機会を捉える力と能力を高めることを目指すべきである。

具体的には、政策立案者は以下を検討できる。

1. 短期的な課題に取り組む

既存のスタートアップの短期的な資金ニーズを、融資保証、直接融資、助成金、補助金などで支援する。その際、制度の設計ではスタートアップ固有の事情を考慮し、事務手続きを最小限に抑えるとともに、従業員の雇用と所得の確保を支援する(OECD 2020c)。既存の措置について周知し、スタートアップが新型コロナウイルス感染症の危機に適応するための助言を提供する支援策を後押しする(例:支援プログラムの情報を一元化した公式プラットフォーム、キャッシュフロー管理に関する助言、投資家と遠隔でつながるためのベストプラクティスなど)。保健衛生上の危機への対応に役立つ抜本的なイノベーションを支援するため、研究開発や賞金制度を支援し、製品を適応させるスタートアップも支援する(OECD 2020d)。危機の最中は特に、スキルへの投資やオンライン研修を促進し、スキルの陳腐化を防ぐとともに、スタートアップ従業員のスキル向上を促す。

2. 起業の障壁を減らし、適切なインセンティブを設ける

手続きを簡素化し、電子政府への移行を加速することで、スタートアップの行政負担を軽減する。危機の最中(例:煩雑な規制手続き)だけでなく、その後も(例:回復初期段階の衛生・安全要件)、規制の不確実性を最小限に抑える。スタートアップはこうした不確実性の影響を最も受けやすいためである。起業家という立場に伴う障壁の可能性を減らす。特に、パンデミックの最中やその後に重要となり得る、医療へのアクセスや有給の病気休暇に関する障壁などを対象とし、社会保障を個人間で移行しやすくする。つまり、給付の受給資格を仕事ではなく個人に結びつける。民間の関係者と連携し、革新的なスタートアップが成長のあらゆる段階で資金を利用できるようにする。例えば、公的ベンチャーキャピタルの統括基金に追加の公的資金を提供し、スタートアップの資金調達ラウンドで民間投資家との共同投資に活用できるようにする。追加の公的資金で債務不履行となったファンド投資家の持ち分を買い取る、またはベンチャーキャピタルによる資金調達を簡素化する。

3. 起業家としての潜在力を高める

起業家教育を促進する。失業した労働者への給付や生涯学習と組み合わせ、(雇用・失業から)起業への移行を促すとともに、不利な立場にある集団に特に配慮する。産業でのイノベーションの活用や、大学から起業への移行を促すため、大学と企業の連携を推進する。求職者とスタートアップを結びつけるネットワークや、国際市場へのアクセスを促進するネットワークなど、ネットワークの構築を後押しする。スタートアップのエコシステムへの投資を維持する。特に、インキュベーターやアクセラレーターが中期的にも重要な役割を果たし、起業家予備軍や既存のスタートアップに助言、コーチング、メンタリングを提供し続けられるようにする。

短期的な課題への対応、起業の障壁の軽減、起業家としての潜在力の向上は、回復を加速させ、長期的に総雇用を維持するのに役立つ可能性がある。その効果は、i)短期的にスタートアップの存続を支える、ii)新しい企業が生まれない世代による悪影響を抑える、iii)若い企業の成長の可能性を高める、という異なる側面を通じて生じ得る。

参考文献

Calvino, F、C Criscuolo、C Menon(2016)、「若い企業に未来はないのか:スタートアップの動向と各国の政策」、OECD科学・技術・産業政策論文第29号。

Klenow, P J、H Li(2020)。「革新的な成長会計」、所収:NBERマクロ経済学年報2020第35巻、シカゴ大学出版局。

OECD(2016)、「若い企業に未来はないのか?」政策ノート、科学・技術・イノベーション政策総局、6月。

OECD(2020a)、「新型コロナウイルス感染症の時代のスタートアップ:課題に立ち向かい、機会をつかむ」、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)への対応
世界的な取り組みに貢献。

OECD(2020b)、「中小企業政策の対応」、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)への対応
世界的な取り組みに貢献。

OECD(2020c)、「新型コロナウイルス感染症への対応に向けた人々と企業の支援:雇用・社会政策に関する緊急対応の選択肢」、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)への対応
世界的な取り組みに貢献。

OECD(2020d)、「新型コロナウイルス感染症への科学・技術・イノベーション政策の解決策のクラウドソーシング」、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)への対応
世界的な取り組みに貢献。

OECD(2020e)、OECD経済見通し、2020年3月中間報告、OECD出版局、パリ、

Sedláček, P、V Sterk(2020)、「新型コロナウイルス感染症のパンデミック後のスタートアップと雇用:試算ツール」、
VoxEU.org、4月25日。

注

1 例として、商業製品の転用(シュノーケリングマスクを病院で酸素供給に使用するなど)、COVID-19追跡ツール、遠隔患者モニタリング、遠隔診療ツールなど各種のデジタル医療サービスの開始、「非接触型」食品配達の導入、研究者や科学者向けの人工知能ソリューション、リモートワーク用ツール、オンライン学習や娯楽の提供などがある。無料で提供されたものもある。

2 データが示す企業創出の概念は、国によって異なる場合がある。

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