世界各地の高所得国で平均寿命が低下している。新たな2つの研究によると、その一因として、米国の若年成人に及ぼすオピオイド危機の影響と、他国の高齢者に及ぼした深刻なインフルエンザ流行の影響が挙げられる。
平均寿命は、集団の健康と幸福度を測る指標である。平均寿命の広範な、または持続的な低下は、国の社会的・経済的状況、あるいは医療サービスの提供体制や質に問題があることを示している可能性があると、研究者らは『The BMJ』に記している。
最初の研究では、高所得国18か国の動向を調べ、2015年に大半の国で平均寿命が低下したことが分かった。ここ数十年でこれほど多くの高所得国において、男女ともに平均寿命が同時に低下したのは初めてだ。
研究対象の18か国のうち、男性の平均寿命が低下した国は12か国、女性では11か国だった。
「このようなことは数十年起きていません。今回の低下幅は、それ以前の低下幅より大きかったのです」と、研究共著者でロサンゼルスの南カリフォルニア大学に所属するジェシカ・ホー氏は述べた。
研究によると、米国以外の国では、特に65歳以上の成人を中心に、2014~2015年の非常に深刻なインフルエンザ流行が平均寿命の低下を招いた。インフルエンザや肺炎に加え、これらの国の主な死因は高齢化に関連するもので、その他の呼吸器疾患、心血管疾患、アルツハイマー病のほか、精神・神経系のさまざまな疾患が含まれていた。
著者らによると、これらの国の大半では2015~2016年に平均寿命の低下が反転したが、米国と英国では低下が続いた。
米国では、平均寿命低下の要因は若年層に集中しており、特に20代と30代の死亡が目立った。主な原因は、同国で続くオピオイド危機に関連した薬物過量摂取による死亡の増加だった。
しかし、『The BMJ』に掲載された2つ目の研究は、米国の平均寿命低下を招いている問題はオピオイド危機だけにとどまらず、薬物使用や物質乱用とは関係のない幅広い原因に及んでいる可能性を示している。
「主な原因の一つは、オピオイド危機を背景とする薬物の過量摂取による死亡です。しかし、薬物問題だけに注目するのは誤りです。それは氷山の一角にすぎません」と、研究筆頭著者でリッチモンドのバージニア・コモンウェルス大学に所属するスティーブン・H・ウルフ医師は述べた。
「アルコール依存症による死亡や自殺も増加しています。これを『絶望死』と呼ぶ人もいます」と、ウルフ氏はメールで述べた。
さらに、この研究では、心臓、肺、消化器系などの数十種類の疾患による中年期の死亡率も上昇していた。妊娠中や幼児期の死亡率の上昇も確認されたと、ウルフ氏は述べた。
「米国人が人生の盛りを迎える時期の健康に、広範囲に及ぶ何かが影響しています」と、ウルフ氏は述べた。
どちらの研究も、米国や他国で健康や平均寿命の低下に影響している具体的な要因を証明するために設計された対照実験ではなかった。
それでも、これらの研究を合わせて見ると、高所得国が疾病の流行を防ぎ、根強い社会的・健康上の格差に対処するため、より多くの投資を行う必要性が浮き彫りになると、ドイツ・ロストックのマックス・プランク人口研究所に所属するドマンタス・ヤシリオニス氏は述べた。
「社会経済的地位の低い層が抱える健康上の不利益の一部は、食生活の乱れ、飲酒、喫煙といった『従来型』のリスク要因で説明できます。しかし、なぜこうした人々は健康を損なう行動を選びやすいのか、という疑問は残ります」と、研究に付随する論説の著者でもあるヤシリオニス氏はメールで述べた。
「社会的排除、社会的流動性を高める見通しの乏しさ、所得格差の大きさなど、しばしば社会に根ざす心理的要因が、特に最も社会経済的地位の低い層におけるこうした『好ましくない選択』の主な要因であることを示す強い証拠があります」と、ヤシリオニス氏は付け加えた。
集団全体のレベルでは、平均寿命の着実な伸びを維持するのは難しい。より高齢の年齢層で死亡率を下げていく必要があるためだと、ヤシリオニス氏は論説に記している。
「個人のレベルでは、生涯を通じて学び続けることを含め、さまざまな生活習慣の選択も寿命を左右します」と、ヤシリオニス氏はメールで付け加えた。「健康リスクについてよく知り、自分自身の健康状態を把握していることが、長生きの鍵です。」


