レジリエントな健康:新たな投資のフロンティア

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  • 気候変動はシステミックな金融リスクであり、その健康への影響は、経済変動をもたらす要因の中でも特に重大でありながら、価格に十分織り込まれていません。

  • 投資家が今こそこのレジリエントな健康の機会を捉え、成長と社会のレジリエンスの双方を促進すべき時です。

  • フォーラムは、この機会を切り開くために必要な市場情報、政策、パートナーシップの形成を促す「レジリエントな健康への投資」に関する新たな取り組みを開始します。

気候変動に起因する健康リスクはマクロ経済に大きな影響を及ぼす一方、市場のニーズと需要にも大きな変化をもたらします。同時に、政策上のコミットメントと公共投資、急速に進化する技術、ブレンデッド・ファイナンス投資の台頭により、市場ニーズ、イノベーションの実用化への準備、政策の勢い、そして革新的企業の拡大するパイプラインがまれな形でそろいつつあります。投資家が今こそこのレジリエントな健康の機会を捉え、成長と社会のレジリエンスの双方を促進すべき時です。

気候変動はシステミックな金融リスクとなっており、その健康への影響は、世界経済の変動をもたらす要因の中でも特に重大でありながら、価格に十分織り込まれていません。こうした健康リスクは、生産性、保険債務、医療費、国家のレジリエンス、サプライチェーンの安定性に直接影響します。いずれも、長期的な価値を重視する投資家にとって重要な検討事項です。

2050年までに、気候変動に起因する健康影響は、12.5兆ドルの経済損失を生み、さらに1,450万人の死者をもたらす可能性があります一方、薬剤耐性により、世界のGDPが3.8%減少する可能性があります。気候変動が健康に及ぼす影響による労働生産性の損失は、1.5兆ドルを超える可能性があり、対象は食料・農業、生活環境、医療の各分野に限られます。世界の大手ヘルスケア企業だけでも、運営費の増加、事業中断による収益の減少、資産の修繕費用により、2050年までに年間310億ドルの損失に直面すると予想されています。

レジリエンスへの投資

こうした影響により需要が加速し、人々を守り、ケアの継続性を維持する技術やサービスへと投資可能な領域が広がっています。例として、次のようなものがあります。

  • 異常気象による混乱時にますます不可欠となる遠隔医療市場は、2024年の1,610億ドルから、2032年までに7,900億ドル超へ成長すると予測されています。

  • 気候変動は、呼吸器疾患、感染症、慢性疾患の地理的な分布も変化させ、高所得市場と新興市場の双方で診断、ワクチン、治療薬への需要を高めます。

  • 気温の上昇とエネルギー効率基準の強化を背景に、国際金融公社(IFC)は冷却システム市場が2024年の1,500億ドルから、2050年までに少なくとも6,000億ドルへ成長すると予測しています。

  • 特に新興国では、高齢化、気候変動の影響、都市化、経済発展を背景に、医療インフラへの投資が大幅に増加すると見込まれています。

蓄積が進むエビデンスは、レジリエンスへの投資が従来の予想を上回る成果をもたらすことを示しています。調査によると、気候レジリエンスに投じる1ドルごとに10ドルを超える経済的便益が生まれ、経済的リターンは平均で年率20%超(医療サービスでは最大79%)に上ります。ボストン・コンサルティング・グループの推計では、適応・レジリエンス市場は2030年までに0.5兆~1.3兆ドルに達する可能性があり、ヘルスケア・ライフサイエンス企業の便益費用比は7対1です。

世界銀行による医療分野の気候適応ソリューションの分析もこの傾向を裏付けており、医療費削減を含む推定投資収益率は次のとおりです。

  • レジリエントな医療インフラへの投資1ドルにつき168~317ドル。一方、現在、インフラ投資87ドルにつきわずか1ドルしか、レジリエンスを考慮したプロジェクトに充てられていません。

  • ドローンを活用した医療用品のサプライチェーン配送への投資1ドルにつき416ドル。

  • テキストメッセージを活用した遠隔医療サービスへの投資1ドルにつき15ドル。

政策と資金調達の後押し

技術革新の加速、ライフサイエンス企業の取り組み、それを可能にする公共政策、そして大規模な呼び水的投資や譲許的投資など、市場を形づくる動きがこうした機会を後押ししています。

かつては実験段階と見られていた技術が、今では投資可能となり、大規模展開の準備が整っています。医療用ドローン配送網は、新興市場と高所得市場の双方で試験導入され、その実現可能性が実証されています。AIを活用した早期警戒システムにより、保険会社、病院、政府は熱波、媒介生物による感染症の発生、インフラへの負荷を予測できるようになっています。省エネ型エアコンは費用対効果が実証され、個人向け機器は健康リスクの効果的な監視を可能にし、パラメトリック保険商品は世界各地で導入されています。

ライフサイエンス企業も製品ポートフォリオを適応させています。一部の企業は、研究開発パイプラインの50~80%が、気候変動によって悪化する疾患に対応するものになったと報告しています。高温で安定する製剤、気候変動に起因する状況に対応する新しいワクチン、現場で使える診断ツールの開発が急速に進んでいます。

レジリエントな健康分野のイノベーションと初期段階の投資を促す、新たな資金調達の仕組みが生まれています。気候・健康資金提供者連合には35を超える慈善団体が参加し、イノベーションと初期の事業拡大を支援するため、3年間で3億ドルを拠出することを約束しています。多国間開発銀行は、気候・健康に関する共同ロードマップに合意し、民間資本の呼び込みを視野に投資を拡大しています。この分野のインパクト創出型事業のインキュベーションと規模拡大に焦点を当てた仕組みが、各地で立ち上がっています。たとえば、PATH/グローバル・イノベーション・ファンド、テマセク・トラスト、グランド・チャレンジズ・カナダ、AVPN、Zincなどが挙げられます。今後数年間、こうした仕組みは投資可能なソリューションや事業のパイプラインを拡大し、スタートアップのリスクを軽減するとともに、株式、融資、インフラ投資家にとって体系的な参入経路をつくります。

最後に、政策上のコミットメントが明確で力強い市場シグナルを発し、各国政府はこの健康レジリエンスの課題に急速に足並みをそろえています。G7保健大臣は、官民双方の関係者に対し、投資を拡大するよう呼びかけています。一方、G20は、気候変動に適応した医療技術とデジタルヘルス・インフラを支援することを約束しました。COP28のヘルスデーには、120を超える国々とその資金提供パートナーが、この課題に関する初の世界的な政治的コミットメントを表明し、10億ドルを超える資金拠出を約束しました。EUのライフサイエンス戦略には、気候変動に強い医療イノベーションの調達に3億ユーロが盛り込まれ、開発者への商業的インセンティブが強化されています。

フォーラムは連携を通じて、リーダーによる医療システムの強化をどのように支援しているか

ヘルスケア・センターは、アクセス、公平性、レジリエンス、備えなど、世界各地の医療システムが直面する課題への理解を深めるため、リーダーをつなぎます。

信頼に基づく対話と官民連携を通じて、センターはパートナーが共通の優先事項について足並みをそろえ、健康成果の向上に向けた集団的な行動を進められるよう支援します。

センターの取り組みを見る

レジリエントな健康への投資

レジリエントな健康は、長期的視点に立つ資本にとって高成長のフロンティアとなりつつあります。拡張性があり、投資可能で、リスクを低減し、加速する世界の政策や市場の勢いにも沿っています。

こうした強固な基盤を踏まえ、世界経済フォーラムは「レジリエントな健康への投資」に関する新たな取り組みを開始します。レジリエントな健康への大規模投資を切り開くために必要な市場情報、投資を可能にする政策環境、リスク軽減に向けたパートナーシップの形成を支援します。この取り組みでは、投資可能なソリューションを把握し、融資適格性とリスク・リターンを分析するとともに、政策立案者、呼び水的投資家、商業投資家との投資対話を開催します。

レジリエントな健康の機会を生かしたい投資家の皆さまに、私たちの取り組みへの参加を呼びかけます。

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