英国、米国、EUをはじめ多くの国々では現在、程度の差こそあれ「ロックダウン」が実施されており、レストランやバー、店舗、学校、ジムが閉鎖されている。新型コロナウイルスが引き起こす呼吸器疾患COVID-19への感染やその拡大を避けるため、市民には自宅にとどまることが義務づけられるか、少なくとも強く推奨されている。
研究者たちはウイルスに対するワクチンや治療法の発見に向けて着実に進んでいるが、最善のシナリオでも、実用化までにはおそらく12~18カ月かかる。
それまでの間、個人の健康を守り、感染の連鎖を断ち切るために利用できる介入策は、徹底したソーシャルディスタンスの確保がほぼ唯一だ。これにより、より脆弱な人々がこのパンデミックを生き延びる可能性を高められる。
では、ロックダウンは具体的にどのように機能するのだろうか。重症化リスクが低い若く健康な人々でさえ、できる限り自宅にとどまることがなぜ重要なのだろうか。
目標:R<1
ロックダウンの目的は、インペリアル・カレッジ・ロンドンのCOVID-19対応チームによる新たな研究が説明するように、再生産を抑えること、つまり、確認された感染者1人が感染させる人数を減らすことだ。
目標は再生産数(「R」)を1未満(R<1)に保つことだ。つまり、1人の感染者が平均して他の1人未満に感染させる状態にする。
研究の著者らによると、これを実現するには2つの方法がある。
緩和とは、「流行の拡大を遅らせるが、必ずしも止めるわけではなく、医療需要のピークを抑えながら、重症化リスクが最も高い人々を感染から守る」ことだ。疑い例とその同居者を隔離し、高齢者や重症化リスクが最も高い人々のソーシャルディスタンスを確保することで実施する。
抑制とは、要するにロックダウンであり、人口全体のソーシャルディスタンスを「無期限に」確保し、学校や大学を閉鎖することで、「流行の拡大を逆転させ、感染者数を低い水準に減らす」ことを目指す。
研究のモデルによれば、ロックダウンは多くの人にとって苦痛を伴うものだが、効果がある。
ロックダウンやソーシャルディスタンス対策を一切講じなければ、約3カ月後に死亡者数がピークに達すると予測される。このシナリオでは、英国と米国の人口の81%が感染し、英国で51万人、米国で220万人が死亡する。
これに対し、確認例と疑い例を隔離し、高齢者や脆弱な人々のソーシャルディスタンスを確保すれば、「集中治療需要のピークを3分の2抑え、死亡者数を半減できる」。
R<1という目標に近づくには、「感染者の隔離、人口全体のソーシャルディスタンスの確保、そして家庭内隔離か学校・大学の閉鎖のいずれかを組み合わせる必要がある」と、研究者らは述べている。
研究によると、この「集中的な対策が実施されれば、介入開始から約3週間後にピークを迎える集中治療の必要量が減少し、介入策が続く限り、その後も減少していくと予測される」。

「無期限」という言葉は聞きたくないものだが、少なくともワクチンが利用可能になるまでは、長期的な抑制が感染や死亡を減らす最善の方法となる可能性がある。
では、ロックダウンは効果を上げているのだろうか。
2020年1月23日、中国政府は感染拡大の発端となった人口1,100万人の都市、武漢を含む湖北省をロックダウンした。交通機関の出入りを停止し、数千万人が仕事や学校に行くことを禁じ、食料品や医薬品を販売する店以外はすべて閉鎖した。地域によっては、住民は店に行く回数を制限されたり、物資の配達を注文するよう求められたりした。
数千万人を対象とするこの前例のないロックダウンは、「大規模な実験」と見なされたが、効果があった可能性がある。ロックダウン後、感染者数の増加は鈍化し始めた。3月19日、中国国家衛生健康委員会は、湖北省で新たに確認された感染者はいなかったと発表した。
イタリアとスペインでも同様に厳しい全国規模のロックダウンが実施され、それぞれ3月9日、3月15日に始まった。市民は、仕事や食料品の買い物、通院を除き、自宅にとどまることを義務づけられている。
ただし、ロックダウンが早く始まったイタリアの一部地域では、すでに「感染曲線の平坦化」が見られる。例えばローディでは2月23日にロックダウンが始まったが、ベルガモでは3月8日まで実施されなかった。現在、ローディでは感染者数が横ばいになりつつあるようだ。
今週、イタリアとスペインはいずれも、COVID-19関連の死者数が1日あたりで過去最多となったと報告した。しかし、仮説上のモデルと現実のロックダウンの双方が正しければ、ピークは近づいている可能性がある。




