従業員に無料の電子たばこやその他の禁煙製品を提供して紙巻きたばこをやめてもらう方法は、禁煙の報奨金を取り上げると脅す方法ほど効果的ではない。職場でのさまざまな報奨プログラムの効果を比較した新たな研究が明らかにした。
『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に掲載されたこの研究結果は、電子たばこは従来の禁煙補助より喫煙者の禁煙に役立つという、電子たばこ愛好家の主張に疑問を投げかけている。
「電子たばこは人々の禁煙に役立つのか。答えは明らかにノーです」と、筆頭著者でフィラデルフィアにあるペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院のスコット・ハルパーン博士は電話インタビューで語った。「無料の従来型禁煙補助を提供したり、情報を伝えたりする方法より優れているという証拠は確認できません」
この研究が重要なのは、禁煙する意思をすでに固めているかどうかにかかわらず、喫煙する従業員全員を対象に禁煙プログラムを検討した初めての研究かもしれないからだ。
結果は、動機がなければ、好ましい成果も得られないことを示している。
米国に拠点を置く54社の従業員6,006人を対象にしたところ、どの方法でも6カ月間の禁煙率は3%未満だった。
「これは実践的な研究です。多くの研究は禁煙を望む人を対象に始めます」と、研究に関与していない米国肺協会の上級科学顧問、ノーマン・H・エデルマン氏は述べた。この研究には企業内の喫煙者全員が含まれていたため、「数値がこれほど低いのです。禁煙を望む人だけを分ければ、率は10%台になります」
この研究では、研究用ウェブサイトに一度でもログインした従業員(該当者はわずか1,191人)を、禁煙する意思があると分類した。
この「参加意欲のある」参加者の一部は、禁煙の利点に関する情報だけを受け取り、励ますためのテキストメッセージを送るサービスを利用できるグループに割り当てられた。このグループで6カ月間たばこを吸わずに過ごせた人は1%未満だった。
ニコチンパッチ、トローチ、ガムなどの禁煙補助製品、またはFDA承認の禁煙薬2種類のうちいずれかも無料で受け取った「参加意欲のある」従業員の禁煙率は、わずか2.9%だった。
参加者が好みのフレーバーを選べる無料の電子たばこを提供すると、禁煙率は4.8%に上昇した。しかし、無料のパッチなどを提供した場合との差は統計的に有意ではなかった。
第4グループでは、無料の禁煙製品に加えて、たばこを断つことへの現金報奨を提供した。最初の1カ月に100ドル、3カ月時点でさらに200ドル、6カ月間禁煙を続けた場合に300ドルを受け取り、禁煙できた人は9.5%だった。
これは禁煙補助だけを無料で受け取った従業員より大幅に良い成績だったが、電子たばこグループとの差は統計的に有意ではなかった。
最も良い成績を収めた従業員には、希望する禁煙製品に加え、600ドルを口座に預けた。6カ月間禁煙を続けなければそのお金を失うという条件だった。
このグループの成功率は12.7%で、電子たばこまたは無料の禁煙補助だけを受け取った人々より明らかに高かった。
これは人間の行動に見られる、奇妙な心理的特性を反映している。「経済的には同じ価値なのに、人は100ドルを得ることより、100ドルを失うことを避けるほうにずっと強く動機づけられます」とハルパーン氏は指摘した。
大半の大企業は、禁煙した喫煙者に医療保険料の割引を約束している。「この方法の問題は、実質的に節約できるお金があまり実感できないことです」と同氏は述べた。「現金を直接渡すわけではありません」。そのため、こうしたプログラムはあまり効果がない。
研究チームの推定では、6カ月間禁煙に成功した人1人当たりの平均費用は3,461ドルだった。数カ月ごとに現金を支給した場合は3,623ドル、無料の電子たばこを提供した場合は5,416ドル、無料の禁煙補助を提供した場合は7,798ドルだった。
「最も妥当な推定では、喫煙者を雇用する費用は非喫煙者より年間3,000~6,000ドル高くなります。したがって、こうしたプログラムに800~1,000ドルかかったとしても、雇用主と保険会社の観点からは大幅なコスト削減になります」とハルパーン氏は述べた。
6カ月時点でたばこを断っていた喫煙者の約半数は、1年後も喫煙していなかった。
出典:bit.ly/2GM2xra 『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』、2018年5月23日オンライン掲載。

