ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)、すなわち、誰もが経済的困難に陥ることなく必要な保健医療サービスを利用できる状態の実現は、大きな目標です。このビジョンと、「誰一人取り残さない」という基本原則を実現するには、最も周縁化され、支援が届きにくい人々に支援を届けることに取り組まなければなりません。興味深いことに、こうした人々は、マラリアの流行終息に向けて軌道を取り戻すために、私たちが支援を届けるべき人々でもあります。
2015年以来、Comic ReliefとGSKは、マラリア対策に取り組むため、マラリア対策・保健改善パートナーシップに共同で取り組んできました。私たちは、地域および国の保健医療サービスを強化することが、この病気に対抗する最も効果的な方法の一つだと考えています。これにより、保健医療制度全体の強靱性も高まり、UHC実現に向けた重要な一歩となります。
保健医療制度を強化することで、マラリア対策を改善してきました。こうした教訓は、UHC実現に向けた取り組みにも活かすことができます。
マラリア対策から、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現に向けて何を学べるのでしょうか。
1. 最前線で働く地域保健従事者に力を与える
マラリア対策は、世界で最も貧しい国々の多くで医療制度への入り口となっています。そうした国々は、UHCの実現に向けて最も大きな課題を抱えています。地域社会と協力し、地域の保健医療制度を強化することで、人々を中心に据えたマラリア対策を進めれば、公的機関への信頼を築くことができます。
ガーナ北部では、マラリア対策の一環として、ガーナ保健サービスの職員や民間医療提供者にマラリア症例の管理と治療に関する研修を行うほか、280人の地域保健ボランティアのネットワークを支援しています。こうした取り組みにより、ガーナでは、保健医療制度の異なるレベル間で症例管理をより適切に調整するための新たな紹介システムが導入されました。
安全で質の高い幅広いサービスや製品を、支援が届きにくいすべての地域社会に提供できるよう、十分な訓練を受けたプライマリ・ヘルスケア従事者がいなければ、UHCは実現できません。
2. サーベイランスと情報システムを強化する
マラリア対策の進展を維持し、再流行のリスクを避けるには、対象を絞った情報に基づく対応が不可欠です。重点国全体で保健サーベイランスと情報管理システムに投資することで、プライマリ・ヘルスケアの従事者がデータを収集・分析する能力を高めるとともに、保健医療制度の各レベル間、さらに民間部門と公共部門の間でデータを統合できます。タンザニアでは、民間の診療所や検査機関を対象としたサーベイランスシステムが、民間部門のデータを収集し、公的な管理情報システムに統合しています。
保健情報システムが、適時性と信頼性を備えた質の高いデータを収集できるようにすることは、強固な保健医療制度の構築とUHCの実現に不可欠です。そうしたデータを分析すれば、弱点のある分野を特定し、革新的な解決策を策定し、公平性の目標に向けた進捗を追跡できます。

3. 保健医療の枠を超えて考える
シエラレオネのフリータウンでは、劣悪な住環境や衛生環境、ごみ収集の不備が、マラリアなどの媒介生物による感染症の拡大を防ぐうえで障害となることを目の当たりにしてきました。一方、イボンヌ・アキ=ソーヤー市長(OBE)が主導する同市の「トランスフォーム・フリータウン・アジェンダ」と「最も清潔な地区コンテスト」は、衛生環境の改善に向けて保健医療の枠を超えた統合的なアプローチを推進しており、その結果、マラリアの感染を減らしています。
マラリアの根絶にもUHCの実現にも、政府が健康の社会的・環境的決定要因に取り組む必要があります。そのためには、保健医療分野の内外で、調整や分野横断的な取り組み、継続的な政治的リーダーシップが求められます。
4. 新たな伝え方やストーリーテリングを見つける
映画、テレビ、ラジオなどのメディアは、保健医療教育や疾病予防において重要な役割を果たします。また、人々を鼓舞し、意欲を高め、誰もが声を上げられるようにします。地域社会や一人ひとりにカメラやマイクを渡し、自らの物語を語ってもらうことには大きな力があると、私たちは実感してきました。シエラレオネでは、地域の記者たちが、マラリアが人々の暮らしに及ぼす影響を記録した短編映画を制作し、国内外の報道で取り上げられました。その作品は、従来のメディアではほとんど伝えられてこなかった、知られざる物語や知見を明らかにしています。

誰一人取り残さないということは、地域の人々が自らの物語を語り、変化を求める力を得ることを意味します。人々は、保健医療制度の発展とUHCの実現に欠かせない担い手です。
5. 協力し、パートナーシップを通じて取り組む
私たちのパートナーシップは、その性質上、企業部門とNGO部門を結びつけます。また、その投資を通じて、世界、地域、現地の境界を越えるネットワークを築き、連携によるインパクトを促進します。
例えば、データ・スコアカードを通じて、意思決定や説明責任のプロセスに地域社会が参加する力を強化した結果、保健医療の成果が向上しました。スコアカードを活用することで、市民、地方自治体、保健医療従事者が一堂に会し、医療施設の現場と制度全体の双方で、保健医療サービスの質を高める方法を検討できます。
共通のアジェンダ
公平性を重視したマラリア対策は、貧困と不平等を減らし、地域社会が繁栄するための人材面・経済面の可能性を解き放つことにつながります。これは、UHCと持続可能な開発目標に反映された基本的なビジョンです。
ガーナ北部の自給農家、アブグリ氏は、こう説明してくれました。「病気の子どもの世話にかかる時間や不安がなくなっただけでなく、薬を買うために使っていたお金を節約して、農地の肥料を買えるようになりました。」
保健医療制度を強化してマラリア対策を改善することで、アブグリ氏のような人々を支援できます。そして、UHCという大きな目標の実現に向けた世界的な取り組みに必要なエビデンスの構築にも貢献できます。

