病院と同様、ホテルも今や、安心して利用できる施設だと顧客に確信してもらう必要があります。
経営者は、自社をまず安全を提供する企業、次にホスピタリティを提供する企業として捉え直す必要があります。
新型コロナ後の未来への移行を成功させるための9つの教訓をご紹介します。
ホテルと病院は、困難でありながら共通する課題に直面しています。新型コロナウイルス感染症の感染者急増を抑えることを目的とした当初の休業措置の後、社会の信頼を取り戻すことです。世界各地で大半のホテルが休業し、病院の多くも、新型コロナウイルス感染症以外の「選択的」手術や診断を休止していました。
その結果、病院とホスピタリティ業界はともに、施設が安全だと社会に確信してもらうという同じ課題に直面しています。双方にとって信頼は不可欠であり、その信頼は、適切に伝えられる安全対策から生まれます。自社の事業を捉え直してみてください。新型コロナウイルス感染症の流行前、皆さんは安全手順を備えたホテル企業でした。今や、ホテルを持つ安全企業なのです。
ホスピタリティ業界が病院業界から何を学べるかについて、議論を始めてほしいと依頼されました。
1. 従業員の安全を最優先する。これだけは強調してもしきれません。ホスピタリティ業界が顧客の信頼を築くうえで、これが何より重要です。重要な点は2つあります。従業員の安全を守るために何をするか、そして何をしているかをどう伝えるかです。病院では、全員のマスク着用、普遍的予防策、清掃手順によって、職員間のウイルス感染率を下げられることが分かりました。地域社会で感染が広がっているため、大企業では従業員の一部が感染するでしょう。従業員がその感染を自社のせいだと考えるかどうかは、安全対策の有効性と、それを最優先事項としてどれだけ適切に伝えたかに大きく左右されます。安全を最優先にしてください。
2. インシデント指揮センターを設置する。このグループは毎日会合を開き、全員が明確な役割を担う必要があります(インシデント指揮官、運営責任者、計画責任者、物流責任者、人員配置責任者、広報責任者)。インシデント指揮官は最高経営責任者にしてはいけません。各責任者は担当分野の専門家であり、優れたコミュニケーション能力と批判的思考力を備えているべきです。小規模な組織では、複数の役割を同じ人に割り当ててもよいでしょう。大規模な組織では、各役割を別々の人に割り当て、チームが支援する体制にしてください。この危機の性質上、極めて不確実で、情報も全般に不足しています。正式なインシデント指揮体制を整えてこそ、適切な判断を下し、その判断を確実に実行できます。私たちからの助言です。すでにインシデント指揮体制があるなら、それを維持してください。組織内の各部門がその体制を迂回することを認めてはいけません。優れたインシデント指揮プロセスの要は、絶え間ないコミュニケーションです。関係する情報や問題の可能性は、どんなものでも指揮レベルに報告しなければなりません。
3. 普遍的予防策と研修。HIVの流行後、医療従事者は患者のあらゆる種類の体液に触れないよう、継続的に訓練されてきました。ホスピタリティ業界の全員にも、同様の再教育が必要になります。
4. 清掃手順。ホテルの客室より病室のほうが清掃しやすいものの、徹底した清掃は効果があります。病院の手順には、患者が退室してから1時間待つこと(可能な場合)、すべての硬質表面に抗ウイルス洗剤を使うこと、清掃スタッフが個人用防護具を着用することなどがあります。紫外線を使うホテルも出てくるかもしれません。客室の内外や、エレベーターなど手が頻繁に触れる場所の近くに手指消毒剤のディスペンサーを設置することを検討してください。警戒している顧客が自分で手が触れる場所を拭けるよう、客室に清掃用ワイプを置くことも検討してください。
客室をどのように清掃したかを詳しく記した案内を、各ベッドに置くことを検討してください。清潔さを自社のアイデンティティの一部とし、それを目に見える形にしましょう。ウェブサイトやホテルのアプリで、客室の清掃日時、使用した消毒剤、エアフィルターの検査・清掃方法を随時知らせてください。安全を自社の特長として、いち早く打ち出しましょう。
5. テクノロジーに投資する。「接触の少ない」体験へと移行しましょう。モバイルチェックインに投資し、ロビーにいる場合でも利用するよう促してください。理想的には、宿泊客が建物に入り、客室の外ではどの表面にも触れずに済むようにします。これはホスピタリティ業界にとってのiPhone登場時のような転機です。医療分野が遠隔医療を急速に導入したように、ホテルもオンラインチェックインへの移行を急ぐ必要があります。そして、レストランのぼろぼろのプラスチック製メニューはどうでしょうか。廃止すべきです。
6. ソーシャルディスタンスを保つ。例えば、待合室や混雑したロビーをなくしましょう。顧客はチェックインのために混雑した列に並びたくありません。レストランは、テーブルの間隔を広げて営業を再開する必要があります。
7. 空気ろ過とエアロゾル感染の科学的知見を調べる。病院では陰圧室を使用できますが、レストランやホテルでの導入は難しいでしょう。しかし、レストランでエアロゾル感染が起きたとの報告は、空気を清浄に保つ換気設備への投資が必要であることを示しています。
8. 個人が「安全」とされる条件について、今後示される勧告を理解し、追跡する。新型コロナウイルス感染症に現在かかっていないことを証明する検査、または抗体検査によって感染歴があり、現在は安全であることを示す検査が開発されると予想しています。この科学はまだ初期段階ですが、従業員や利用客が感染力を持つ可能性が低いことを示す「渡航」証明書につながるかもしれません。
9. 最後に、顧客とスタッフ双方に安全な環境を提供するという約束を伝え、その約束を実行してください。研修、テクノロジー、安全への投資は、長期的に実を結びます。清潔さと安全性に関する業界団体の評価制度に参加しましょう。安全を実現するホテルやレストランは、すぐに他社との差別化を図れるでしょう。
ちなみに、病院も同じように自らを捉え直す必要があります。かつて私たちは、安全手順を備えた医療企業でした。今や、医療を提供する安全企業です。スタッフを通じて実現するこのような約束が、顧客の再訪を促します。

