中南米諸国の元首脳4人は、新型コロナウイルスが地域にもたらし得る壊滅的な影響について警鐘を鳴らしている。
元首脳らは、ラテンアメリカ・カリブ地域の各国政府に、効率的かつ効果的な対応を求めている。そうしなければ、この地域の歴史上、最も悲惨な出来事の一つになりかねないと述べている。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、前例のない規模で、期間も見通せない衝撃である。その影響は壊滅的だ。適切に対処しなければ、この危機はラテンアメリカの歴史上、最も悲惨な出来事の一つを引き起こしかねない。
これまでのところ、この地域の政策対応にはばらつきがある。複数の政府は迅速に対応し、公衆衛生の保護を最優先課題とした。残念ながら、パンデミックのリスクを過小評価し、市民に誤った情報を与え、科学的証拠と自国の専門家の助言の双方を軽視した政府もある。そうした指導者たちは、悲劇のさなかにポピュリズム的で分断を招く政治を追求する道を選んだ。
パンデミックによる死者を最小限に抑えることが、ラテンアメリカの最優先課題でなければならない。政策担当者は、医療制度の強化、病院への資源配分、ホテルや会議場などの遊休施設の一時的な転用、検査能力の大幅な拡充に取り組むべきだ。
ラテンアメリカの指導者たちは、医療物資やその他の重要資源に対する輸出規制を非難し、世界保健機関(WHO)への資金拡充を求めるべきだ。これは、WHOへの資金拠出約5億ドルを凍結するという、米国のドナルド・トランプ大統領による無謀な決定に反する立場である。検査の実施、患者の治療と隔離、そしてパンデミックを終息させる決定的な解決策となる治療薬とワクチンの開発能力を高めるには、保健当局間のより強力な国際協調が必要だ。
経済への打撃は甚大だ。国内生産の混乱に加え、ラテンアメリカ経済は輸出量と価格の下落、観光収入と送金の減少、大規模な資本流出に見舞われている。経済の広範な分野に及ぶ供給ショックに需要の急減が重なれば、景気後退の悪循環を招くおそれがある。
それを防ぐには、家計所得を守る大胆な政策が不可欠だ。危機によって脆弱な立場に置かれた人々への現金給付が必要となる。これには、雇用補助金や失業保険を利用できない非正規労働者や自営業者も含まれる。
企業への支援も欠かせない。雇用の維持を条件に企業の賃金支払いを助ける補助金は、危機の間、企業と労働者の双方を守り、状況が正常化した際の迅速な景気回復に不可欠である。
広範な企業倒産を防げなければ、パンデミックの次の犠牲者は銀行システムになるかもしれない。その段階では、決済システム、ひいては経済全体が崩壊する危険にさらされる。
多くの企業、特に中小企業は、危機が続く間、大幅な収入減に苦しむことになる。支援がなければ、流動性の不足はすぐに支払い能力の問題へと発展する。納税猶予、融資の借り換え、補助金付き融資だけでは十分ではない。
この緊急事態に対応するには、銀行が融資を続けられるよう、前例のない政府の信用保証が必要だ。また、融資拡大を促す一時的な規制変更も求められる。十分な資本を持ち、適切に運営されている国有銀行も、主導的な役割を果たせる。
より広く見れば、政策は国ごとに異なるものの、あらゆる地域で景気回復を後押しするには、通常を大きく上回る財政資源が必要になるだろう。政府は、健康上のリスクを悪化させることなく、雇用と経済活動を刺激する必要がある。
問題は、ラテンアメリカの現在の政策余地が、2008年の世界金融危機後よりもさらに狭まっていることだ。財政支出の増加分は、優先度の低い分野の予算調整で相殺すべきである。政府が、結果として拡大する財政赤字を妥当な期間内に是正すると約束すれば、信用格付け引き下げのリスクを抑えられる。
財政収支と国際収支の双方に対する対外支援は不可欠であり、とりわけラテンアメリカの小規模で開発の遅れた国々にとって重要だ。民間企業と政府の双方が赤字を拡大させれば、各国の経常収支赤字も拡大する可能性が高い。近年の新興国からの資本流出は、現代の金融市場史上でも最大級の資本フローの逆転の一つであり、問題をさらに深刻化させている。
それに伴う新興国通貨の下落は、不安定化を招く要因となり得る。この地域の多くの経済にとって、こうした複合的なショックに対処する唯一の手段は、はるかに大規模な公的対外支援となるだろう。
国際通貨基金(IMF)は、ここで重要な役割を担う。IMFは各国の短期的な外貨と財政のニーズに対応し、期間を見通せない危機の間も経済支援を続けなければならない。IMFには、より多くの資金と、それを迅速に拠出する能力が必要だ。ラテンアメリカ各国政府は、IMFの世界的な準備通貨である特別引出権(SDR)を総額1兆SDR、新たに発行するよう、結束して求めるべきである。
SDRはIMFのクォータに応じて加盟国に配分されるが、基金が監督する共通プールを設ければ、比例配分ではない配分も実現できる。加えて、新規借入取極(NAB)を直ちに倍増すれば、今後急増する融資需要に対応するために必要な能力をIMFに与えられる。最後に、従来型のIMF融資プログラムは期限までに承認されないため、迅速に資金を拠出し、条件が少ない制度(迅速融資制度など)へのアクセスを大幅に拡大するか、新たなパンデミック向け融資制度を設けるべきである。
準備通貨を発行する主要中央銀行は、中央銀行の流動性を仲介するIMFまたは国際決済銀行を通じて直接または間接に、スワップラインへのアクセスを広げることで支援できる。各国の中央銀行は、必要に応じて新たな手段を取り入れながら、利用可能なあらゆる手段を用いて、金融市場と経済に十分な流動性を供給すべきだ。
最後に、世界銀行、米州開発銀行、CAF―ラテンアメリカ開発銀行などの多国間開発銀行(MDB)は、この地域への純融資額を倍増させ、流動性の高い世界の資本市場を活用して、さらなる予算支援を提供すべきである。例外的な状況にあり、市場へのアクセスがない国では、債務返済の一時停止が公的融資を補完し得る。
MDBはまた、危機対応に関わるさまざまな政策分野について各国に指針を示すべきだ。そこには、新型コロナウイルス感染症の罹患率と死亡率に関する独自の推計も含まれる。特に、政府が健康上の脅威を過小評価している国では重要である。一刻を争う。
このパンデミックが突きつける課題は、近年の歴史に類を見ない。世界も、ラテンアメリカ・カリブ地域も、対応の遅れや不十分な対応を許容できない。こうした不確実な時代に最良の指針となるのは、ポピュリズムや扇動政治ではなく、相互の信頼、透明性、理性である。危機を、苦労して勝ち取った権利を弱める口実にしてはならない。むしろ、ラテンアメリカの民主主義を強化し、市民の期待に応えられることを示す機会とすべきだ。
