米国の出生率は過去最低を更新し、出産可能年齢の女性1,000人当たり62.0人となった。これは、最新の政府統計によるものだ。この数字を懸念し、出生率の低下が国の経済に問題をもたらすと心配する人もいる。一方、限りある天然資源を案じる人々は、出生率の「低下」を肯定的に見るかもしれない。
しかし、この議論とは別に、疑問は残る。これは本当に過去最低なのだろうか。簡潔に答えるなら、話はそう単純ではない。
それは、出生率を測る方法が複数あるためだ。出生率の指標として最もよく使われるものは、一般出生率(GFR)、完結出生力、合計特殊出生率(TFR)の3つである。いずれも出生行動を少しずつ異なる形で捉えている。順に、女性が現在子どもを産む年ごとの割合、生涯に産む子どもの数、または現在の出生パターンに基づいて推計した仮想的な子どもの数を示す。
どの指標も「正しい」「間違っている」というものではないが、それぞれ出生率がいつ底を打ったかについて異なる姿を示す。

国立保健統計センターの最新報告は、一般出生率を用いて、2016年の米国の出生率が過去最低だったことを示した。通常15~44歳と定義される出産可能年齢の女性1,000人当たり、出生数は62.0人だった。
ここで取り上げる他の出生率指標と同様、GFRは総人口の規模や、人口に占める出産可能年齢の女性の割合には左右されない。ただし、出産可能年齢の女性の年齢構成の変化には影響を受ける。ほかの条件が同じなら、出産のピーク年齢にある女性の割合が高いほど、一般出生率も高くなり、その逆も同様である。
政府が示したGFRの過去最低値は、主に30歳未満の女性の出生率低下によるもので、その一因は2000年代後半の大不況にある。景気後退時には、子どもを持つことを先送りする傾向がある。ただし、出産のピーク年齢にある女性(20~34歳)の割合もわずかに低下しており、これも出生率低下の一因となった可能性がある。
2つ目の出生率指標は、完結出生力で、女性が生涯に産む子どもの数を数える。研究者は通常、15~44歳を出産可能年齢とみなし、この年齢層の女性の出生データを収集する。そのうえで、40~44歳の女性は大半が出産を終えているとの前提に立ち、この年齢層の女性がこれまでに産んだ子どもの数を「完結出生力」として測定する。この指標によると、1976年以降の米国の出生率の最低点は2006年ごろで、出産可能年齢の終わりに近い女性が生涯に産んだ子どもの平均は1.86人だった。
完結出生力は過去を振り返る指標であるため、近年の出産パターンを要約する一方、今日の若い女性の出生行動を直接把握することはできない。また、出産を先送りする女性の割合が高まっていることを考慮しないため、たとえば高学歴の女性のように、人生の後半に出産する人々の出生率を過小評価する可能性がある。(この点に対応するため、米国国勢調査局は最近、50歳までの女性を対象に出生データの収集を始めた。)
3つ目の指標である合計特殊出生率は、現在の出生パターンに基づく生涯出生力の推計値だ。その最低点はさらに早く、1976年ごろのインフレ期に訪れた。この時、米国の女性が生涯に産む子どもの数は平均1.74人と推計された。
TFRは生涯出生力を実際に数えたものではなく、ある時点の出生に関する情報を基にした仮想的な指標である。その情報を将来に投影し、典型的な女性が生涯に産む子どもの数を推計する。これは、その女性の生涯にわたる出産経験が、現在の年齢別出生率を反映すると仮定した場合の数である。
たとえば、1980年の合計特殊出生率は1.84だった。これは、1980年に15歳だった少女、つまり出産可能年齢に入ったばかりの少女が、その後の各年齢で子どもを産む可能性は1980年の年齢別出生率を反映するという前提に基づき、生涯に平均1.84人の子どもを産むと予測されたことを意味する。つまり、1990年に25歳になったこの若い女性たちの出生率は、1980年当時の25歳女性と同じであり、2000年に35歳になった時には、1980年当時の35歳女性と同程度である、といった仮定を置く。
この手法は「年齢標準化」と呼ばれ、出産可能年齢の女性の年齢構成にはまったく左右されない。出産の中心となる年齢層の女性が特に多い場合も、その割合が非常に小さい場合も、予測される生涯出生力は同じになる。
TFRは、「人口置換水準」を示すために最もよく使われる有力な指標である。人口の流入も流出もないと仮定した場合に、人口が自らを再生産するのに必要な出生力の推計水準を意味する。米国では、合計特殊出生率2.08が「人口置換水準」とされる。(夫婦の「人口置換出生力」は2人に思えるかもしれないが、乳幼児死亡を考慮するため、実際にはそれより少し高い。)
ほかの条件が同じでも、出産可能年齢の女性の出生のタイミングが変われば、TFRは大きく変動する。一方で、TFRの推計が正確な場合もある。図が示すように、1980年のTFRは出生率をよく予測していた。1980年に15歳で、2005年に出産可能年齢の終わりに近づいていた女性の完結出生力と、ほぼ完全に一致している。
しかし、ベビーブーム期の合計特殊出生率は米国の出生力を大幅に過大評価した。通常より若い年齢で子どもを産む女性がいた一方で、第二次世界大戦のために先送りした出産を「取り戻す」女性もいた可能性があるためだ。たとえば、1960年のTFRは3.65だったが、1985年の完結出生力によると、そのころ出産可能年齢に入った女性が生涯に実際に産んだ子どもは約2.45人だった。
近年は、多くの女性が出産を先送りしている。そのため、現在のTFRは、米国や欧州の完結出生力が最終的にどのようになるかを過小評価している可能性がある。さらに、研究によると、TFRは出産のタイミングに左右されるため、米国に移住したヒスパニック系移民の出生力を通常は過大評価する。彼らは年齢にかかわらず、移住後5年以内に最も高い出生率を経験するためだ。
では、この3つの指標を比較するとどうだろうか。合計特殊出生率と一般出生率は、数値の動き方こそ大きく異なるものの、似た傾向を示している。どちらもベビーブーム期の出生率上昇と、その後の「ベビーバスト」を明確に反映している。また、2007年の景気後退の直前に出生率が上昇し、その後ほぼ途切れることなく低下したことも示している。
一方、完結出生力の入手可能なデータによると、1976年から2016年までの間に生まれた子どもの総数は、ベビーブーム期に成人した女性たちが出産可能年齢の終わりを迎えた1970年代後半にピークに達した。2006年以降、他の指標が低下を続ける中、完結出生力はわずかに上昇している。
出生率は、どのように定義されるかにかかわらず、人口動態、社会、経済のさまざまな要因の影響を受ける。出生率を左右する主な要因には、出産可能年齢の女性の年齢構成(出生の大半は20~34歳の女性による)、出産可能年齢の女性に占める既婚者の割合(既婚女性は未婚女性より出産する可能性が高い)、経済情勢、そして外国生まれの女性に占める出産可能年齢の女性の割合(外国生まれの女性は米国生まれの女性より出生率が高い)がある。

