難民とは異なり、国内避難民は安全を求めて国境を越えていません。
2019年末時点で、国内避難民は過去最多の5,080万人に達しました。
紛争や暴力によって住まいを追われた人は4,570万人に上ります。
そのうち510万人は、災害によって移動を余儀なくされました。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、飢餓、暴力、劣悪な衛生環境に加わる新たな致命的脅威です。
彼らは危機の中で忘れられた被害者です。避難を余儀なくされながら、国境を越えることのない人々です。彼らが報道されることはほとんどありませんが、その苦境は他国に逃れた人々と同じくらい深刻です。世界では2019年末時点で、国内避難民の数が過去最多の5,080万人に達したと、国内避難に関する世界報告書は伝えています。
その大多数に当たる過去最多の4,570万人は、シリア、コンゴ民主共和国、アフガニスタンなどで、紛争や暴力によって住まいを追われました。さらに510万人が災害によって移動を余儀なくされました。
これらの数字は非常に大きいものの、実態の全体像を示しているとは限りません。ノルウェー難民評議会(NRC)の一部門である国内避難民監視センター(IDMC)は、これは氷山の一角にすぎない可能性があると指摘しています。収集可能なデータには不足があるためです。
一人ひとりの暮らし
国連によると、国内避難民は世界で最も脆弱な立場にある人々の一部です。自国にとどまることで、たとえ政府が避難の原因をつくった当事者であっても、その政府の保護下に置かれます。人道支援を届けるのが難しい地域へ移動することも少なくありません。
統計の背後には、暮らしを一変させられた人々がいます。「美しい家に住んでいました。そこに3年間暮らしたころ、砲撃が始まったのです」と、ガリーナさんはNRCが記録したインタビューで語っています。「私たちは地下室に隠れました。砲撃が激しくなると、避難することにしました。砲撃の最中に家や地下室にいた人は、誰も生き残れなかったでしょう。」
彼女は娘のアーニャの将来を案じています。「娘に望む一番大切なことは、平和な世界で暮らせることです。」砲撃で住めなくなる前、ガリーナさんの家はウクライナ東部の内戦地域にありました。彼女は、暴力的な紛争によって暮らしを打ち砕かれた世界中の人々を象徴しています。
主な原因
自然災害も世界各地で多くの人々に甚大な被害をもたらしています。「3月末までに少なくとも1,800万ヘクタールが焼失したと分かりました。イングランドとウェールズを合わせた面積に相当します」と、オーストラリア赤十字社のジョン・リチャードソン氏は、2019~2020年に同国を襲った大規模な森林火災について、その規模をIDMCに語りました。
同氏によると、住宅3,000棟が焼失し、7,000人が住む場所を失いました。オーストラリアには、人々が住まいと暮らしを再建できるよう金銭的支援を行う資源があります。どの国も同じように恵まれているわけではありません。
「マリでは、避難民が直面する課題の主な原因は治安の悪化です」と、同国のNRCチームに所属するプリンス・ルムエノ氏は語ります。「治安が悪いため、彼らは故郷を離れます。避難すると、生計手段や穀物倉庫、畑を失います。」
同氏によると、住まいを追われた人々は基本的なサービスや、後発開発途上国での生活を支える重要な地域社会の仕組みを利用できなくなり、病気や搾取の危険にさらされます。
新たな脅威
こうしたインフラの不足は、さらなる問題につながるおそれがあります。COVID-19が、飢餓、暴力、劣悪な生活環境に加え、自国に取り残された人々にとって新たな致命的脅威となっているためです。
「国内避難民は非常に脆弱な立場に置かれていることが多く、過密なキャンプ、緊急避難所、非正規居住地で暮らし、医療をほとんど、あるいはまったく受けられません」と、IDMCのアレクサンドラ・ビラク所長は述べています。
「世界的な新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、彼らをさらに脆弱な立場に追い込むでしょう。不可欠なサービスや人道支援へのアクセスをさらに制限し、すでに不安定な生活環境を悪化させることになります。」
明るい兆しもあります。報告書によると、各国は自国内の避難民に関するデータを収集する仕組みを整えており、インドネシア、マリ、スリランカの進展が取り上げられています。エチオピアとソマリアも、避難民を支援する取り組みが評価されています。
ビラク氏は次のように述べています。「この報告書は、問題を測定し理解することが解決に向けた取り組みの礎であると示しています。しかし、避難民が暮らしを再建し、目に見える前進を遂げるには、資源と政治的な関与も必要です。」


