深刻な景気後退に直面するなか、世界各国の政府は、一定程度の日常を取り戻すため、免疫パスポートの活用を検討している。
チリは、この制度を実際に導入する最初の国の一つとなる可能性がある。
しかし、この構想には議論が起きている。
不正確で不十分な検査では、免疫の監視が妨げられるおそれがある。
ロックダウンが始まって数週間がたち、経済指標が世界的な深刻な景気後退を示すなか、各国政府は国を再び動かす方法を模索している。しかし、人々が再び交流を始めるなかで、隔離状態から抜け出せば、コロナウイルス感染の第2波を招くリスクがある。
チリ、ドイツ、イタリア、英国、米国などの政府が検討している措置には、免疫パスポートが含まれる。これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した人に交付される証明書の一種だ。
この制度を実際に導入する最初の国となりそうなチリでは、いわゆる「解除証明書」により、所持者はあらゆる種類の隔離措置や制限の対象外となると、チリのハイメ・マニャリッチ保健相は4月に述べた。
解除は時期尚早か?
しかし、この構想は論争を呼んでおり、世界保健機関(WHO)も批判の声を上げている。多くの人が懸念する根本的な理由は、過去の感染によって将来どの程度の免疫が得られるのかが分かっていないことだ。再感染する可能性があるのか、また免疫がどれほど続くのかが明らかになるまでは、この措置は時期尚早かもしれない。
チリの場合、証明書は、感染が確認された人が回復してから3カ月後に失効する。その後は、ほかの人々と同じ感染リスクがあるとみなされる。政府は、この証明書によって、診断を受けた人が保健省に検査結果を報告するよう促されることを期待している。
WHOはまた、市場に出回っている一部の検査について、結果の妥当性にも疑問を呈している。WHOによれば、それらの検査は感度も精度も十分ではない。
偽陽性が出れば、実際には感染したことがない人が、今後感染する心配はないと思い込むおそれがある。偽陰性の場合は、感染者が自主隔離を怠る可能性もある。WHOは、免疫証明書によってウイルスの感染拡大が続き、公衆衛生上の助言を人々が無視するリスクが生じる可能性もあるとしている。
最近の複数の研究で、これまでに感染した人は比較的少数にとどまることが示されており、大多数の人々が依然として感染しやすい状態にあるため、これは特に懸念される。多くの国は、必要な検査数の多さにも圧迫されている。
回復に価値をつける
一部の専門家は、誰が交流したり出勤したりできるかを二段階に分けて制限することには、法的・実務的な懸念もあると考えている。また、排除されるのを避けようとして人々が感染を求めるという逆効果を招くおそれもある。
その結果、既存の不平等が悪化する可能性がある。なかでも経済格差は、一部の人が働けなくなる一方で、ほかの人は働ける状況によって、さらに拡大しかねない。
「既存の不平等を再現することで、免疫パスポートの利用は、すでに脆弱な人々にCOVID-19がもたらした被害をさらに深刻化させる」。ジョージタウン大学のグローバルヘルス科学・安全保障センターのメンバーであるアレクサンドラ・フィランは、医学誌『ランセット』にこう記している。そのため、免疫パスポートは腐敗の温床になりやすいと彼女は述べる。
フィランはまた、免疫パスポートによって一部の政府が「見かけ上の即効策」を得ると、健康と福祉を守るための経済政策を採用しなくなるおそれがあると指摘する。
ワクチンの進歩やその供給体制の整備と並行して、検査と追跡への投資が、ウイルスのさらなる拡大を抑える鍵だと多くの人が考えている。国際労働機関(ILO)などの機関も、こうした取り組みが人々の職場復帰に効果的な役割を果たし得るとしている。



