デジタル化を進めた企業は、同業他社よりもうまく危機に対応しています。
企業のリーダーは、ロックダウン解除に向けた戦略を策定する必要があります。
人を置き換えるのではなく、人の能力を高めるためにテクノロジーを引き続き活用すべきです。
企業は、COVID-19によってもたらされた文化や行動の変化を受け入れるべきです。
今日の企業リーダーが、COVID-19によって生じた事業継続上の大きな課題に注力しているのは当然です。何よりもまず、従業員の安全を可能な限り確保し、財務の持続可能性を守り、サプライチェーンの強靱性を評価し、前例のない水準のリモートワークやオンライン取引を支える重要なシステムを強化するとともに、サイバー攻撃の急増に耐えなければなりません。
予想どおり、COVID-19の感染拡大前にデジタルトランスフォーメーションを最も進めていた組織は、同業他社より危機への適応が進んでいます。ビジネスモデルや業務プロセスのおかげで、より迅速に方向転換したり、すでに進行中の変化を加速させたりできました。強固なデジタル基盤やオンライン上の存在感を欠く企業は苦戦しており、繁華街の小売業、運輸、エネルギー、観光の各分野に依存する企業も同様です。一方、コラボレーションツール、サービスとしてのソフトウェア、クラウド容量を提供するソフトウェア企業には、急速に変化する顧客や企業の行動に対応するため、高い需要が寄せられています。
しかし、どれほどデジタル化が進んでいる企業であっても、パンデミックが引き起こした目先の事業継続や流動性の問題だけでなく、その先を見据える必要があります。各国政府が実施している規制の緩和に注目が集まるなか、私たちは皆、未来がどのようなものになるかを考えるべきです。COVID-19後の「新しい日常」に備えるため、このパンデミックから何を学ぶべきでしょうか。危機後の世界で組織が成長できるようにするには、どうすればよいでしょうか。
まずは、次の4つの点について考えることから始められるかもしれません。
1. ロックダウン解除に向けた戦略を策定する
多くの国の経済で、GDPが大幅に落ち込んでいます。そのため政府は、人命への脅威を最小限に抑えつつ経済を再始動できるよう、ロックダウン解除の戦略を真剣に検討しています。同様に企業も、従業員のウェルビーイングを引き続き優先し、ロックダウン後の影響や直近の課題に対処しながら、事業をどう再開するかを見極める必要があります。
そのためには、ソーシャルディスタンスの規則を守りながら、従業員をオフィスに戻すか、顧客先を訪問させるか、またその方法を検討する必要があります。生産性、コスト、従業員の士気に短期的な影響が及ぶなか、わずか6か月前と同じ働き方や顧客サービスの慣行に戻る企業は、ほとんどないでしょう。必要に応じて新たなサプライヤーに切り替えられるよう、サプライチェーンの俊敏性と柔軟性を高める必要があるかもしれません。
2. 変化する政府の役割を考える
政府が人命を守るために厳格な規則を導入し、雇用や企業を守るために大規模な景気刺激策を打ち出した結果、多くの市場で政府の役割は大幅に拡大しました。こうした措置には甚大な経済的・社会的コストが伴いました。そのため多くの政府は、将来、別のパンデミックが発生しても、同じ程度の経済活動の停止を避けられるようにすることに注力するでしょう。10年前の金融危機後、世界各国の政府は、世界の金融システムを強化するために15,000件を超える新たな法令を導入しました。新たな規制が自社のビジネスモデルにどう影響し得るかを考え、今後の戦略に織り込む必要があります。
パンデミックという共通の脅威は、世界的な協調対応を促すどころか、分断を広げ、場合によっては競争を激化させました。今後は、雇用上の権利、データへのアクセス、大企業が保有する現金や流動性のバッファーなどの分野で、規制が強化される可能性があります。また、「電子政府」への移行や医療のデジタル化、医療を普遍的に提供するうえでの政府の役割も、急速に拡大するでしょう。
影響を受けた労働者や企業を支援するため、政府が財政面で大規模な介入を行ったことを踏まえると、一部の産業で短期的な国有化が起こり、新たに戦略的重要性が指定された産業に政府が直接介入することも避けられないようです。政府が最近の支出の一部を取り戻し、中期的に財政収支を立て直そうとしていることから、税制の変更にも備えるべきです。
3. 人を置き換えるのではなく、人の能力を高めるためにテクノロジーを活用する
この危機のなかで、テクノロジーによって、基本的な活動の進め方を見直すことができました。証券取引所は現在も運営を続けていますが、立会場は閉鎖されています。英国は仮想議会を設置しました。世界各地のコンタクトセンターはリモートでの業務に切り替えており、顧客サービスを期待される水準に保つため、人工知能を活用しているところもあります。EYでは以前から柔軟な働き方とリモートワークの文化が根付いていましたが、さらに対応を進め、150か国にいる30万人を超える従業員が在宅勤務をしています。
こうした動きは目覚ましいものですが、Microsoft TeamsやZoomなど、私たちが短期間で集中的に習得している多くのテクノロジーやツールには、さらに多くのことを可能にする力があります。多くの企業は、テクノロジーを従業員と統合するのではなく、従業員に取って代わるものとして使うことを前提にしています。この時期は、テクノロジーを活用して人の能力をさらに高め、生産性を向上させ、従業員の働きやすさを改善し、顧客により良い製品やサービスを届け、経済成長の促進に貢献する方法を、企業リーダーが探る機会です。
4. COVID-19がもたらした文化や行動の変化を受け入れる
世界的なパンデミックは、多くの人々にとって弱点を露呈させ、従来の強みの多くを意味のないものにしました。危機のなかで大半の組織のレジリエンスを支えた共通の要素は、テクノロジーでした。また、在宅勤務や、ビデオ会議プラットフォーム、コラボレーションツールを通じた同僚との交流など、大きな文化的変化を後押ししました。
多くの国ですでにオンライン販売やサービスが急速に拡大していましたが、パンデミックによってオンライン小売は一気に加速しました。食品や家庭用医薬品にとどまらず、研修コースから娯楽まで、幅広いサービスへの需要も高まっています。組織には、ここ数週間に起きた大きな行動や文化の変化を、COVID-19のない世界にも引き継げるよう活用する貴重な機会があります。そのために、デジタルと対面での提供を組み合わせるオムニチャネル型のビジネスモデルを構築することも考えられます。
従来型のデータセンターからクラウドへ、あるいはオンプレミスとクラウドコンピューティングを組み合わせた環境へインフラを移行する動きは、すでに加速の兆しを見せています。多くの企業は、研修など事業のさまざまな側面で仮想化をさらに進める方法を見直すとともに、これまでより大幅に高い水準のリモートワークを計画しています。それに伴い、事業の不動産利用やカーボンフットプリントにも影響が及びます。
大半の国や企業は依然としてCOVID-19の危機管理段階にありますが、一部の企業は、危機を脱した後の成長に向けて、適切な軌道に乗る方法をすでに模索しています。従業員のウェルビーイングと事業継続を優先しながら、戦略が引き続き目的に適しているかを見直しています。そのためには、テクノロジーの進歩、変化する顧客や従業員の行動、組織の俊敏性やサプライチェーンのレジリエンスの必要性、そして政府の役割の拡大を踏まえ、どのような軌道修正が必要かを検討することになります。
今、世界は混乱のさなかにあります。さらに、この混乱は、社会、経済、テクノロジーにわたる大きな変革を引き起こし、その様子が目の前で繰り広げられています。危機が最も深刻な局面を過ぎても、以前の暮らし方、働き方、ビジネスの進め方に戻ることはないでしょう。明日は間違いなく大きく変わります。だからこそ、今日から未来を捉え直さなければなりません。
本記事に示された見解は執筆者個人のものであり、EYのグローバル組織またはそのメンバーファームの見解を必ずしも反映するものではありません。

