目に見えないウイルスによって、個人の行動がかつてないほど可視化され、COVID-19以外の社会的危機にも立ち向かう私たちの真の力が明らかになりました。
世界中の人々が協力してCOVID-19の感染曲線を「平坦化」させようとするなか、私たちが果たす地球の自然システムにおける大きな役割が、かつてないほど明らかになりました。何十億もの人々が、自分たちが互いにつながっていることを知り、各自の行動を通じて致死性のウイルスの拡大を抑えようと協力しています。この経験から、COVID-19の最悪の予測を食い止めるだけでなく、 気候変動を含む、ほかの差し迫った社会課題にも取り組むために必要な教訓が得られるかもしれません。
私たちが知っていた真実
相互につながる世界で個人の行動がもたらす影響に気づき始めたこの感覚、いわゆる「システム思考」は、さまざまな意味で、私たちが長らく認めることを避けてきた真実です。私たちは何百年、時には何千年もの間、自然破壊の代償を経済発展の外部不経済として覆い隠し、世界経済そのものを支えるシステム、すなわち地球に積み上がる負債をほとんど顧みずにやり過ごしてきました。これは信じやすい考え方です。インドの息苦しい大気汚染は、脱工業化した米国や欧州ではほとんど実感されません。工業的農業の廃棄物によってメキシコ湾の中央に生じたデッドゾーンも、フロリダ州サラソタからメキシコのトゥルムまで、人々が訪れる海岸ではほとんど気づかれません。
生態系崩壊の警告サイン――フロリダの海岸での赤潮、オーストラリアで毎年繰り返されるサンゴの白化、さらには世界の昆虫個体群の壊滅――は、日々の暮らしの中で見過ごされやすく、行動に移すのはさらに困難です。自然に対する私たちの集団的な影響は認識されても、自然に与えてきた損害に対処する集団的な力は、これまで不可能に思えていました。今までは。
環境汚染や食品廃棄のような大規模な非効率性は、経済システムにおける「外部不経済」として長らく片づけられてきました。しかしCOVID-19は、別の、より真実に近い現実に私たちの目を向けさせます。私たちはそれぞれ、自分たちの暮らす生態系において、変える力を持つ相互接続されたシステムの一部なのです。氷河の融解から火災旋風まで、環境破壊を伝える個別で断片的な物語では成し得なかった変革を、この物語はもたらします。今、私たちは急速に広がるウイルスの動向を注視し、最悪の事態から自分自身や近隣の人々、同じ国の人々、そして世界そのものを守るために何が最善か、情報をつなぎ合わせています。結末があらかじめ決まっていない物語の中で、私たち一人ひとりには、行動を促すと同時に抑制も求める役割があります。ウイルスは猛威を振るっていますが、私たちは皆、その拡大を食い止める手助けができます。氷河を凍らせたり、森林火災の消火を実際に助けたりできると思ったのは、いつが最後でしょうか。ここでの行動と、そこから得る学びは、命を救い、個人として、地域社会として、そして一つの種として、私たち皆が耐え抜き、繁栄する助けになるかもしれません。
危機の中にある機会
私たちは自然から切り離された世界ではなく、自然の一部である新しい世界に目覚めつつあります。今、私たちの集団的な行動がより広い影響をもたらすことを知る機会があります。その影響は、今この時もCOVID-19を超えて広がっています。ソーシャルディスタンスやロックダウンによって屋内で過ごす中、韓国からシアトルまで、深刻な被害を受けた地域でウイルスの感染拡大を遅らせてきました。人間が病気に及ぼした影響とともに、汚染も後退し、自然への影響も大幅に減少しました。ベネチアでは運河が澄みました。ニューヨークでは、一酸化炭素濃度が通常の3月の水準の半分に低下しました。中国では、当初のロックダウンによって汚染レベルが25%低下しました。忘れてはなりません。汚染を止める個人の行動は、集団的な影響を、しかも迅速にもたらします。
工場が再稼働し、航空機が再び飛び始めれば、排出量はいずれ(残念ながら)また増加するでしょう。しかし私たちには、COVID-19から学び、自分たちの生態系の中で、そして地球というより大きな自然システムの中で、よりよく生きる選択肢があります。先延ばしにする理由はありません。私たちが頼るエネルギー源や使う資源に意識を向けることから、今すぐ始められます。特に、非営利団体プロジェクト・ドローダウンが気候変動対策の最重要手段の一つに挙げる食品廃棄の削減は、サプライチェーン全体で資源を大幅に節約し、埋め立て廃棄物から出る、二重に有害なメタンガスの排出を防ぎます。効果が何倍にも広がる取り組みです。
隔離措置が解除され、日常生活に戻った後も、食品廃棄は、地球の自然システムに生きる私たち一人ひとりが、大きな規模で影響を及ぼせる行動の一つとなるでしょう。難しい考え方ではありませんが、これまではそれを裏付けるのが困難でした。COVID-19は明らかにしています。私たち個人の行動は波紋のように広がり、気候から農業まで、地球のあらゆる自然システムに影響を及ぼし得るのです。
取り組むべき課題があり、平坦化すべき曲線があります。この計算において、あらゆる行動が重要です。一人で果たすべき役割を認識し、そして協力することで、私たちは自分自身と地球そのものを、よりよく守ることができます。
今や私たちは皆、システム思考をする人です。
