新しい技術では、循環する赤血球に蓄えられた薬剤を光で活性化し、必要なときに必要な場所で放出させる。
薬物送達における数十年来の科学的課題を克服したこの研究は、病気の治療に必要な薬剤の量を大幅に減らし、その副作用も軽減する可能性がある。
「光を使って病変部位を治療することには、『すごい』という目新しさ以外にも多くの利点があります」と、研究を率いたノースカロライナ大学チャペルヒル校エシェルマン薬学部教授のデービッド・ローレンス氏は述べる。「手術や感染のリスクを避け、麻酔を不要にし、関節炎の膝など問題のある部位に光を当てて自分で治療できるようになる、といった利点が考えられます」
この研究は学術誌Angewandte Chemieに掲載された。
ローレンス氏のチームは、薬剤分子をビタミンB12に結合させ、その化合物を赤血球に取り込ませた。赤血球は最長4カ月にわたって循環するため、必要に応じて利用できる長期的な薬剤の貯蔵庫となる。次にチームは、長年の技術的課題を克服できることを実証した。長波長の光を体内の深部まで届かせて分子結合を切断する技術で、ここではビタミンB12に結合した薬剤を切り離す。
しかし、もう一つ課題があった。長波長の光は体内のより深くまで届く一方、短波長の光ほどエネルギーが強くなく、通常は分子結合を切断できない。長波長の光で薬剤を活性化するため、ローレンス氏のチームは、より少ないエネルギーで実現する方法を考案する必要があった。
「そこが工夫のしどころで、私たちが成功した点です」とローレンス氏は話す。
ローレンス氏のチームは、ビタミンB12と薬剤の間に弱いエネルギー結合を導入し、その結合に蛍光分子を取り付けることでエネルギーの問題を解決した。蛍光分子はアンテナのように働き、長波長の光を捉えて、薬剤とビタミンの担体を結ぶ結合を切断する。
ローレンス氏は、多様な抗がん剤を使えれば、医師が患者を助けられる可能性が高まるような、複雑で致死性の高いがんがあると指摘する。
「非常に毒性の強い薬剤を4、5種類使い始めると、耐え難い副作用が生じることが問題です」と同氏は述べる。「しかし、強力な薬剤を特定の部位に集中させれば、がん化学療法に伴う一般的な副作用を大幅に軽減、あるいはなくせる可能性があります」
ローレンス氏は、技術をさらに発展させて人間に応用するため、ノースカロライナ大学(UNC)と共同でアイリス・バイオメッド社も設立した。同氏はUNCラインバーガー総合がんセンターのメンバーであり、芸術科学部および医学部の教授でもある。

