異文化への理解が心理学の基盤を揺るがしている

Girls stand during the morning assembly at their school on Socotra island November 19, 2013. Socotra is located in the Arabian Sea, 380 km south of mainland Yemen and 80 km west of the Horn of Africa. The Socotra islands, which harbour many unique species of birds and plants, gained UNESCO recognition in July 2008 as a world natural heritage site. REUTERS/Mohamed al-Sayaghi (YEMEN - Tags: TRAVEL EDUCATION SOCIETY)
Learning about different cultures can help us understand the human brain.Image: REUTERS/Mohamed al-Sayaghi
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心理学という学問分野は発展したが、その発展の大部分は北米と欧州で進んだ。人間の行動や精神過程を動かすものを理解するうえで、心理学は驚くほど成功してきたと言う人もいる。これらは長い間、普遍的なものと考えられてきた。しかし近年、研究者の中には、このアプローチに疑問を呈し始めた人もいる。多くの心理現象は、私たちが暮らす文化によって形作られると主張しているのだ。

人間は明らかに、多くの点でよく似ている。生理機能を共有し、栄養、安全、性など、基本的なニーズも同じだ。では、文化は知覚、認知、性格といった心の根本的な側面に、実際どのような影響を及ぼすのだろうか。これまでに得られた証拠を見てみよう。

実験心理学者は通常、少人数の行動を研究し、その結果をより広い人類集団に一般化できると仮定する。集団が均質だと見なされるなら、無作為抽出した標本からそのような推論を導くことは確かに可能だ。

しかし、実際はそうではない。心理学者は長年、研究を行う際に学部生に過度に依存してきた。大学の研究者にとって、学部生は容易に参加を得られるからだ。さらに驚くべきことに、参加者の90%以上は、西洋的で、教育水準が高く、工業化され、豊かで、民主的な国々(W.E.I.R.D.)から来ている。明らかに、これらの国々は無作為標本でも、人類を代表する集団でもない。

思考様式

次の3つのもののうち、どの2つが組み合わせとして適切だろうか。パンダ、サル、バナナ西洋諸国の回答者は、どちらも動物だからという理由で、サルとパンダを選ぶことが多い。これは分析的な思考様式を示している。この様式では、ものごとは主に、それを取り巻く文脈とは切り離して捉えられる。

これに対して、東洋諸国の参加者は、同じ環境に属し、関係性がある(サルはバナナを食べる)という理由で、サルとバナナを選ぶことが多い。これは全体論的な思考様式であり、ものごとと文脈は相互に関係していると捉えられる。

思考様式の文化差を示す古典的な実験では、日本と米国の参加者に一連のアニメーション映像を見せた。各映像は約20秒で、水中のさまざまな水生生物、植物、岩を映していた。その後の再生課題では、どちらのグループも目立つ対象である大きな魚を同じ程度に思い出した。しかし日本人の参加者は、米国人の参加者よりも、背景情報を思い出すのが得意だった。たとえば、水の色などである。全体論的な思考では、前景と同じくらい背景や文脈にも注意が向けられるからだ。

これは、文化差が記憶のような根本的なものにも影響することを明確に示している。記憶を説明する理論は、この点を考慮すべきだ。その後の研究では、思考様式の文化差が認知全般に広く及び、記憶、注意、知覚、推論、さらには話し方や考え方にも影響することが明らかになっている。

自己

自分について説明するよう求められたら、何と言うだろうか。知的である、面白いといった個人的な特性を挙げるだろうか。それとも「ピザが大好き」のような好みを挙げるだろうか。あるいは「親である」のように、社会的な関係性をもとに説明するだろうか。社会心理学者は長年、人は自分や他者について、安定した個人的特性を使って説明する傾向がはるかに強いと主張してきた。

しかし、人が自分自身をどう説明するかは、文化に左右されるようだ。確かに西洋諸国の人々は、自分を自由で自律した、独自の特性を持つ個人と捉える傾向が強い。一方、世界の多くの地域では、人々は主にさまざまな社会的関係の一員として自分を説明し、他者との強いつながりを重視する。この傾向は、特にアジア、アフリカ、ラテンアメリカで顕著だ。こうした違いは広く見られ、社会的関係、動機づけ、養育の違いと結び付いている。

自己の捉え方のこの違いは、脳のレベルでも実証されている。脳スキャン研究(fMRI)では、中国人と米国人の参加者にさまざまな形容詞を示し、それらの特性がどの程度自分に当てはまるかを尋ねた。また、スキャン中に、それらの特性が母親にどの程度当てはまるかについても考えてもらった(母親は研究に参加していない)。

米国人の参加者では、「内側前頭前皮質」において、自分について考える場合と母親について考える場合で、脳の反応に明確な違いがあった。この領域は通常、自己表象と関連付けられている。しかし、中国人の参加者では、ほとんど、あるいはまったく違いがなかった。これは、自己表象と近親者の表象が大きく重なっていることを示唆している。

メンタルヘルス

当初、W.E.I.R.D.な標本を対象とする研究が中心だったもう一つの領域が、メンタルヘルスだ。しかし、文化はメンタルヘルスの捉え方にさまざまな影響を及ぼす。行動には文化差があるため、逸脱した行動や非規範的な行動を検出する枠組みだけでは不十分だ。ある文化では正常と見なされるもの(控えめな態度)が、別の文化では規範からの逸脱(社交不安症)と見なされることもある。

さらに、文化に特有の症候群もいくつか特定されている。コロの患者(主にアジアの男性)は、性器が体内に引き込まれ、消えてしまうという誤った思い込みを抱いている。ひきこもり(主に日本で見られる)は、社会生活から退き、孤立する人々の状態を指す。一方、邪視症候群(主に地中海諸国で見られる)とは、嫉妬やその他の悪意ある視線を向けられることで、相手に不幸が訪れるという信念である。

こうした文化に結び付いた症候群の存在は、近年、世界保健機関と米国精神医学会の双方によって認められている。これらの症候群の一部が、それぞれの精神疾患分類に含まれたためだ。

文化が、自分自身をどう見るか、また他者からどう見られるかに大きな影響を及ぼすことは明らかだが、私たちはまだその表層をなぞり始めたばかりだ。現在「異文化心理学」と呼ばれるこの分野は、世界各地の大学で教えられる機会が増えている。今後、心理学という学問分野にどの程度影響を与えるのかが問われている。心理学に新たな次元を加えるものと見る人もいれば、理論形成に不可欠で中心的な役割を果たすものと見る人もいる。

研究が進めば、人間の行動が普遍的だと考えられてきた領域にも、文化差がさらに広く浸透していると分かるかもしれない。しかし、こうした影響を理解して初めて、私たち全員に共通する人間の心の根幹を特定できる。

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