感染症の人的被害は減る一方、経済的損失は拡大している。その理由とは

A health worker stands by ready to ask incoming passengers to remove any head gears before temperature screenings at the International Airport in Hong Kong April 27, 2009. Asia, a continent that has battled deadly viruses such as the H5N1 bird flu and SARS in recent years, began taking steps over the weekend to ward off a new flu virus. REUTERS/Vincent Yu/Pool (CHINA POLITICS HEALTH IMAGES OF THE DAY) - GM1E54R15DW01
Disease outbreaks are on the rise - and so are the economic and social impactsImage: REUTERS/Vincent Yu
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今年は、史上最も多くの命を奪った感染症である1918年のスペインインフルエンザ流行から100周年に当たります。この流行では約5,000万人が死亡しました。

近年も、SARS、豚インフルエンザ、MERS、エボラ出血熱、ジカ熱、黄熱病、ラッサ熱、コレラ、薬剤耐性感染症など、よく知られた名前の感染症が相次いで報道されています。実際、毎月、世界保健機関(WHO)には世界各地から5,000件の疾病の早期警戒シグナルが寄せられます。そのうち約300件はさらなる調査が必要で、30件については、感染症の流行を引き起こす可能性を調べるため、より詳細な現地調査が必要です。

過去30年間で、感染症の流行の件数と種類は大幅に増加しました。世界貿易と旅行が拡大するにつれて、国境を越えた感染症の広がりも、流行による経済的影響も増しています。世界銀行の推計によると、世界銀行の推計中等度から重度のパンデミックによる年間の世界的な損失は約5,700億ドル、世界所得の0.7%に相当します。

緊急の対応が必要とされる新興感染症Image: Center for Disease Dynamics, Economics & Policy

2003年のSARS流行は、世界経済に500億ドルを超える損害をもたらしたと推定されています。感染者は約8,000人、死者は800人未満でした。同様に、2015年の韓国におけるMERS流行では、16,000人以上が隔離され、38人が死亡し、消費者行動に大きな変化が生じました。同国への旅行者数が41%減少したほか、レストラン、劇場、ショッピングセンターを避ける人が増え、最終的に韓国銀行は政策金利を過去最低水準に引き下げました。

こうした経験は、今日の感染症をめぐる注目すべき傾向を浮き彫りにしています。流行の件数が増えている一方で、医学と公衆衛生の進歩により、感染症による罹患や死亡の影響をより効果的に抑えられるようになったのは事実です。しかし同時に、感染症危機が社会や経済に及ぼす影響に対する、私たち全体の脆弱性は高まっているようです。

このように、行動の変化がもたらす影響は、病気そのものと同じほど大きな混乱を引き起こすことがあります。この現象は、国際保健規則(IHR)にも認識されています。同規則は、急性の公衆衛生上のリスクを予防し、対応するという法的責務のもと、世界各地の196か国を結び付けています。この協定は、公衆衛生上のリスクを最小限に抑えるとともに、国際交通や貿易への不必要な妨げを避けることを重視しています。

感染症の拡大は、世界経済にとって最大級のリスクと見なされています。分析によると、パンデミックインフルエンザによる年間予想損失は、気候変動による損失に匹敵します。注目すべきことに、経済的損失の大半は通常、病気そのものが直接引き起こすのではなく、比較的予測しやすい消費者の反応、労働力不足、そして経済・金融部門における連鎖的な機能不全によって生じます。

効果的な感染症流行への備えには、さまざまな面で官民連携も欠かせません。医療の提供や医療対策の開発など、保健分野での重要性が最も明らかですが、過去の流行は、サプライチェーンと物流、リスクコミュニケーション、旅行と移動、データ共有の分野も重要な役割を果たすことを示しています。したがって、流行への備えと対応に向けた取り組みでは、不可欠な官民連携を確実に実務へと組み込むことも目指すべきです。

過去の感染症流行への対応を分析した結果、感染症流行に伴う社会的・経済的・事業上の混乱を軽減するため、官民連携を組み込むうえで重要な5つの原則が示されました。

1. 備え:危機が発生する前に、既知の課題に対処し、連携の仕組みを整えておくことで、迅速かつ足並みのそろった対応を可能にします。現在、世界経済フォーラムは「Epidemics Readiness Accelerator」を通じてパートナーと連携し、次の取り組みを支援しています。パンデミック時のサプライチェーンを強化すること、リスクや渡航勧告、国境措置に関する意思決定を改善すること、民間部門のデータを共有しやすく、すぐに利用できる形で提供し、流行対応に戦略的に活用すること、そして民間部門のネットワークを活用して公的な緊急情報を補完し、広く伝えることです。

2. 価値:長期的な価値を確保するには、民間部門の事業目標と公共部門のニーズが交わる領域での連携が必要です。たとえば、ハーバード大学グローバルヘルス研究所と世界経済フォーラムは、これまでにない感染症流行への備えとビジネス分析ツール(ORBIT)の開発で協力しています。このツールは、ビジネスリーダーが感染症流行に伴う予想コストをよりよく理解し、官民連携によってそのコストを軽減するとともに、より広く保健安全保障を強化するための道筋を提案するものです。

3. 信頼:緊急事態が起きる前に信頼に基づく関係を築き、流行時により効果的に協力できるようにします。世界初のパンデミック・サプライチェーン・ネットワークは、緊急時のサプライチェーン業務に関わるさまざまな組織をつなぎ、重要な保健物資を最も必要とする人々に遅滞なく届けられるようにします。

4. 機動性:緊急時に迅速に行動できるよう、組織のプロセスや構造を柔軟かつ透明に保ちます。たとえば、ハイレベルのパンデミック・シミュレーションの実施後、保健、旅行、観光分野のリーダーが集まり、流行発生時に情報を共有し、専門家への相談を促進し、官民連携を強化し、意思決定を改善するためのコミュニケーション・プラットフォームと関連ツールを作成しました。

5. イノベーション:緊急事態への準備、対応、復旧の取り組みを改善するため、革新的なアイデアや解決策の継続的な創出を促します。感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)もその一つです。世界経済フォーラム、ゲイツ財団、ウェルカム・トラスト、ノルウェー政府の支援と、政府系投資家および慈善機関からの投資を受け、官民両部門を結集してワクチンを開発し、致死性の感染症が世界的な保健上の緊急事態となるのを防いでいます。

国際社会がこれまでにない強度で世界の保健安全保障を強化するための重要な能力の構築に取り組むなか、備えを促進するために信頼できる官民連携を確立し、組み込むことは、進展と機会をもたらす重要な分野です。

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