ロシアで開催中のワールドカップの喧騒から遠く離れた場所で、革新者たちはサッカーの普遍的な人気を活用し、社会に貢献する事業を立ち上げている。
アフリカで命を救うことから、失業中の英国人の就職支援、アジアの女性の平等推進まで、こうした事業はサッカーのファンと同じくらい多様だ。
「サッカーは世界で最も人気のあるスポーツなので、より多くの人々に影響を与えられるという利点があります」と、Vi-Abilityの最高経営責任者アダム・ブル氏は語った。
ウェールズを拠点とするこの社会的企業は、就労、就学、職業訓練のいずれにも参加していない若者をスポーツクラブに8週間ずつ受け入れ、ビジネススキルを学ばせた後、就職やさらなる訓練につなげている。
「多くの人にとって、スポーツに没頭することは一種の現実逃避です。それをきっかけに人々を社会貢献へと引き込むことができます。従来の方法では関心を持ってもらえない人々を巻き込み、鼓舞するのに役立ちます」とブル氏は語った。
Vi-Abilityは2009年の設立以来、2,000人以上の就職や進学を支援し、地方自治体にこうしたサービスを提供して収益を得ている。
サッカー産業の価値は数十億ドルに上る。ロシアはワールドカップ開催に110億ドルを支払った。産業の世界的な価値のほんの一部でも活用できれば、人々の暮らしを変えられる。
生き生きと蹴ろう
ロンドンの小さな店では、公式ワールドカップ球「テルスター」のおよそ5分の1の価格で、しかもそれ以上の価値を約束するボールを販売している。このボールは十分な雇用機会を得られていない人々に仕事をもたらし、アフリカの子どもたちがHIVを防ぐ最善の方法を理解するためにも使われている。
「ディフェンダーは免疫系、つまり白血球を表し、アタッカーはウイルスです。ウイルスはゴールを決めようとしていて、それは体に感染することを意味します。これが、学習ツールとしてサッカーを使う方法です」と、Alive and Kickingのベン・サドラー氏は説明した。
ケニア、ザンビア、ガーナでサッカーボールを製造するこの社会的企業は、仕事を見つけるのが難しい人々に雇用を生み出し、販売利益を保健教育の資金に充てている。
国連の最新データによると、2016年に記録されたエイズ関連死100万人のうち、サハラ以南のアフリカがほぼ4分の3を占めた。
サッカーに夢中なアフリカの若者たちに簡潔な予防メッセージを届けることが、役に立つかもしれないと、サドラー氏はトムソン・ロイター財団に語った。同社は2004年以降、1,000人以上のコーチを訓練し、3万人以上の子どもたちにプログラムを届けてきた。
アフリカ唯一のボールメーカーは、ほかの方法でも社会に変化をもたらそうとしている。同社の従業員150人は、地元の慈善団体の協力を得て選ばれた。ザンビアの従業員の40%を占める聴覚障害者たちは、それまで働いた経験がなかった。ほかの従業員はスラム街の出身だった。
「私たちは、雇用面で不利な立場にある人々や、脆弱な背景を持つ人々に焦点を当てています」と、同社の最高経営責任者サドラー氏は語った。
試合を変える力
サッカーはどんな地面でも、性別を問わずプレーでき、覚えるのも簡単だ。トップレベルの試合は世界中で広く放送されており、ストリートサッカーもあらゆる地域で行われている。
こうしたすべてがサッカーの人気を支え、その幅広い訴求力を容易に生かせるようにしている。
ティム・ヤーニゲン氏は、どこに住む子どもたちにも遊んでほしいと考え、2006年に「ワン・ワールド・プレイ・プロジェクト」を立ち上げた。
ダルフールの子どもたちが袋やひも、ごみなどを工夫して作ったボールで遊ぶ映像を見たことがきっかけで、彼は難民キャンプや災害地域の過酷な環境にも耐えられる、ほぼ壊れないボールを発明した。
カリフォルニアを拠点とする同社によると、2010年以降、ボールを200万個以上販売または寄贈し、1個につき最大30人が遊ぶと推定している。ヤーニゲン氏は、サッカーは人々に日々の暮らしの苦労を忘れさせると考えており、自社のボールが数千万人の生活に遊びをもたらしたと語る。

女性たちにも
4大陸に事務所を構える社会的企業として2002年に設立されたStreet Football Worldは、カンボジアでサッカーを通じて女性を指導し、女性のコーチや選手をつなぐことで、同国のジェンダー不均衡の是正に取り組んできた。
同団体は、1994年ワールドカップでオウンゴールを記録したコロンビアの選手、アンドレス・エスコバルが殺害されたことを受け、ドイツ人の博士課程学生ユルゲン・グリースベック氏によって設立された。
英国文化を海外に広める政府資金による機関、ブリティッシュ・カウンシルは、サッカーのように世界中で愛される競技を基盤に社会的企業を築くのは理にかなっていると述べている。
「社会的使命を中心にビジネスモデルを構築できるかが課題です。それを実現できれば、本当に人々を鼓舞するモデルになります」と、ブリティッシュ・カウンシルで社会的企業分野の開発事業を率いるトリスタン・エース氏は語った。
会員組織Social Enterprise UKによると、英国は革新的な社会的企業分野の世界的リーダーと見なされており、昨年は約7万社が約100万人を雇用した。2007年の5万5,000社から増加している。

