G20経済のグリーンリカバリーを実現する方法

The lignite power plants of "Neurath New", Niederaussem, and "Neurath Old" of German energy supplier and utility RWE are pictured in Neurath, north-west of Cologne, Germany, February 5, 2020.
Ending fossil fuel subsidies will be key to unlocking the green energy transitionImage: REUTERS/Wolfgang Rattay
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  • パンデミック後の復興は、私たちが望み、必要としている脱炭素化された世界を築く機会です。

  • 化石燃料の価格が過小であることは、G20経済におけるグリーンな構造転換を妨げる最も大きな要因です。

  • こうした補助金を廃止すれば、G20経済は年間1兆9,400億ドルの財源を得られる可能性があります。

経済学者は、私たちが今まさに「逆ラディカル型」の回復のさなかにあると考えています。この経済の軌跡は平方根記号を鏡に映したような形です。急激な景気後退に続いて部分的に急反発し、その後、数年かけて緩やかに回復します。

パンデミック後の復興をどう進めるかは、私たちが望み、必要としている未来の姿を左右します。既存の「ブラウン」経済をただ再生させれば、不可逆的な気候変動やその他の環境リスクが悪化します。エコノミストが指摘するように、新型コロナウイルス危機と気候危機はつながっています。そのため、世界経済を再建するなかで、どちらの曲線も「平坦化」する必要があります。したがって、パンデミック後の復興は、実行可能で負担の少ない政策を通じて世界経済を脱炭素化し、より持続可能な経済へ移行するまたとない機会です。

私はこうした戦略を提示しました。対象は、世界で最も豊かで規模の大きい経済圏である20か国・地域(G20)です。G20は世界の復興をグリーン化するうえで極めて重要です。世界の人口と陸地面積のほぼ3分の2を占め、世界GDPの82%、世界のCO2排出量の80%を占めています。また、機械、自動車、エンジン・タービン、蒸気発生器、鉄鋼、電池、発電・配電、家電など、世界の主要産業における環境面の競争力とイノベーションをめぐる「グリーン競争」を主導しています。

まずは、2008~2009年の世界金融危機の際にG20が経済復興のグリーン化に取り組んだ経験から、何がうまくいき、何がうまくいかなかったのかを学ぶとよいでしょう。

世界金融危機の際、世界のグリーン景気刺激策のほぼ全額をG20経済が担いました。各国・地域は、財政刺激策全体のほぼ16%を、低炭素エネルギー、エネルギー効率の向上、公害対策、資材リサイクルなどの「グリーン投資」に充てました。実際、中国、米国、韓国、日本のわずか4か国・地域で、2008~2009年の世界のグリーン景気刺激策の約85%を占めました。

世界金融危機の際に実施されたグリーン景気刺激策は、すべての財政刺激策に対する一般的な推奨事項、すなわち「迅速に、対象を絞って、一時的に」実施することに沿ったものでした。世界のグリーン景気刺激策の3分の2(3,350億ドル)はエネルギー効率の改善に充てられ、建設業など世界金融危機で深刻な打撃を受けた分野において、切実に求められていた雇用を創出することを目指しました。エネルギー効率への支出や、すぐに着手できるクリーンエネルギー事業に重点を置いたことで、数年間にわたり雇用創出と再生可能エネルギーの拡大に効果がありましたが、G20経済の脱炭素化に向けた長期的な支援はほとんどありませんでした。

しかし、持続的な経済復興に向けた政策は、1~2年の短期的な財政刺激策だけにとどまりません。化石燃料から低炭素経済へ移行するには、長期的な公共支出と価格制度改革への取り組み(5~10年間)が必要です。主要な投資には、民間部門のグリーンイノベーションとインフラを支援する公共支出、自然を活用した気候変動対策への資金提供、スマートグリッド、公共交通システム、充電ステーション網の整備が含まれます。炭素や汚染に価格を付け、化石燃料補助金を廃止すれば、移行を加速し、必要な公共投資の財源を確保するとともに、グリーン移行全体のコストを抑えることができます。

復興をグリーン化する長期政策は、実行可能であると同時に、負担可能なものでなければなりません。G20経済はすでに、パンデミックによる経済危機と健康危機への対応に8兆ドル超を支出しており、これはGDPの4.5%に相当します。経済が急激に落ち込んで失業が増え、個人消費が弱まり、民間投資が減少する局面では、財やサービスの総需要を押し上げるための赤字支出は妥当です。しかし、持続可能な復興に向けた5~10年間の長期投資には、財源の確保と費用対効果が求められます。化石燃料補助金の廃止や炭素課税といった価格制度改革は、よりグリーンな復興に必要な追加支出の財源確保に役立ちます。

化石燃料の価格が恒常的に過小であることも、G20経済におけるグリーンな構造転換とイノベーションを妨げる最大の要因です。下の図が示すように、IMFの研究者は、補助金や化石燃料による炭素、環境、健康への損害を価格に反映していないことによるコストが、G20の16か国・地域で年間約3兆2,000億ドルに上ると推計しています。これは、世界全体の化石燃料の過小価格の70%に当たります。過小評価額は、中国で毎年1兆4,000億ドル超、米国で6,500億ドル近く、ロシアで5,500億ドル超、インドで2,100億ドル近く、日本で1,750億ドル超に上ります。このような過小価格のため、G20経済では化石燃料とクリーンエネルギーへの投資が対等に競争できません。化石燃料の開発と利用には、その社会的・経済的コストの全額が反映されていないからです。

化石燃料の恒常的な過小価格は、進展を妨げる大きな障壁です…Image: Barbier / Coady ほか
…そしてG20諸国に大きなコストをもたらしますImage: Barbier / Coady ほか

価格制度改革は、持続的なグリーン復興に必要なクリーンエネルギーやその他の長期投資のために、支出を節約し、追加収入を生み出すことにもつながります。IMFは、化石燃料の過小価格を解消すれば、世界全体で年間2兆8,000億ドルの税収が生まれると推計しています。この計算に基づくと、G20経済は年間1兆9,400億ドルを調達できると私は推計します。これは、G20の実質GDP合計の約3.7%に相当します。

つまり、化石燃料補助金の廃止と炭素税などの環境税を組み合わせれば、脱炭素化を妨げる市場のゆがみを正し、G20経済におけるグリーンイノベーションへの公的支援や主要インフラ投資に必要な5~10年間の支出財源も確保できます。

クリーンエネルギーの研究開発に的を絞った支出は、技術への理解が深まり、イノベーションが広がり、生産規模が拡大するにつれて、コスト低下と普及拡大につながります。また、関連する「ネットワーク効果」、あるいは「鶏と卵」の関係もあります。クリーンエネルギー技術や製品への需要が増えると、関連するイノベーションが促され、コストが下がります。たとえば、電気自動車の購入が増えると充電ステーションの需要が高まり、設置が進めば電気自動車の利用コストが下がり、需要がさらに拡大します。

再生可能エネルギーを統合できる「スマート」送電網の設計・建設には、公共投資が必要です。より持続可能な都市を実現するには、自治体の都市計画と交通政策を組み合わせた都市開発政策も欠かせません。さらに、都市内の公共交通システムや都市間を結ぶ主要路線への公共投資は、長らく顧みられてこなかった公共インフラ整備の分野です。こうした分野をはじめ、グリーン復興に向けた長期投資の可能性がある領域は、今後の重要な研究課題です。

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