最新の政府統計によると、米国の主要な出生率指標の一つが4年連続で過去最低に達した。出生数の減少が米国経済に問題をもたらすのではないかと懸念し、気をもむ人もいる一方、天然資源の有限性を懸念する人は、出生率の低下を好意的に受け止めるかもしれない。
しかし、この議論はさておき、疑問は残る。これは本当に過去最低なのだろうか。簡単に答えると、話は複雑だ。出生率を測る方法はいくつもあるからだ。
最もよく使われる指標には、一般出生率(GFR)、完結出生児数、合計特殊出生率(TFR)の3つがある。いずれも出生に関する行動を少しずつ異なる形で表し、それぞれ、女性が現在子どもを産む年間の割合、生涯に最終的に産む子どもの数、あるいは現在の出生パターンに基づいて推計した場合に産むと考えられる仮想的な子どもの数を示す。
これらの指標に「正しい」「間違っている」はないが、長年、それぞれの指標は出生率がいつ底を打ったかについて異なる見方を示してきた。数十年ぶりに、3つの指標のうち一般出生率と合計特殊出生率の2つが一致し、出生率が2018年に過去最低を記録したことを示している。一方、2018年の完結出生児数のデータはまだ得られていないが、2016年のデータは、近年これが低下ではなく上昇していることを示している。

最新の報告書は、国立保健統計センターが一般出生率を用いて示したもので、通常15歳から44歳と定義される出産可能年齢の女性1,000人当たり、2018年には59.0人の出生があった。ここで取り上げるすべての出生率指標と同様、一般出生率は人口全体の規模や、人口に占める出産可能年齢の女性の割合には左右されない。しかし、出産可能年齢の女性の年齢構成の変化には左右される。ほかの条件が同じなら、最も出産の多い年齢にある女性の割合が高いほど、一般出生率も高くなる(逆も同様)。
政府が示した一般出生率の過去最低値は、主に35歳未満の女性の出生率低下によるものだ。これは、2000年代後半の大不況の長期的な影響を部分的に反映している可能性がある。景気後退が起きると、人々は子どもを持つことを先送りする傾向がある。また、教育水準の向上と女性の労働参加率の長期的な上昇に加え、母親になる時期を遅らせる結婚の遅れも反映している。ただし、最も出産の多い年齢(20歳から34歳)にある女性の割合もわずかに低下しており、出生率の低下に多少影響している可能性がある。
2つ目の出生率指標は完結出生児数で、女性が生涯に産む子どもの数を数える。研究者は通常、15歳から44歳の女性の出生データを収集する。そして、40歳から44歳の女性がこれまでに産んだ子どもの数を「完結出生児数」として測定する。この年齢では大半の女性が出産を終えているという前提に基づくものだ。この指標によると、1976年以降で米国の出生率が最も低かったのは2006年ごろで、出産可能年齢の終わりに近い女性が生涯に産んだ子どもの平均は1.86人だった。
完結出生児数は過去を振り返る指標であるため、近年の出生パターンをまとめて示すが、今日の若い女性の出生行動を直接把握することはできない。また、出産を先送りする女性の割合が増えていることを考慮しないため、たとえば高学歴の女性の出生率を過小評価する可能性がある。高学歴の女性の多くは、子どもを持つのがより遅い年齢になる。(この問題に対処するため、米国国勢調査局は最近、50歳までの女性の出生データの収集を始めた。)
3つ目の指標である合計特殊出生率は、現在の出生パターンに基づいて生涯出生率を推計するものだ。2018年に新たな最低値に達し、米国の女性は生涯に平均1.73人の子どもを産むと推計された。これは、1970年代半ばのインフレ期以来続いていた従来の最低値、1.74を下回った。合計特殊出生率は生涯出生率を実際に数えたものではない。ある時点の出生情報を基にした仮想的な指標であり、その時点の年齢別出生率が生涯にわたって続いた場合、典型的な女性が生涯で何人の子どもを産むかを推計するため、将来に投影する。
たとえば、1980年の合計特殊出生率は1.84だった。これは、1980年に15歳だった少女(つまり出産可能年齢に入ったばかりの少女)が、その後の各年齢で子どもを産む確率は1980年の年齢別出生率を反映するという前提に基づき、生涯に平均1.84人の子どもを産むと予測されたことを意味する。つまり、この若い女性たちが1990年に25歳になったとき、1980年当時の25歳女性と同じ出生率になると想定された。2000年に35歳になったときには、1980年当時の35歳女性と同程度の出生率になると想定され、その後も同様である。
この手法は「年齢標準化」と呼ばれ、出産可能年齢にある女性の年齢構成にまったく左右されない。出産の中心年齢にある女性の割合が特に高くても、非常に低くても、予測される生涯出生率は同じになる。
合計特殊出生率は有力な指標であり、人口が自らを再生産するために必要な推定出生率の水準を意味する「人口置換出生率」を示すために最もよく使われる。米国では、合計特殊出生率2.08が「人口置換水準」とされる。(カップルにとっての「人口置換出生率」は2人に思えるかもしれないが、乳幼児死亡率を考慮すると実際にはそれより少し高い。)
ほかの条件が同じなら、出産可能年齢の女性の出生時期に変化があると、合計特殊出生率は大きく変動する。一方で、合計特殊出生率の推計が正確な場合もある。図が示すように、1980年の合計特殊出生率は出生率をうまく予測しており、1980年に15歳で、2005年に出産可能年齢の終わりに近づいていた女性の完結出生児数とほぼ正確に一致している。
しかし、ベビーブーム期の合計特殊出生率は、米国の出生率を大幅に過大評価した。女性の中には、当時の一般的な年齢より若くして子どもを産んだ人がいた一方、第二次世界大戦のために先送りされた出産を「取り戻そう」とした人もいたと考えられるためだ。たとえば、1960年の合計特殊出生率は3.65だったが、1985年の完結出生児数によると、そのころに出産可能年齢に入った女性が生涯に実際に産んだ子どもの数は約2.45人だった。
近年では、多くの女性が子どもを持つ時期を先送りしている。その結果、現在の合計特殊出生率は、米国や欧州で最終的にどのような完結出生児数になるかを過小評価している可能性がある。さらに、研究によると、合計特殊出生率は出生時期に敏感なため、米国に移住したヒスパニック系移民の出生率を通常過大評価する。彼らは移住後5年以内に出生率が最も高くなり、その時点の年齢にかかわらず同じ傾向が見られる。
では、この3つの指標を比べるとどうだろうか。合計特殊出生率と一般出生率はいずれも似た傾向を示す。さらに、どちらもベビーブーム期の出生率上昇と、その後の「ベビーバスト」を明確に反映している。また、2007年の景気後退の直前に出生率が上昇し、その後ほぼ途切れることなく低下したことも両方に表れている。一般出生率は過去8年のうち7年で過去最低を記録した一方、合計特殊出生率は2018年まで、過去の最低水準を上回っていた。
一方、入手可能な完結出生児数のデータによると、1976年から2016年にかけて、生涯に産まれた子どもの総数は1970年代後半にピークを迎えた。ベビーブーム期に成人した女性たちが、出産可能年齢の終わりを迎えたためだ。2006年以降、ほかの指標が低下を続けるなか、完結出生児数はわずかに上昇している。
出生率は、どのように定義されるかにかかわらず、さまざまな人口統計的、社会的、経済的要因の影響を受ける。出生率の水準を左右する主な要因には、出産可能年齢の女性の年齢構成(出生の大半は20歳から34歳の間に起きる)、出産可能年齢の女性のうち既婚者が占める割合(既婚女性は未婚女性より出産する可能性が高い)、経済情勢、そして外国生まれの女性のうち出産可能年齢にある人の割合(外国生まれの女性は米国生まれの女性より出生率が高い)がある。





