研究者らは、ハリケーンなどの大雨事象(HRE)が、米国南部沿岸部を含む世界の温帯地域におけるベクター媒介性感染症の伝播に及ぼす影響を調べるため、数学モデルを開発した。
この種の異常気象の後には、水が滞留する場所で蚊の個体数が急増することが多い。同時に、公的・民間の医療保健インフラが機能不全に陥ることで、人々の感染リスクが高まる可能性がある。
この研究は、『Philosophical Transactions of the Royal Society B』に掲載されており、HREが感染伝播シーズンの早い時期、つまり蚊が人間にウイルスをうつすことのできる期間の初期に発生した場合、感染症が流行するリスクが最も高くなることを示している。
この研究によると、7月1日にHREが発生した場合、6月1日に発生した場合と比べて感染症の患者数は70%少なくなる。
「蚊は、温度に非常に敏感です。生存や繁殖の能力だけでなく、人に感染させる能力も温度に左右されます」と、筆頭著者でジョージア州立大学公衆衛生学部の数理疫学教授、ヘラルド・チョウェル氏は述べる。
「気温が高いほど、感染した蚊はより速くウイルスをうつすことができます。蚊の平均寿命が2週間未満であることを考えると、この温度差は感染症の流行に劇的な影響を及ぼす可能性があります。」
研究者らによると、人口の移動もいくつかの形でベクター媒介性感染症の拡大に影響する。人々がその地域を離れると、地域内の感染者数は減る一方、別の場所での感染者数が増える可能性がある。
しかし、HREの発生時に避難しない人々は、感染リスクが高まる可能性がある。地域に残る人が少なくなると、当局が蚊の繁殖を防ぐ標準的な対策(たまり水を除去するなど)を怠るおそれがあるためだ。
さらに、緊急支援のために人々が被災地に入るとき、あるいは災害後に戻ってくるときには、地域内の感染者数が増える。
「蚊が媒介する感染症は、蚊の移動よりも人の移動によって広がる傾向があります。そのため、災害によって人々が移動すると、流行がどこで、いつ起きるかが変わる可能性があります」と、共著者でアリゾナ州立大学生命科学部の教授、チャールズ・ペリングス氏は述べる。
米国南部やその他の熱帯地域でHREの発生頻度が高まるなか、こうした災害が感染伝播のリスクにどう影響するかを評価するため、さらなる定量的ツールの開発が必要だとチョウェル氏は述べる。
「今後、ハリケーンの際に実際に避難する人の数、避難の速さ、そして帰還する時期を定量化する手法の改善に取り組みます」と同氏は述べる。「また、異なる避難パターンの影響を調べるため、ほかのハリケーンも分析しています。」
そのほかの共著者は、ジョージア州立大学、アリゾナ州立大学、京都大学に所属している。この研究は全米科学財団の助成を受けた。
出典:ジョージア州立大学

