感染症により、年間1,700万人以上が亡くなっています。
新型コロナウイルス感染症とSARSは、感染症がいかに容易に医療制度を混乱させ、経済を不安定化させるかを示しました。
診断を中核に据えた、新たな医療アプローチが必要です。
世界の歴史は、感染症の推移と深く結びついています。何世紀にもわたり、感染症は主な死因の一つであり、社会の健康と発展を深刻に脅かしてきました。また近年では、過重な負担を抱えるインフラ、限られた資金、逼迫する資源、増え続ける患者数など、すでに深刻な医療上の課題をさらに悪化させています。
感染症の脅威は、新たな、しばしば認識されていない病原体の出現や、次の要因による既知の感染症の再流行によって、さらに増大しています。グローバル化、都市の過密化、気象の変動です。
皮肉なことに、抗生物質、予防接種、公衆衛生対策の改善といった革新の登場により、継続的な感染症対策の必要性への関心が薄れ、非感染性疾患(NCDs)への取り組みがより重視されるようになりました。結核(TB)は、他のどの感染症よりも多くの人々の命を奪ってきました。過去200年間の死者は10億人を超え、これは米国、インドネシア、パキスタン、バングラデシュの人口を合わせた数に相当します。
現在のパンデミックは、近視眼的な医療エコシステムがもたらす深刻な影響を明らかにし、患者の治療過程の中心に予測的・予防的ケアを据える新たなアプローチの必要性を示しています。新型コロナ後の時代の医療には、次のことが求められます。
1. 医療財政の再構築
感染症は、医療のあり方と医療行為の実践を変えてきました。SARSは、グローバル化した世界で起こり得る被害を示す事例であり、感染症が疑われる症例の早期発見と隔離に関する意識の高まりを促しました。
新型コロナウイルス感染症への対応では、診断が制御・予防戦略の中心的な役割を果たしましたが、診断検査全般については同じことが言えません。診断に充てられる医療費は、世界全体のわずか2%にとどまる一方で、臨床上の意思決定の70%超に影響を及ぼしています。
新型コロナウイルス感染症が示したように、検査はウイルスと闘うすべての国にとって第一線の防御手段となってきました。医療財政を費用だけでなく「価値」の観点から見直せば、診断をケア提供の中核に組み込んだ持続可能な医療モデルの構築を後押しできます。その実現には、価値に基づくモデルの導入を促すため、償還戦略を抜本的に見直すことも必要です。
このような医療投資のアプローチにより、各国は感染症の流行時に国民の健康を守ることができます。さらに重要なのは、NCDsを含む他の疾患の管理にも、この包括的なケアモデルを活用できることです。
2. 診断を中核に据えた国家レベルの備えの強化
予測的・予防的ケアを補完するには、迅速な意思決定と断固たる行動を可能にするよう、国家の保健政策を見直す必要があります。急速に変化する状況に合わせて各国が大規模検査を迅速に実施したり、検査戦略を変更したりできるかどうかは、広範な感染拡大を制御する能力を試すものとなりました。適時かつ正確な結果を支える適切な検査機関のインフラと資源がなければ、これは実現できなかったでしょう。
今こそ、医療制度が次のパンデミックに備えられるようにすべきです。SARSなどの感染症流行後に行われた政策検証では、診断検査の迅速な承認を可能にする、機動的で目的に適したエコシステムを確保するため、規制の枠組みを強化する重要性が一貫して強調されてきました。これには、診断検査の免除や承認を迅速化する経路を新設または稼働させること、ならびに承認手続きの重複を最小限に抑えるため、規制上の依拠モデルや海外の参照規制当局による承認を活用することが含まれます。これらの提言は、アジア太平洋医療技術協会(APACMed)が最近発表したポジションペーパーにも盛り込まれています。
3. デジタル技術
デジタルヘルスの核心は、データサイエンスと医療を結びつけることにあります。感染症の流行を早期に警告し、適時の情報を提供することで、より良い、より情報に基づいた医療上の意思決定を支えます。そうした情報は、診断や患者管理の改善につながる感染症の制御・根絶プログラムに役立ちます。
新型コロナウイルス感染症は、手作業では実現が難しい方法でパンデミック戦略や対応を支えるデジタルヘルス技術の役割を、現実の事例を通じて示しました。しかし、目に見える成果を生み出すには、場当たり的な取り組みを超える必要があります。方法は次の2つです。
i. サーベイランスシステムの構築。診断は、ケアのあらゆる段階で役割を果たします。感染症を含む世界の健康への新たな脅威について、患者単位のデータを適時に入手することは、トリアージ、管理、患者の隔離の改善に大いに役立ちます。検査から得られた患者の医療データを収集・共有すれば、感染症が深刻な流行になる前に対処するための制御戦略に役立ち、最終的に費用、資源、命を守ることにつながります。
ii. デジタルヘルスのインフラへの投資:新型コロナウイルス感染症により、デジタルヘルス技術の導入が加速しました。新型コロナ流行前から、医療データの集約・分析、相互運用性、データセキュリティなどの能力開発に投資していた国々は、隔離やソーシャルディスタンスの措置が取られている間も、ケアの継続を迅速に確保できました。パンデミック中のがん管理におけるバーチャル腫瘍ボードなど、デジタル意思決定支援ツールの利用増加は、その好例です。
感染症は今後もなくなりません
各国は、パンデミックから得た初期の教訓を活用し、医療へのアクセスと資金調達の持続可能性を高める戦略の一環として、診断の導入を拡大する計画を策定する必要があります。新型コロナウイルス感染症への対応で見られた最良の事例と同じ機動力を各国が発揮できれば、あらゆる疾患の負担をどれほど軽減できるか、想像してみてください。
政府と医療関係者は連携し、感染症流行の脅威を理解し、封じ込め、最小限に抑える必要があります。一国での不適切な対応は容易に波及効果をもたらすため、協調的なアプローチが必要です。
今ほど診断の価値を正当に評価すべき時はありません。診断は、医療に持続可能な変化をもたらす原動力となり得ます。現在そして将来にわたって診断への依存を高めることで、感染症を効果的に管理し、根絶できる可能性も生まれ、次に備えてより万全の態勢を整えられます。
感染症の根絶に成功した事例は、歴史上数多くあります。ほかの既知および新興の感染症でも、同じことができるでしょうか。答えは時が経てば明らかになりますが、それは今日の私たちの行動にかかっています。

