重度の視覚障害を治療できるかを確かめるため、7人のボランティアにCRISPR技術が試されました。
視力が大きく改善し、何年ぶりかで色が見えるようになった人もいました。
科学者たちは、患者の体から細胞を取り出すことなく、CRISPR遺伝子編集技術を使って遺伝子変異を取り除く方法を開発しました。
画期的な新しい遺伝子編集医療処置の有効性を示す証拠がさらに得られ、がんや鎌状赤血球貧血などの治療や、さらには根治につながる一度限りの治療法への期待が高まっています。
まれな重度の視覚障害を抱える人の一部が、CRISPRとして知られる遺伝子編集技術による治療後、よりはっきりと見えるようになったと、報道されています。
CRISPR遺伝子編集ツールが人体に直接注入されたのは初めてのことです。今回は、周囲を移動したり色を見分けたりするのを困難にしていたレーバー先天性黒内障(LCA)の治療が目的でした。
CRISPRとは?
CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)は、2012年にDNAを正確に改変できる生物学的ツールとして初めて開発されました。この10年間、世界各地の科学者たちはCRISPR技術の安全性と有効性を高め続け、さまざまな遺伝性疾患の治療への道を開いてきました。
科学者たちは長年、遺伝子レベルで病気の根本原因に直接対処する治療法の開発に取り組んできました。広く使われている薬の多くは、大なたを振るうように病気を非特異的に治療するため、望ましくない副作用を引き起こしたり、患者によって効果に差が出たりすることがあります。
CRISPR技術は、精密医療と呼ばれる分野に属し、特定の病気を引き起こす遺伝子の欠陥に的確に対処できます。
CRISPRは、はさみのようなタンパク質をほかの分子と組み合わせ、人のDNA設計図、すなわちゲノムの問題箇所を見つける仕組みです。
CRISPRを使うと、科学者は病気の原因となるゲノム領域を取り除いたり、病気を止めたり逆転させたりするDNAに置き換えたりできます。
CRISPRはすでに、簡易診断ツールから基礎研究まで、幅広い用途で使われています。パンデミックの間、科学者たちはCRISPRを使ったCOVID-19検査を開発しました。
しかし、治療法として広く普及させるには、さらなる臨床試験と副作用の可能性の検証が必要です。鎌状赤血球症の患者に対するCRISPRを用いた治療から1年以上が経過し、健康状態の改善が確認されたことから、遺伝子編集は多くの遺伝性疾患に有効な治療法となる可能性が示されています。ただし、広範な試験と長期的な経過観察が引き続き欠かせません。
世界経済フォーラムは、データに基づく医療をどのように実現しているのでしょうか?
遺伝子編集治療の新たな進展
米国オレゴン健康科学大学のケイシー眼科研究所で、LCAのボランティアにこの治療法を適用したのは、世界で初めての事例です。
これまでのCRISPR技術では、患者から細胞を取り出し、DNAの一部を改変した後、編集済みの細胞を患者の体内に戻していました。体内に戻された細胞が増殖し、病気をなくすことが期待されていました。
しかし、オレゴン州での臨床試験では、細胞を一つも取り出すことなく、7人のボランティアにCRISPRツールを直接注入しました。彼らの場合、目の網膜に注入されました。
この新しい技術は、脳のように細胞を安全に取り出せない部位の疾患を治療できる可能性をもたらします。
「本当に驚くべき技術で、とても強力です。」と、同研究所の眼科学教授、マーク・ペネシ博士はNPRに語りました。
CRISPRで視力が改善した患者も
オレゴン州のボランティアの一人、カーレン・ナイトさんは、処置後に周囲を安全に移動できるようになったと話しました。また、別の参加者であるマイケル・カルベラーさんは、初めて色が見えるようになったといいます。
いとこの結婚式でカルベラーさんは、「DJのストロボライトの色が変わるのが見えて、一緒に踊っていたいとこたちに色を伝えられた」と気づいたとNPRに語りました。「とても、とても楽しくて、うれしい瞬間でした。」
臨床試験は現在も続いており、ほかのボランティアには同じ改善が見られませんでした。そのため、CRISPR技術がほかの遺伝性疾患の患者を同じように効果的に治療できるようになる時期を語るには、まだ早すぎます。


