COVID-19のパンデミックは、世界的なつながりが問題ではなく、私たち全員に恩恵をもたらす解決策であることを示している。
パンデミックにもかかわらず、グローバリゼーションは予想をはるかに上回る強靱さを示した。DHLグローバル・コネクテッドネス・インデックス2020によると、今年の世界のつながりの水準は、2008~09年の世界金融危機時に見られた水準を下回る可能性は低い。
地域社会や事業部門が回復するなか、物流業界は、今回および将来の危機に対処するうえでの貿易とグローバリゼーションの価値を明確に示す必要がある。
「グローバリゼーションの最盛期に別れを告げ、次に何が取って代わるのかを憂慮すべきだ」とエコノミスト誌は5月に書いた。
私は長年、グローバリゼーションを強く支持してきた。しかし2020年には、私自身の信念さえ一時揺らいだ。国境を知らないウイルスが、私たちの暮らし方や貿易のあり方の土台を「少しずつむしばんで」きた。
各国政府はどれほど長く国境を封鎖し続けるのだろうか。こうした物理的な国境は貿易の境界へと変わるのだろうか。また、貿易の成果を自国の内側にとどめようとする政府が増えるのだろうか。個人用防護具や人工呼吸器など、不可欠な物資の不足を受け、変革を求める声が上がっている。国内製造への回帰や、重要産業の再国有化を求める声も聞かれた。そうした主張は、ひととおり耳にしてきた。
企業やその製品は、出自にかかわらず平等に扱われるべきだという考えが危機にさらされている。こうした考えなどが広がれば、貿易は自由に流れなくなる。国々のつながりは弱まり、私たちが慣れ親しんできた商業世界の礎は、きしみ、ひび割れ始めるだろう。
これは、私たちが知るグローバリゼーションの終わりなのだろうか。
隠れた好機
少なくとも私は、そうは思わない。このパンデミックは、世界的なつながりが問題ではなく、むしろ解決策であることを示している。
世界が新しい生活様式にこれほど速く適応したことは、まさに驚くべきことだ。社会はかなりの程度、商品が玄関先まで届けられることで日常生活を維持できている。デジタルのつながりを通じて、友人や家族、職場の人々との連絡も保ってきた。
世界的な協力のおかげで、このウイルスに有効な治療法やワクチンの発見に近づいている。柔軟なサプライチェーンと世界市場へのアクセスが、経済への影響を和らげる助けとなっている。
つながった世界の恩恵は、至るところで目にできる。国境を越えた電子商取引が大きく成長するのを目の当たりにしてきた。世界規模で事業を展開する多くの企業は、国内または地域に特化した企業よりも、この危機においてはるかに有利な立場にある。
DHLグローバル・コネクテッドネス・インデックス:期待できる兆し
実際、グローバリゼーションは予想をはるかに上回る強靱さを示している。新たに発表されたDHLグローバル・コネクテッドネス・インデックス2020は、ニューヨーク大学スターン経営大学院との共同発表であり、この事実を裏付けている。
2019年に横ばいを保った後、COVID-19のパンデミックにより、世界のつながりの水準は2020年に低下する見込みだが、2008~09年の世界金融危機時に見られた水準を下回る可能性は低い。パンデミックの規模を踏まえれば、この予想外の回復力自体が驚くべきことだ。
ロックダウンや国境封鎖によって世界の人の移動は大幅に減少した一方、新しい報告書によると、資本の流れはすでに回復し始め、貿易は力強く持ち直し、デジタル情報の流通は急増している。
私たちは今も食料や衣料品を購入し、自宅や庭を整えることができている。NetflixやAmazonなどの娯楽サービスは大きく成長し、Skype、Facetime、Zoomを通じて連絡を取り合ってきた。
COVID-19のパンデミックは旅行、観光、その他の流れに打撃を与えたが、こうしたことは今回が初めてではない。2001年の9月11日の同時多発テロ、2002年のSARSウイルス、2008年の世界金融危機、2010年の火山灰による航空混乱、そして米中貿易戦争は、いずれも世界的な交流を中断させ、停滞させた。しかし、交流は常に回復してきた。世界貿易に関しては、ビジネスは立ち直るようだ。
2020年に私たち全員が示した適応力は驚くべきものだった。私たちのような物流企業は、この危機を通じて世界を動かし続けるうえで、重要な役割を果たしてきた。経済活動がほぼ停止したときも、私たちの業界は稼働を続け、文字どおり貿易の歯車に油を差した。
ロックダウンで商業便が運航停止になると、当社の専門家はわずか数週間でネットワークを再設計した。国境が閉鎖されると、道路輸送の専門家が新たなルートを見つけた。そして、工場の強制閉鎖後に企業が操業を再開すると、必要な在庫を確保し、機械を再稼働させ、生産を続けられるようにした。
物流は今後も、世界がこの危機を軽減するうえで重要な役割を担う。ワクチンが到着したとき、その効果的な配送を誰が担うのだろうか。COVID-19ワクチンを何十億回分も世界中の人々に届けるには、数千便もの航空便と保冷容器が必要となる。各国・地域内の物流に関する知識やノウハウに加え、現地の倉庫保管能力も必要だ。こうしたものすべてが、さらに大規模に必要となる。
電子商取引の力を生かす
物流は不可欠な継続性を支えているが、この危機は多くの分野に深刻な打撃を与えた。スポーツ、ライブエンターテインメント、教育は大きな混乱に見舞われたが、見通しが暗いとは限らない。先に述べたように、ソーシャルディスタンスによってデジタル化と電子商取引が急速に進んだ。特に国境を越えた電子商取引には大きな可能性がある。新たに何十億人もの顧客にリーチする機会となる。
多くの企業は、自社製品を海外に出荷する複雑さを過大評価していると私は考える。障壁は依然としてあるが、実際には、世界規模で製品を市場に投入することがかつてないほど容易になっている。
すべての輸出国と輸入国の組み合わせのうち、25%では商取引がまったく記録されていないという事実に、私は今も驚いている。これは、多くの国や企業が、つながりの拡大による恩恵をまだ活用していないことを明確に示している。その潜在的な利益は何兆ドルにも達し得る。国や企業を新たな市場につなぐことで、電子商取引は世界各地のさらなる成長と繁栄を力強く促すことができる。
つながりを取り戻し、強靱性を高める
各国がウイルスの影響からの回復に努めるなか、経済的困難や政治的動揺に直面するだろう。私たちの業界は立場を明確にしなければならない。貿易とグローバリゼーションの価値を示し、それらが恵まれない地域社会に繁栄をもたらし、世界中で人々の暮らしと将来への期待を向上させることを説明する必要がある。
テクノロジーによって、地球上の資源を動員し、人類の創意を結集して、今回および将来の危機に立ち向かうことができる。だからこそ、今回のパンデミック中に見られた孤立主義的な傾向(避けられなかったという見方もあるだろう)は一時的なものだと考えている。グローバリゼーションの仕組みは変化しているが、消え去るにはほど遠い。今年のDHLグローバル・コネクテッドネス・インデックスは、こうしたことをはじめ、さらに多くの事実を裏付けている。
実際、2020年は、私たちの幸福が世界とのつながりや協力にどれほど依存しているかを世界が理解した年として記憶されるだろうという信念を、私は今も抱いている。こうした変化を救命ボートと見るのではなく、成長を加速させるロケットとして捉え直そう。



