世界のサプライチェーンを動かし続けることが、COVID-19克服の鍵となる理由

Volunteers wearing face masks unload food supplies delivered from Xiaogan, Hubei province, on a truck following the outbreak of the coronavirus disease (COVID-19), in Suifenhe, a city bordering Russia in China's Heilongjiang province, April 19, 2020. Picture taken April 19, 2020. China Daily via REUTERS ATTENTION EDITORS - THIS IMAGE WAS PROVIDED BY A THIRD PARTY. CHINA OUT. - RC268G9FVOG7
The world's leaders need to ensure everyone has equal and fair access to supplies throughout the pandemic.Image: REUTERS
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  • ピーターソン国際経済研究所のアナベル・ゴンサレス氏は、新型コロナウイルスのパンデミックを通じて、開発途上国と新興国が手頃な価格の医療用品を入手できるよう、貿易政策を実施すべきだと主張する。

  • 同氏は、COVID-19と闘い、サプライチェーンを動かし続け、回復の基盤を築くため、G20各国に共同で貿易措置を講じるよう促している。

開発途上国、とりわけ最貧国にとって、輸入と輸出の双方を含む貿易は、COVID-19がもたらしかねない壊滅的な影響を和らげる、強力で費用対効果の高い手段である。G20各国は、手頃な価格の医療用品へのアクセスを改善し、世界中の人々の命を守る貿易政策を速やかに実施すべきだ。そのアクセスを危うくする政策は抑制されるべきである。この課題への対応には、国際協力が不可欠だ。

貿易は回復においても重要な役割を果たし得る。COVID-19が世界各地の産業に大きな打撃を与えるなか、G20各国はサプライチェーンの機能を維持する必要がある。また、世界経済の再建を支える、活力を取り戻した世界貿易の枠組みづくりにも着手すべきだ。

保健システムを支え、人々の命を守る貿易措置を採用する

医薬品、医療機器、その他の医療用品の関税を引き下げる

医薬品や医療機器の関税率は比較的低いが、パンデミックとの闘いに必要な消毒剤やその他の個人用防護製品には、多くの国で依然として高い関税や非関税障壁が課されている。石けんはCOVID-19に対する第一の防護手段だが、世界平均で17%の関税が課されており、72か国が15%を超える輸入関税を適用している。健康・衛生用品への関税は、逆進的な課税であり、病気の人々を標的にする。

こうした保護主義的措置を撤廃すれば、有効成分やその他の化学製品などの投入財のコストも下がり、国内投資と生産を促すことができる。出発点となるのは、世界税関機構が公表した、COVID-19対策に不可欠な医療用品の参考リストである。すでに複数の国が、重要な医療用品の特定カテゴリーについて、期限付きながら関税引き下げを発表している。米国の関税は、中国からの輸入品に対して人工呼吸器やその他の医療製品の不足を招くおそれがある。

保健関連の製品や資材の貿易を円滑化する

保健関連物資や、それらの製造に使う輸入投入財の国境を越えた移動は、時間がかかり非効率な税関・国境手続きや物流上の障害によって滞り、重要な製品を適時に入手できなくなるおそれがある。例えばワクチンは、港や工場から目的地まで、慎重かつ迅速に取り扱う必要がある。中国と欧州連合は、こうした遅延を避けるため、貨物の検査と通関を迅速化する「グリーンレーン」を設けており、他の国々もこれにならうことができる。シンガポールとニュージーランドが主導する5か国の取り組みを基盤として、G20も航空・海上貨物輸送の航路を開いたままにすべきだ。貿易を支えるため、政府は貿易金融の流れを保ち、流動性を維持すべきである。これは民間部門から求められている。

技術規格へのアクセスを拡大し、適合性評価手続きを迅速化する

医療機器には通常、消費者の安全と公衆衛生を守るため、設計、製造、市場投入に関する厳格な基準が設けられている。しかし、こうした規則が意図せず生産やアクセスを制限する場合がある。この問題に対処するため、欧州連合は一部の個人用防護具と医療機器に関する基本規格を無料で公開し、知的財産規則に従って企業が欧州規格を購入・使用する要件を撤廃した。この措置により、工場は生産ラインを迅速に転換できる。欧州委員会は、これらの製品について適合性評価手続きの迅速化と市場監視を推奨している。適合性評価の能力が限られている他の国々は、先進国の基準を満たした物資を自動的に登録することを検討すべきだ。

医療従事者が国境を越えて移動できるようにする

2020年2月、武漢の看護師2人が、世界各地の医療従事者に中国に来るよう呼びかけた。その後、中国は集中治療医300人をイタリアに派遣した。米国では、ニュージャージー州が、他国で免許を取得し、良好な資格状態にある外国人医師の一時的な診療を認めた。特に貧しい国々では、医師、看護師、その他の医療従事者がさらに移動できるようにする必要がある。柔軟な規制措置、特別ビザ、就労許可が役立つ。インドが求めるように、医療従事者の一時的な越境移動を支える共通の国際的枠組みがあれば、危機への対応が容易になる。

eヘルスなどのデジタル交流を通じて知識を共有する

米国では当局が、ハイリスク患者のスクリーニング、COVID-19に関する連絡や追跡、医療制度の運営を支援するため、遠隔医療の利用促進に動いている。世界の保健医療コミュニティは、エビデンスや経験を共有するため、デジタル技術、データ、国境を越えたeヘルスの交流を活用し始めている。国境を越えるデジタルサービス貿易を支える共通ルール、とりわけ保健分野のデジタル交流に信頼できる環境を整えるルールは、知識の迅速な共有や症例管理を支援し得る。

知的財産制度が新技術や医薬品へのアクセスを妨げないようにする

世界各地の企業は、COVID-19の予防と治療に向けて、診断法、ワクチン、抗ウイルス薬の開発を急いでいる。一方、政府は承認手続きの迅速化に取り組んでいる。イタリアの技術者が開発した、人工呼吸器部品の3Dプリントなどの新技術は、不足への対応に役立つ。しかし、知的財産制度による保護は、パンデミックが世界全体に及ぼす重大性との均衡を図らなければならない。新たな問題を整理する必要もある。共同の取り組みによって、すべての人々のアクセスを守る確実性を高められる。

人々の命や国々を危険にさらす貿易措置を避ける

2020年4月4日時点で、69の政府が、インドや欧州連合を含め、マスク、個人用防護具、医薬品、その他の医療用品の輸出を禁止または制限していた。こうした慣行は価格を押し上げ、投資を妨げ、報復を招くため、輸入国だけでなく輸出国にも損害を与える。一部の国は特定の食料品の輸出も制限している。過去には、同様の措置が食料不安を悪化させ、価格を上昇させた。

世界で最も貧しい国々は、こうした保護主義的政策に対して極めて脆弱である。輸出国10か国で、医療用品の世界輸出のほぼ4分の3、防護具の世界輸出の約3分の2を占めている。パンデミック対策に不可欠な医療製品を輸出する上位3か国は、それらの製品の世界輸入総量の65~80%を供給している(図参照)。輸出制限は、世界の大半の人々が不可欠な物資を入手できなくなり、壊滅的な結果を招くおそれがある。

世界は医療用品について、上位3輸出国に大きく依存している。Image: ピーターソン国際経済研究所(PIIE)

多くの企業が、一部の医療製品の生産を増やすために世界のサプライチェーンを活用しているが、政府は補助金を提供したり、生産を促すために供給ルート上の企業間協定を奨励したりできる。世界銀行などの国際機関も、貧しい国々が物資にアクセスできるよう支援できる。政府は、逆効果をもたらし、企業が海外の豊富な供給源を利用するのを妨げる「自国優先購入」政策の採用を控えるべきだ。

COVID-19と闘い、サプライチェーンを動かし続け、回復の基盤を築くため、共同で貿易措置を講じる

定期的なフォローアップの仕組みを伴うG20の共同対応は、政治的には受けがよくても自滅的な貿易政策を避けるうえで不可欠だ。世界的な協力が不可能なら、協力を望む国々が率先して行動すべきである。近年機能不全に陥っている世界貿易機関(WTO)は、各国が輸出禁止を控えることで合意するための場を提供している。また、医薬品貿易に関するWTOの取り組みの対象範囲と参加国を広げ、保健関連製品の関税および非関税障壁を撤廃する合意を促すこともできる。WTOはさらに、医療従事者の越境移動に関する共通枠組みや、新たなワクチン・医薬品を手頃な価格で入手できるよう政府が取る措置を、WTOの「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」が制限しないという共通理解など、上述の他の措置の進展を後押しできる。

COVID-19後の世界経済には、世界貿易協力の縮小ではなく、さらなる強化が必要となる。投資と貿易を促進するには、世界貿易ルールが求められる。COVID-19パンデミックがもたらした劇的な変化に合わせてルールを更新するため、WTO改革はかつてないほど急務となっている。G20各国は貿易に関する国際協力を崩壊させてきた。今こそ危機を好機とし、世界貿易協力を再び築く種をまく機会である。

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