新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが人的資本へのアプローチを変えうる6つの方法

People stand on signs to respect social distancing on a platform for the tramway in Nice as France begun a gradual end to a nationwide lockdown due to the coronavirus disease (COVID-19), France, May 11, 2020. REUTERS/Eric Gaillard TPX IMAGES OF THE DAY - RC27MG9CYF7G
The COVID-19 pandemic has illustrated the inextricable link between human health and organizational successImage: REUTERS/Eric Gaillard
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  • 人的資本のガバナンスの枠組みが十分に整備された企業は、より優れた投資先と見なされ、長期的な価値をより多く創出できると考えられています;

  • COVID-19危機は、報酬制度への影響から従業員のウェルビーイングに至るまで、人的資本と従業員への関心を新たに高めています;

  • 人的資本に関するこれら6つの分野への投資と優先的な取り組みは、組織がCOVID-19のリスクや悪影響を軽減する一助となり得ます。

COVID-19のパンデミックは、人の健康と組織の成功が切っても切れない関係にあることを明らかにしました。投資家や規制当局も、人的資本のガバナンスを強化するよう、企業の取締役会に期待を寄せています。

人的資本のガバナンスの枠組みが十分に整備された企業は、より優れた投資先と見なされ、長期的な価値をより多く創出できると考えられています。また、米国証券取引委員会(SEC)などの規制当局は、従業員の健康を守るためにとった措置を、今後の決算発表で開示するよう企業に求めています。

こうした変化や、依然として進行中のCOVID-19危機の中で、取締役会は従業員を事業再建に不可欠な重要なステークホルダーとしてますます捉えるようになっています。取締役会が人的資本のガバナンスを重視するようになるにつれ、従業員への関心が新たに高まり、6つの分野で急速な変化が見られます。すなわち、従業員の報酬、ウェルビーイング、インクルージョンとダイバーシティ(I&D)、将来の働き方、リーダーシップ、そして企業文化です。

従業員の報酬:公平性への注力

COVID-19のパンデミックにより、報酬の減額、インセンティブの再設定、特別手当の支給などを通じて、組織が報酬制度を変更するスピードが早まりました。危機はまた、必須労働者や最前線で働く労働者を含めるように、組織が従業員をどのように区分するかの枠組みも変えました。危機が続く中、組織はどの変更が一時的で、どの変更が恒久的になるのかを見極めるため、長期的な戦略を検討する必要があるかもしれません。

加えて、人種的不公正や社会のすべての層に対する公正な待遇をめぐる真剣な議論により、報酬制度にはジェンダー以外にも偏りがないかという、さらなる疑問が浮上しています。

米国における人種・民族別の男女間賃金格差および同一賃金格差Image: Statista

これらの課題は、組織が偏りのない、I&D戦略に沿った「公正な報酬」を真に実現できているかどうかに大きな影響を与えかねません。賃金の公平性を確保するため、取締役会は組織の公正な報酬戦略の有効性を理解しておく必要があります。報酬の慣行や制度の設計と運用の公正性は最優先事項となるはずです。報酬の問題は、より広範な人材の多様性の問題の表れであることも多いためです。

ウェルビーイング:事業の継続に不可欠

変化と不確実性により、従業員は身体的、精神的、経済的に疲弊しています。COVID-19以前から、従業員の精神的および経済的なウェルビーイングは企業にとって最大の関心事でした。現在、企業はパンデミックの状況変化に適応し続けており、従業員の健康、レジリエンス、ウェルビーイングは、事業を継続するうえでさらに重要になっています。

外出自粛命令が広範に出されたことで、雇用主は事業の縮小、停止、あるいはオンラインへの移行を余儀なくされ、その結果、従業員全体のウェルビーイングにも影響が出ています。企業が新しい職場のあり方を再構築し始める中、従業員の健康と安全は引き続き極めて重要です。取締役会は、適切な枠組みが整備されていること、また、経営陣のウェルビーイング戦略が、企業のリスクを最小限に抑えつつ、従業員の主要な懸念に十分対応していることを確保する必要があります。

ニュージーランドのウェルビーイング予算
ニュージーランドのウェルビーイング予算
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インクルージョンとダイバーシティ:戦略を見直す時期

今は、取締役会と経営幹部が自社のI&D戦略を見直すうえで、特に重要な時期です。まず経営トップについて言えば、一部の取締役会の構成が、想定や理想に比べて多様性に欠けている可能性があります。この不確実な時期を乗り切るためには、より多様な考え方が必要になるため、それが新たなリスクを生じさせる可能性があります。組織の他の部門では、最前線の労働者の一時帰休によって多様性の統計が変化しており、特に、そうした一時帰休が残りの従業員の多様性を低下させている場合にはその傾向が顕著です。

また、人種は多くの組織にとって引き続き重要なテーマであり、企業は取締役会メンバー、上級管理職、そして組織全体の労働力において、より多様性を高めるための実質的かつ測定可能な進捗を示すよう、投資家やその他のステークホルダーから引き続き圧力を受けることになるでしょう。

強固なI&D戦略は、運用上のリスクを低減するだけでなく、イノベーションの水準も高めます。包摂的な環境では、さまざまな背景を持つ人々がそれぞれの見識を共有することで、多様な考え方や視点が増えていくためです。

将来の働き方:前倒しで進む

「将来の働き方」はパンデミック以前から着実に進んでいましたが、COVID-19によってその到来が明らかに早められました。取締役会には今、(パンデミックの途中および終息後において)変化する現実に適応するために、組織の人材戦略を再調整する機会があります。

数字で見る将来の働き方Image: OECD

例えば、ソーシャルディスタンスの確保とリモートワークの拡大が進む時代において、企業は人材戦略を再編し、従業員の再教育(リスキリング)を進めています。ハーバード・ビジネス・レビューは、パンデミックという環境下で、組織は将来の働き方に関する3つのコンセプトを検討すべきだと指摘しています。

  • ワークポータビリティ(働く場所や形態の可搬性)

  • 自動化

  • 業界横断的な人材交流

COVID-19のパンデミックにより、人材の再編、再活用、そして(再)スキル化に向けた対応が不可欠となっています。人的資本をより効率的で、機動的かつ目的志向の資源へと育成することで将来の働き方を前倒しする企業は、リスクを抑えながら、持続的に競争力と収益性を高めることができます。取締役会は将来の働き方を長期的な視点で捉え、急速に変化する労働環境に組織が先手を打って対応できるようにする必要があります。

リーダーシップ:ウェルビーイングを育む文化の推進

多くの人にとって物理的な職場は健康上のリスクとなっており、企業はすぐさま物理的な改修を行うか、職場を完全にオンラインへ移行してきました。こうした変革のもと、取締役会は、事業成果を上げながらも、身体的および心理的な安全を促進する文化を広めるリーダーに大きく依存しています。

取締役会は、経営陣に対し、自社の事業目的、価値観、文化を慎重に考慮したうえで、長期的な価値創造を最もよく支えるリーダーシップの能力を見直すよう期待すべきです。経営陣は、優れたリーダーの新たな特性を明確に示し、これらの要件に基づいて適切なリーダーを育成するためのプロセスを確立すべきです。

取締役会が見直してきた後継者計画の多くは、幹部人材と、戦略上または業務上の成功に不可欠な役割を担う限られた数の現任者に焦点を当ててきました。現在の状況では、取締役会は経営陣の支援を得て、後継者計画の策定を見直し、「重要人材」の定義をより広げることを検討してもよいでしょう。組織の下位層にいる将来のリーダーや、必須労働者および最前線の労働者も、その対象に含めることが考えられます。

「重要人材」の定義を広げることは、人的資本に起因する将来の混乱を軽減する助けとなります。こうした取り組みは組織の将来への備えを強化します。あらゆる組織階層にわたる強固な人材パイプラインがあれば、変化する事業環境に即座に対応できるためです。

企業文化:価値観と目的を最前線へ

高い成果を上げている多くの企業は、こうした困難な時期にあっても、従業員、組織の目的、価値観へのコミットメントを維持しています。目的や文化的価値観を活用して迅速な意思決定を行い、従業員、消費者、投資家にできる限りの確実性をもたらしています。取締役会と組織は、従業員が全体戦略を支えるために何をすべきかを理解できるような文化の醸成に努めるべきです。

今後、組織は文化を有意義な方法で測定し、進捗を示す方法を模索していくと考えられます。取締役会とともに、重要な文化的特性を2つから3つ定義し、それらの特性を市場のベンチマークと比較して測定することで、組織は文化の成果を追跡し、従業員の経験、そして何より財務実績を最大化する戦略を立てることができます。

まとめ

同業他社と比べると、人的資本を幅広いサステナビリティ戦略の一部として優先してきた組織は、今後数四半期にわたり、リスクを軽減し、より幅広な価値創造を支えることがより確実にできるようになると考えています。思い通りに迅速な対応ができなかった企業にとっても朗報があります。これらの戦略的な施策に取り組むには、まだ遅すぎるわけではありません。

Justin Luce、Ruby Tewani、Jacob Custerも本記事に寄稿しました。

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