備えのできている企業には、COVID-19を受けて新たな機会やビジネスモデルが生まれている。
セレンディピティを受け入れる心構えは、リーダーや企業がこの予測不能な時期を好機とする助けになる。
不確実性に備えながら進むべき方向を示すこと、そして状況が企業文化をどう形づくるべきかを考えることは、企業が取れる2つのアプローチだ。
COVID-19とそれに伴う経済的混乱は世界中の企業に負担をかけ、多くの企業に存続を脅かす危機をもたらしている。企業はこの不確実性をどう乗り越え、予測不能な状況を、創意工夫に富むイノベーションや「幸運をつかむ力」に変えられるだろうか。
日常生活の流れを変え、格差を拡大させたパンデミックを背景に、人々や企業が予期せぬ事態を創造的な方法で受け入れる姿が見られる。操業を停止する代わりに、蒸留所の中には手頃な価格のアルコール消毒液の製造を始めたところがあり、人工降雪機のメーカーは広い屋外空間を消毒する装置の製造に乗り出し、水着メーカーは電子商取引で健康食品を販売し始めた。備えのできている企業には、新たな機会やビジネスモデルが生まれている。
一流企業やCEO、インキュベーター、社会的企業を10年にわたって調査した結果、世界で最も刺激的なリーダーたちは、しばしば無意識のうちに、予期せぬ事態に対応する力を身につけてきたことが分かった。その力は創造性と機知を引き出し、とりわけ不確実な時期にインパクトを生み出す。彼らは点と点を見つけて結びつけることで、自ら「幸運をつかむ力」を生み出す。私たちがこのセレンディピティを受け入れる心構えを自分たちのビジネスに生かすには、どのような手順を踏めばよいだろうか。
1)予期せぬ事態に備えながら、進むべき方向を示す。私たちはなぜここにいるのか、そして人々が関心を持つべき理由は何か。効果的なリーダーは、とりわけ危機の時期に、進むべき方向を示すと同時に、未来をコントロールすることはもちろん、予測することさえできないという深い認識を持つことが多い。企業はしばしば、受け継いできたものを見つめ直して現代化したり、自社の能力を現在の危機やSDGsのようなより広範な枠組みと結びつけたりすることで、この進むべき方向を明確にする。インキュベーターに関する最近の調査によると、予期せぬ事態に心を開くことは、創業初期の企業にとりわけ重要だ。
2)視点を変える。視点を変えるとは、状況や自分たちの能力を別の角度から見ることだ。デザイナーブランドは、スタイリッシュなマスクやガウンを製造・販売できると気づくかもしれない。COVID-19のため公演が中止になったアーティストは、オンラインで楽器を教えることで新たな観客を獲得し始められる。大企業がこうした新たな機会を見いだすには、しばしば構造改革が必要だ。たとえば、断層撮影など特定のソリューションや技術を軸に事業部門を編成している多国籍企業を考えてみよう。こうした編成では、断層撮影の改善に関わることだけに発想が限定される。事業部門の枠組みを精密診断へと広げれば、特定の製品や技術に縛られず、解決すべきより広範な課題に焦点を当てられるため、真のイノベーションが生まれやすくなる。
3)予期せぬ事態を生かして、事業運営や企業文化を形づくる。変化の速い世界では、課題に対する予想外の解決策がしばしば生まれる。私たちはその意味を理解する必要がある。IKEAが風力発電所を建設したことやマヒンドラ&マヒンドラが効果的な廃棄物発電プロジェクトを運営していることは事前に計画されたものではなく、予期せず生まれた解決策だった。これらの企業のリーダーたちは、予期せぬ事態は脅威ではなく機会になり得ると気づき、それが事業運営や企業文化を形づくる助けとなった。これは危機の際に特に当てはまる。ベスト・バイはハリケーンへの対応で、従業員を家族のように扱い、食料や水、専用機を手配した。その結果、顧客ロイヤルティと従業員の生産性が大幅に向上した。
4)賭けに出て、可能性を広げる。先見性のあるリーダーは、「賭けに出る」方法をますます多様化させている。その一つが「マイクロ企業」モデルの導入で、従業員が会社のリソースを活用し、新しいアイデアを見つけて育てるよう促す。投資委員会は、最も有望なアイデアに賭ける。中国企業ハイアールの例には、農家が洗濯機でジャガイモを洗っているという意外な観察から生まれた、ジャガイモ洗浄機がある。つまり、イノベーションは一部の人だけに限られたものではない。企業の存続に役立つ潜在的な機会を見つけることは、社内の全員の仕事だ。
5)セレンディピティに気づく力を育てる。予期せぬ出来事に気づき、それをイノベーションにつなげるには、鋭い注意力が欠かせない。週次会議でチームメンバーに、先週何か驚くようなことに遭遇したか、もしあれば、それによって自分の前提が変わったかを尋ねる習慣を取り入れている企業もある。しかし、従業員から新たな気づきやアイデアを引き出したいなら、それを口にする際のリスクを減らす必要がある。ピクサーのような企業から学ぶことができる。同社では会議で、ほとんどのアイデアは最初は良くないと経営陣が強調する。そして「不完全な」アイデアや解決策、プロセスを、継続的な学びの手段として活用する。
6)帰属意識を育む。企業は、人々が交流するうえで最も重要な場であることが多い。人との物理的な距離を保つCOVID-19の時代には、その役割をオンラインで再現する必要がある。たとえば「ランダムランチ」では、組織内で面識のない人同士を無作為に組み合わせ、刺激を与える問いについて話し合うよう促す。これが新たな気づきや視点につながることもある。
予期せぬ事態やCOVID-19のような危機への反応は、しばしば私たちが何者であるかを定義する。ヴィクトール・フランクルの考えにならえば、刺激と反応の間には空間があり、その空間にこそ選択する力がある。何を選ぶかが、イノベーションと衰退の分かれ目になり得る。
