偽造業者は、偽のCOVID-19関連機器や医薬品で市場を溢れさせている。
新種のセキュアQRコードが解決策になりうる。
この技術の仕組みは次のとおり。
偽造業者は、偽のマスク、コロナウイルス検査キット、最前線で働く人々が着用する個人防護具(PPE)、COVID-19の患者の治療に用いられる医薬品や医療機器などで市場を溢れさせている。
先週、欧州対不正行為局(OLAF)は、すでに偽造品を取り扱う340社を特定したと発表した。これらはいずれもCOVID-19の大流行に関連している。偽造品の大半は、効果がないどころか、極めて危険なものである。患者も医師も、正規で効果のある治療を受けていると信じて騙されている。これにより患者の回復の可能性は低下し、ウイルスの拡散を止めたり抑えたりする取り組み全般が妨げられている。
トレーサビリティと透明性
偽造業者がこの新たな市場機会にすばやく飛びついたことは、驚くに当たらない。高級ハンドバッグや腕時計であれ、医薬品やワインのボトルであれ、ブランド名が付いたものはすべて偽造される。多くの偽造品は外装や包装が正規品と見分けがつかない一方、中身の製品は通常、不具合があったり、劣悪な部品で作られていたり、少なくとも適切な製造基準に従っていなかったりする。偽造業者にとっての唯一の課題は、摘発されることなく、模倣品を正規の流通経路に紛れ込ませることである。このため、偽造業者は、偽造品を流通させる機会が多く残された、不透明で長く複雑なサプライチェーンを好んで利用する。
トレーサビリティ・システムは、サプライチェーンに不可欠な透明性をもたらす。このシステムは、製造時に製品の包装に付与されるバーコードや無線周波数識別(RFID)タグに埋め込まれた、シリアル化された固有の識別子に依拠している。商品がサプライチェーンを移動する過程で、製品や、それらを収めたケースやパレットは、検査のためにスキャンされたり、トレーサビリティ・データを追加するためにスキャンされたりする。スキャンのたびに新たなデータポイントが生成される。これにより、製品のトレーサビリティ履歴が積み上げられていく。製品が店頭の棚に並ぶと、消費者は製品の識別子をスキャンして、製品の産地、消費期限、またはそれに関連する他の情報を確認できる。こうしたスキャンの積み重ねによって、サプライチェーンのトレーサビリティと透明性が実現されていく。
従来型QRコードの限界
製品の識別子として最も広く使われている多用途な識別子の一つが、QRコードである。QRコードは、世界中で今やどこにでもある二次元マトリクス型バーコードの一種である。私は銀行口座にログインするたびに、スマートフォンでQRコードを読み取るが、セキュリティについて深く考えることはない。それでも疑問は残る。偽造業者や詐欺師を食い止めるうえで、QRコードをどこまで信頼できるのか。取引を開始するために画面に表示されるQRコードは、一般に信頼できるとされている。暗号化された情報を含み、さらに重要なことに、スキャンや取引のたびに内容を更新できるからである。例えば中国では、この種の動的QRコードが、コロナウイルスとの戦いにおける重要な技術の一つとなっている。健康状態を示す指標として利用されている。公共の場に入る際、市民は自分のスマートフォンに表示されたこのコードを提示して、健康状態を証明する。しかし、固有で暗号化されたQRコードを製品に印刷した場合、そのコードは製品のライフサイクルを通じて変わらないため、複製されやすい状態にある。正規のQRコードとその複写物を並べて置いた場合、スマートフォンでスキャンしても、どちらが複写物で、どちらが原本かを見分けることはできない。
容易に複製できるにもかかわらず、ブランドオーナーや政府までもが、偽造品や違法取引を検知するためにサプライチェーンを監視する手段として、シリアル化されたQRコードを使う例が増えている。また、消費者に対しては、製品の真正性を確認する手段として推奨されている。実際、同じQRコードが多数の偽造品に使われた場合、統計的にそのコードは何度もスキャンされ、最終的に偽造品として検出される。実用的な前提としては、偽造業者が大規模に有効な固有識別子を収集することはできない、あるいは収集しようとしないだろうという考えがある。これが実現すれば、製品認証に使われるQRコードを確実に突破されてしまうからだ。スキャンの監視によって偽造業者の参入障壁が高まることは確かだが、単純なQRコードは本質的に複製の試みに対して脆弱であり、消費者はやがてそれを受け入れなくなるだろう。信頼は段階的に与えられるものではない。信頼するか、しないかのどちらかである。
偽造防止型QRコード
幸い、印刷されたQRコードや、その他の種類のバーコードのセキュリティを確保する技術は存在する。その一つが、コピー検出パターン、すなわちセキュア・グラフィックと呼ばれる技術である。セキュア・グラフィックとは、印刷または複写されるたびに情報が不可逆的に失われるように最適に設計されたランダムなデジタル画像であり、そのため複写物は常に、原本の印刷物よりも少ない情報しか含まない。印刷工程で、このセキュア・グラフィックをQRコードのデジタル画像に埋め込むことで、本質的に複製に対して安全なセキュアQRコードとなる。

私は20年近く前から、偽造品を検出するための数学的手法の研究に取り組んできた。当時は、消費者にQRコードがほとんど知られておらず、携帯電話にカメラも搭載されていなかったため、そうした手法の利用範囲も影響力も限られていた。カメラの光学性能が飛躍的に向上した今日では、スマートフォンで、精巧な偽造品を検出するために必要な細部まで捉えた高解像度のマクロ撮影が可能になっている。遠隔のサーバーで処理される機械学習ベースの認証アルゴリズムを用いることで、スマートフォンは強力な認証装置となった。この技術はすでに成熟しており、大量生産される製品にすでに導入されている。多くの地域でQRコードが一般化した今、こうした認証技術の大規模な普及を妨げていた主要な障壁は、すでに克服されている。
ブロックチェーンは、偽造品対策としてサプライチェーンに不可欠なトレーサビリティと透明性をもたらす、実現手段の技術として、しばしば提唱されてきた。確かに、ブロックチェーンは分散型でより安全な記録管理によってデータ収集を容易にし、互いに信頼し合うとは限らない主体間のデータ共有も促進できる。また、通常は一つの利害関係者が管理する従来型の集中的なデータ管理の限界を克服し、複数の利害関係者がトレーサビリティ・データの協力と共有にインセンティブを一致させるガバナンス・モデルの活用を可能にする。しかし、ブロックチェーン・システムの信頼性は、本質的には、物理的な世界からデジタルの世界への移行を橋渡しする、安全で固有の識別子による、実物の商品や資産の安全かつ確実な識別に依存している。したがって、ブロックチェーンを基盤とした解決策を検討する前に、まずは、つながったサプライチェーンを構築するための第一歩として、製品を安全にデジタル化する手法を確立することが極めて重要である。
セキュアQRコードは、標準的なサプライチェーンのトレーサビリティ・システムにも、ブロックチェーンを基盤としたシステムにも共通する、最も脆弱な部分への解決策である。消費者は、製品のスキャンにますます依存しており、その信頼を維持するうえで、セキュアQRコードは重要な手段となる。偽造業者を阻止し、偽造品がもたらしてきた健康、安全、経済への甚大な被害に終止符を打つため、今こそ手元にある技術を活用すべき時である。

