新型コロナウイルス感染症の拡大を抑えるため、緊急の保健対応を拡大しなければならない一方で、パンデミックへの対応をSDGsから切り離すことはできないと、ノルウェー首相とガーナ共和国大統領は述べる。
健康と福祉(SDG 3)の進展を後退させることから、12億5,000万人の学生(SDG 4)への悪影響に至るまで、パンデミックは脆弱な社会に最も大きな打撃を与えている。
エルナ・ソルベルグはノルウェー首相であり、国連事務総長のSDGアドボケーツの共同議長を務める。
ナナ・アド・ダンクワ・アクフォ=アドはガーナ共和国大統領であり、国連事務総長のSDGアドボケーツの共同議長を務める。
今日、世界は未曾有の規模の危機に直面している。新型コロナウイルスは世界各地に甚大な被害をもたらし、人々の生活と生計を一変させている。人命の損失というパンデミックの代償は痛ましいが、世界経済と持続可能な開発の見通しへの影響も懸念される。国際通貨基金(IMF)は、世界が景気後退に入ったと推計している。危機の経済的影響の全容を予測するのは難しいものの、初期の推計ではその規模は2兆米ドルに上る。
パンデミックは、世界システムの根本的な弱点を露呈させた。貧困の蔓延、脆弱な保健システム、教育の不足、そして国際協力の欠如が、いかに危機を深刻化させるかを示している。
世界が共通の課題に直面していることに少しでも疑いがあったなら、このパンデミックがそれを完全に払拭するはずだ。この危機は、世界が相互に依存していることを改めて明らかにした。人々の基本的ニーズを満たし、地球を守り、より公正で強靱な世界を築くために、世界規模の行動が急務であることも浮き彫りにした。私たちは共通の世界的課題に直面しており、それを解決するには共通の世界的な解決策が必要だ。結局のところ、このような危機では、最も弱い環が全体の強さを決める。貧困をなくし、地球を守り、繁栄を確かなものにするための世界的な青写真である持続可能な開発目標(SDGs)が目指すのは、まさにこうしたことだ。
残念なことに、このパンデミックはSDGsが勢いを増し、相当数の国々が順調な進展を遂げていた時期に起きた。世界がウイルスの拡大抑制と悪影響への対処に追われる中、各国が優先事項を見直し、パンデミックに対処するために資源を再配分しているのが現実だ。今の最優先事項は命を救うことであり、どんな犠牲を払ってでもそうしなければならないのだから、これは間違いなく正しい対応である。
だからこそ私たちは皆、ウイルスの感染を抑え、パンデミックを終息させるために緊急の保健対応を拡大し、特に女性、若者、低賃金労働者、中小企業、インフォーマルセクター、そしてすでにリスクにさらされている脆弱な人々に重点を置くという国連の呼びかけを支持しなければならない。力を合わせれば、命を救い、生計を立て直し、世界経済を軌道に戻すことができる。
しかし、この重大な局面にあっても、不可欠なSDGsの取り組みから資源を振り向ける余裕はない。パンデミックへの対応をSDGsから切り離すことはできない。実際、SDGsを達成すれば、世界的な健康リスクや新興感染症に対処するための確かな道筋が得られる。SDG 3(すべての人に健康と福祉を)の達成は、各国が国内外の健康リスクについて、早期警戒、リスク低減、管理を行う能力を強化することにつながる。
このパンデミックは、世界の保健システムが危機にあることを露呈させた。2030年までのSDG 3達成の見通しを著しく損なう一方で、他のすべてのSDGsにも広範な影響を及ぼしている。
SDGs達成に向けた取り組みに危機が及ぼす幅広い影響について、明らかになりつつある証拠は憂慮すべきものだ。ユネスコは約12億5,000万人の学生が影響を受けていると推計しており、SDG目標4(質の高い教育)の達成に深刻な課題をもたらしている。また、国際労働機関(ILO)は約2,500万人が職を失う可能性があると推計しており、インフォーマル雇用に従事する人々が社会保障の不足によって最も大きな苦境に陥っている。残念ながら、これらは氷山の一角にすぎない。
特に世界の多くの地域では、安全な水とトイレを利用できる環境に関する目標(SDG 6)の達成をめぐる危機、弱い経済成長とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の欠如(SDG 8)、広範な不平等(SDG 10)、そして何より根深い貧困(SDG 1)と食料不安(SDG 2)によって、パンデミックとその影響が深刻化している。世界銀行は、この危機によって約1,100万人が貧困に陥ると推計している。
パンデミックのこの段階にあっても、世界市民として、互いを支え合い、誰一人取り残さず、最も脆弱な人々のニーズを優先することの何よりの大切さを、この危機が私たちに教えているという事実は否定できない。
今まさに必要なのは、政治的意思と取り組みを一層強めることだ。世界には知識、能力、イノベーションがあり、十分な意欲があれば、目標達成に必要な資源を動員できる。連帯の精神に後押しされ、各国政府、企業、多国間組織、市民社会は、可能な限り短期間で数十億ドル、場合によっては数兆ドルを集め、このパンデミックとの闘いを支援してきた。貧困、飢餓、気候変動との闘いにも同じ重要性と緊急性を持たせれば、SDGsの「行動の10年」を成功させることができる。
世界がこのパンデミックに対応し、世界の繁栄を取り戻そうとする中、持続可能な開発目標を通じて根本的な要因への対処に注力しなければならない。この危機のさなかでも、取り組みを緩めてはならない。SDGsの一部の進展が損なわれたとしても、意欲を失ってはならない。それを原動力として、「より良い復興」を目指すこの行動の10年に取り組みを加速し、さらに深め、より健康で安全、公正、そして豊かな世界を築くべきだ。
