パンデミックの間、世界各国の政府は、新型コロナウイルスの流行を封じ込める取り組みを説明するため、軍事的な比較や比喩を用いてきました。
ドイツは他の多くの国とは異なり、そうした表現を一切使うことを避けてきました。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのダグマー・パウルス氏が、その理由と、ドイツの新型コロナウイルス流行にどのような影響を及ぼしているのかを探ります。
世界各地の多くの政治指導者は、新型コロナウイルスのパンデミックを説明するため、紛争のイメージを持ち出してきました。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、自国は目に見えない敵と戦争状態にあると述べました。米国のドナルド・トランプ大統領は、「戦時大統領」であるという考えを大いに喜んでいます。英国のジョンソン首相は、ウイルスを「敵」と呼び、経済を守るために「戦時下の政府と同じように行動しなければならない」とさえ述べました。
しかし、ドイツではこうした言葉は使われていません。ウイルスは「敵」ではなく、封じ込める過程も戦争ではありません。歴史的な理由から、ドイツの政治家は戦争の比喩を避ける傾向があるのかもしれません。ドイツの政治指導者が、たとえ比喩であっても戦争について語れば、国内外で好意的に受け止められないという思いがあるのでしょう。
これは特に、極右政党AfDがドイツで許容される範囲を広げようとしているためです。同党の指導者の一人は最近、第二次世界大戦後にドイツが領土を失ったことを嘆きました。この立場は、多くの人々から非難されており、その中にはドイツ・ユダヤ人中央評議会も含まれています。
そのため、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、新型コロナウイルスについて語る際に戦争のイメージを使いません。実際、比喩そのものをほとんど使いませんでした。危機下で初めて行った大規模な公の発信は、3月18日のテレビ演説でした。危機を説明するメルケル氏の言葉は簡潔で率直でした。「この状況」、「歴史的な課題」、そしてこれから待ち受ける「大きな試練」と語りました。
メルケル氏が過去に言及したのは、そこに戻りたくないという思いを伝えるためでした。民主的自由を制限する決定が軽々しく下されたものではなかったと強調する際、自身が東ドイツで育った経験に触れました。
4月23日のドイツ連邦議会での演説でも、メルケル氏は比喩をほとんど使いませんでした。現在の状況を「真の試練」、「厳しい時代」、「劇的な危機」、「途方もない課題」と呼びました。使った比喩表現は「薄氷」と「長距離走」だけでした。これらの比喩が想起させるのは困難であって、戦闘ではありません。
メルケル氏が強い言葉や情熱的な発言をするタイプではなかったのは確かですが、他のドイツの政治家も同様の姿勢を取っています。16人の州首相のうち、新型コロナウイルスをめぐる議論で特に注目されているのは、バイエルン州のマルクス・ゼーダー氏と、ノルトライン=ヴェストファーレン州のアルミン・ラシェット氏です。
首相と同様、ゼーダー氏もウイルスを説明する際は、おおむね率直な言葉を使います。「指数関数的な拡大」、「危機」、「課題」といった表現です。

ラシェット氏も新型コロナウイルスをめぐる議論で積極的に発言してきました。メルケル氏の後継者として首相を目指しており、自らの存在感を示す必要を感じているのかもしれません。やや劇的な表現を使いましたが、それでも戦争にまでは踏み込みません。「敵」ではなく「対抗者」と呼び、人々は犠牲を払わなければならないと警告しました。4月末までには、「状況」や「出来事」といった、より中立的な表現に戻っていました。
ドイツの政治家の演説はおおむね分かりやすく、曖昧さもありませんでしたが、混乱も生じました。ロックダウン開始時、連邦制を構成する各州はそれぞれ異なる規則を決めました。たとえばニーダーザクセン州が3月にDIY用品店を閉鎖すると、営業を続けていた隣接州へ人々が大量に移動し、同州は方針を撤回することになりました。
死亡率の低さ
全体として、これまでのところドイツは比較的うまく対応してきたようです。ドイツ政府はパンデミックのかなり早い段階にあたる3月17日に、封じ込め措置を導入しました。執筆時点で、ドイツでは感染者が17万9,000人、死者が8,300人で、他の多くの欧州諸国を大きく下回っていました。
ドイツ国民の反応はおおむね好意的でした。メルケル氏と、その所属政党である中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)への支持率は、ここ数週間で上昇しました。
しかし、少数ながら声の大きい抗議者たちは、措置の終了を求めています。皮肉なことに、ロックダウンが緩和された今、彼らは支持を広げています。ドイツの措置はスペイン、イタリア、フランスと比べてかなり穏やかだったにもかかわらずです。
抗議者たちは、やや奇妙な連合を形成しています。民主的権利や経済を懸念する人々がいる一方で、極右の構成員、陰謀論者、反ワクチン派、反ユダヤ主義者もいます。2008年の金融危機は、おそらくAfDの台頭に寄与しました。今、再び大規模な景気後退が迫るなか、右翼過激主義の脅威は高まる可能性があります。
