科学者らが2万年前のコロナウイルス流行の「痕跡」を発見

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  • 研究者らは26の集団に属する2,500人以上のヒトのゲノムを分析し、過去のコロナウイルス流行への適応を解明しようとした。

  • その結果、2万年以上前に東アジア地域でコロナウイルスの流行が起きていたことが明らかになった。

  • その流行の痕跡は、当該地域の人々の遺伝的構成に見て取れた。

2万年以上前に東アジア地域でコロナウイルスの流行が起きていたと、研究者らは報告している。

その流行の痕跡は、当該地域の人々の遺伝的構成に見て取れることを研究者らは発見した。

研究者らは、世界26集団の現代人2,500人以上のゲノムを分析し、ヒトが過去のコロナウイルス流行にどのように適応してきたのかをより詳しく理解しようとした。

研究チームは計算手法を用いて、コロナウイルスへの適応の遺伝的痕跡を明らかにした。コロナウイルスは、過去20年間に起きた3つの主要な流行の原因となったウイルス群であり、現在進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックもその一つである。

過去20年間に、重症コロナウイルスによる3つの流行が発生した。2002年に中国で発生し800人以上が死亡した重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因であるSARS-CoV、850人以上が死亡した中東呼吸器症候群(MERS)の原因であるMERS-CoV、そしてSARS-CoV-2でありこれが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こし、380万人が死亡している。

しかし、ヒトゲノムの進化に関するこの研究により、それよりも数千年前に別の大規模なコロナウイルス流行が起きていたことが明らかになった。

「化石化した恐竜の骨を直接見つけるのではなく、化石化した恐竜の足跡を見つけるようなものだ」と、米アリゾナ大学の生態学・進化生物学部の教授であるデイビッド・エナード氏は述べている。「古代のウイルスそのものを直接見つけたわけではない。その代わりに、古代の流行の際にウイルスがヒトのゲノムに及ぼした自然選択の痕跡を見つけたのだ。」

コロナウイルス流行の痕跡をたどる

研究チームは、生細胞を使わずにヒトとSARS-CoV-2のタンパク質をそれぞれ合成し、両者が直接かつ特異的に相互作用することを示した。これは、コロナウイルスが細胞に侵入する際に用いる仕組みが保存されていることを示唆している。

現代人のゲノムには、数十万年前にさかのぼる進化の情報が含まれており、その中には、ウイルスを含む新たな脅威を生き延びることを可能にしてきた生理的・免疫学的適応も含まれている。

その結果、東アジア人の祖先は、COVID-19に類似した、コロナウイルスが引き起こす疾患の流行を経験していたことが明らかになった。東アジア人は、現在の中国、日本、モンゴル、北朝鮮、韓国、台湾にあたる地域の出身である。

ウイルスが細胞に侵入するには、宿主細胞が産生する特定のタンパク質と結合し、相互作用する必要がある。このタンパク質は「ウイルス相互作用タンパク質」(VIP)と呼ばれる。研究者らは、VIPをコードするヒトの42の異なる遺伝子に適応の兆候を見いだしじ、現代の東アジア人の祖先が2万年以上前に初めてコロナウイルスに曝露されていた可能性を示唆した。

ウイルスが細胞に侵入するには、宿主細胞が産生する特定のタンパク質と結合し、相互作用する必要がある。Image: Penn State

「42のVIPは主に肺で活性を示すことが分かった。肺はコロナウイルスの影響を最も受ける組織である。さらに、それらが現在のパンデミックの原因となっているウイルスと直接相互作用することも確認した」と、アデレード大学生物科学部の筆頭著者であるヤシーン・スイルミ氏は述べている。

VIPは宿主細胞の表面に存在し、コロナウイルスが細胞に侵入するために利用される。加えて、細胞内に入ったウイルスは、その他の多くの細胞内タンパク質とも相互作用する。

「ウイルスの増殖を抑制するか、あるいは増殖を助けるタンパク質をコードするヒトの遺伝子は、通常予想されるよりもはるかに多くの自然選択を約2万5,000年前に受けていたことが分かった」と、エナード氏は述べている。

遺伝子の決定的な兆候

この研究によれば、流行の過程で、ウイルスと細胞の相互作用に関わるヒト遺伝子の特定の変異型が自然選択によって選ばれ、その結果、より軽症の疾患につながった可能性がある。古代のウイルスが残した「痕跡」を研究することは、ヒトの進化の重要な推進力として出現したウイルスに対して、異なるヒト集団のゲノムがどのように適応してきたのかを、研究者がより深く理解する助けとなる。

他の独立した研究では、VIP遺伝子の変異が、コロナウイルスへの感受性や、COVID-19の症状の重症度に影響している可能性が示されている。また、いくつかのVIPは、現在COVID-19の薬物治療に使用されているか、あるいは、さらなる医薬品開発のための臨床試験の一部となっている。

「過去にウイルスと接触したことで、現代の集団における感染や疾患に影響を与える遺伝子を特定するための決定的な遺伝的兆候が残されている。それを活用して、既存薬の転用や新たな治療法の開発に役立てることができる」と、アデレード大学生物科学部の共著者であるレイ・トブラー氏は述べている。

「過去のウイルス流行によって影響を受けた遺伝子を明らかにすることで、本研究は、将来の流行に立ち向かう新たなツールとしての進化遺伝学的解析の可能性を示している」と、スイルミ氏は述べている。

本研究の著者らは、この研究が、遠い過去に流行を引き起こし、将来も流行を引き起こす可能性があるウイルスの特定に役立つ可能性があると述べている。彼らの研究のような研究は、潜在的に危険なウイルスのリストを作成し、それらが再び出現した際に備えて、診断法、ワクチン、医薬品を開発する助けとなる。

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