世界各地で、新型コロナウイルスは高齢者に大きな影響を及ぼしている。
データによると、高齢者は感染リスクが高く、彼らを守るための規則や規制が設けられている。
63歳の祖母、グレース・ダウェルさんは、食料品の買い出しをやめ、医師の予約もすべて取り消した。メリーランド州の田舎にある自宅には誰も入れない。郵便物は一つ残らず消毒している。
ダウェルさんは先週、自分と夫、母親を新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から守るには、厳格な隔離しかないと判断した。このウイルスは世界で1万人以上の命を奪い、高齢者にとりわけ致命的であることが明らかになっている。
労働組合の職員を退職したダウェルさんは、関節リウマチを患い、免疫機能も低下している。夫のドナルドさん(74歳)は肺気腫を患う。母親のマーガレット・ヒルデブラントさん(93歳)も肺疾患があり、酸素吸入が必要だ。部外者が家にウイルスを持ち込むことを心配し、ダウェルさんは訪問看護師に代わって母親の介護を引き受けた。
「母が感染したら、1日ももたないでしょう」とダウェルさんは話す。ベビーモニターを身につけ、夜通し母親からの助けを求める呼びかけに応じている。「母はがんを9回克服しました。これで命を落としてほしくありません」
世界的なパンデミックにおいて、高齢者はとりわけ脆弱であり、保健当局や各国政府は高齢者を守るため、ますます厳しい措置を呼びかけている。世界各地の多くの都市がほぼ封鎖され、当局は、ウイルスを持っていても気づかない可能性のある若者に対し、親や祖父母との接触を避けるよう強く警告している。しかし、高齢者の孤立が深まるにつれ、新たな危機も生じている。家族は大切な人を介護する必要性と、距離を置くよう求める指示との間で折り合いをつけようとし、その負担は手いっぱいの政府や医療機関へと移っている。
研究によると、新型コロナウイルス感染症の重症度は年齢とともに高まる。現在、世界で最も多くの死者が出ているイタリアでは、死亡者の平均年齢は80歳だと、イタリア国立衛生研究所の調査が示している。パンデミックが始まった中国では、70歳以上が全感染者のわずか12%を占める一方、全死亡者の半数以上を占めたと、中国疾病予防管理センターが報告している。米国では、政府のデータによると、これまでに65歳以上が感染者の31%、集中治療室への入院者の53%、死亡者の80%を占めている。
厳しい統計の向こうでは、世界各地で孤立と不安をめぐる小さなドラマが数え切れないほど生まれている。レバノンのある村では、祖母が自宅に閉じこもり、亡くなった夫をきちんと悼むこともできない。スペインでは、介護施設の職員がFacebook動画を制作し、入居者が大切な人たちに無事を伝えられるようにした。またコロンビアでは、政府が火曜日、70歳以上の国民に5月31日まで外出しないよう命じた。高齢者たちは2か月間の隔離に備えて生活必需品を買い込んだ。
「多くの人が状況を軽く見ているので、こうした措置を取る必要があります」と、買い物客のカルロス・マンリケさん(74歳)は語った。ボゴタのスーパーでジャガイモ、卵、米を買い込んでいた。「神の教えに従って、自分の身を守っています」
一方で、高齢者が感染症の流行に反発を示すことも少なくなかった。
「新型コロナウイルスのことはまったく心配していません」と、東京の靴店で働きながらマスクの着用を拒む小林豊さん(85歳)は話す。「私たちの世代は、母親や祖母から手洗いをするように言われて育ちました」
「おばあちゃん、元気?」
2月21日に感染拡大が明らかになってから、イタリアでは3,400人以上が死亡している。政府によるロックダウンで何週間も自宅に閉じこもる高齢者の心理状態を、地元当局は懸念している。サン・カッシャーノ・イン・ヴァル・ディ・ペーザの町は、「チャオ・ノンナ、コメ・スタイ?」、つまり「おばあちゃん、元気?」と名付けた取り組みを始めた。若者に、高齢の親族、さらには面識のない高齢者にも電話するよう呼びかけている。
スペインのナバレス・デ・エンメディオにある介護施設「ヌエストラ・カーサ・ラ・グランデ」は、高齢の入居者24人を撮影した動画をFacebookに投稿した。入居者たちは、大切な人に向けてカメラに投げキスを送るよう互いに促している。
マドリードのラ・パルラで両親と暮らす24歳の学生、ジョナサン・バリオスさんは、同じ通りに住む祖父母に会いに行く勇気がないという。80歳の祖父は肺がんを患っている。70歳の祖母には発熱、せき、呼吸困難といった感染症の症状があるが、検査キットが不足しているため検査を受けられない。
「なんだか落ち着かず、もどかしいです」とバリオスさんは話す。「祖父母にできることは、電話をかけることだけです」
強いられた隔離は、悲しみに暮れる人々にとって最もつらいものかもしれない。レバノン人研究者のジョーイ・アイユーブさんによると、祖父は今週、新型コロナウイルスとは無関係の病気で亡くなった。突然ひとり暮らしになった祖母のことを心配している。
祖母の夫の葬儀に参列したのは、わずか6人か7人だった。アイユーブさんによれば、本来なら「何十人も、何十人も」集まったはずだ。急いで執り行われた葬儀で、参列者は互いに距離を取って座った。
「祖母はきちんと悲しむことができません」と彼は話す。「友人たちと一緒に過ごすこともできないのです」
「感染するなら、それも仕方ない」
高齢者介護施設が閉鎖され、親族を見守るために仕事を休まざるを得なくなった家族も、大きな打撃を受けている。日本中部の都市、名古屋では、介護施設のひとつで新型コロナウイルスのクラスターが見つかった後、市長が同様の施設126か所に2週間の休業を要請した。
日本はすでに深刻な感染拡大を経験しており、リスクにさらされる人々も非常に多い。人口の28%以上が65歳以上だ。それでも今、再び外出する人もいる。
「感染するなら、それも仕方ありません」と、郊外の市川市でパートの清掃員をする森和子さん(74歳)は話す。同市ではスポーツジムと高齢者向けデイサービスを発端とするクラスターが発生した。「あまり神経質になりすぎてもよくありません」
多くの高齢者は、政府の外出自粛要請に従うことはできないと語った。
ケニアの首都ナイロビにあるキベラは、住宅が密集し、流水の出る水道がある家はほとんどない居住区だ。ボランティアたちは戸別訪問し、住民、とりわけ高齢者に新型コロナウイルスについて伝えた。子どもたちでいっぱいの中庭では、ファティマ・ジュマさんが熱心に耳を傾けた。ズレラ・アブドゥルさんが感染の危険性を説明し、小さな手指消毒剤のボトルを手渡した。
自称82歳ほどのジュマさんは、テレビで病気のことは聞いていたが、症状は知らなかった。手洗いには抵抗がなかったものの、ソーシャルディスタンスには反対した。両親が働いている間、いちばん下の子が2歳の孫たちの世話をしている。友人たちにも会う必要があると話した。
「この政府の指示は私にはよくありません。市場に行かなければ」と、日差しに腕輪をきらめかせながら、彼女はきっぱりと言った。「外で誰かが亡くなったら、その人を慰めに行かなければなりません」
ラテンアメリカで最も高齢化が進む人口を抱える、共産党政権下のキューバでは、わずかな年金を補うため、定年を大幅に過ぎても働かざるを得ない人が多い。平時でさえ、店や薬局では長い列に並ぶ。
「喘息があるので、とても心配です。感染したら死んでしまうでしょう」と、マリア・トーレス・エルナンデスさん(75歳)は話す。配給分の物資が届いたばかりのハバナ中心部の薬局の外で、何十人もの人と一緒に順番を待っていた。「自分の身は自分で守らなければ」
80歳のアンヘル・プポ・オソリオさんは、月12ドルの年金を補うため、ハバナで駐車場係として働いている。仕事を辞める余裕はない。今のところ、彼の住む地区では感染者は出ていない。
緋色の上着と帽子の制服姿で、プポさんは「生活のため、できる限り働き続けます」と話した。
「どうやって隔離しろと?」
68歳の祖母、ルーシー・マイメラさんが新型コロナウイルスのことを初めて知ったのは月曜日だった。ヨハネスブルク郊外のクリップタウンで営む青果店に並べるほうれん草を買いに行ったとき、販売する農家の人がマスクを着用し、何かに触る前に全員が何度も手を洗うよう求めた。
ラジオで「自宅で隔離するように」と聞いたマイメラさんは、苦笑した。
「どうやって隔離しろと?」と彼女はあきれたように言った。
彼女は親族6人と小さな小屋で暮らしている。地域にある洗面台とトイレは、数十人で共用するものが一つだけだ。36年間続けてきた青果店が、家族にとって唯一の収入源である。
人々が家にこもれば「飢え死にすることになります」と彼女は言った。「神様が私を死なせたいのなら、それが私の運命です」


