国連事務総長:世界の復興には海洋のための計画が不可欠

A worker contracted by British Petroleum scrapes oil from a beach after it was inundated by the oil spill from the Deepwater Horizon spill in Port Fourchon, Louisiana May 23, 2010. REUTERS/Lee Celano (UNITED STATES - Tags: DISASTER BUSINESS ENERGY) - GM1E65O0FYX01
Saving ocean life is outline in the 14th sustainable millennium development goal.Image: REUTERS/Lee Celano
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  • 国連事務総長海洋担当特使のピーター・トムソン氏は、新型コロナウイルスのパンデミック後に「ブルーグリーン」な復興を確実に実現する必要性を訴える。

  • そうすれば、環境だけでなく海洋の健全性も優先できる。

  • 海洋がわずか2℃温暖化するだけで、海洋の生物多様性の30%を支えるサンゴ礁の大半が失われると予測されている。

  • 各国政府や組織に対し、新型コロナウイルスによる経済的・社会的混乱からの復興にあたり、持続可能な循環型経済の時代を切り開くよう求めている。

人類の営みにおいて、進むべき潮流があるとすれば、それは今だ。容赦ないパンデミックが私たちを襲い、世界中に悲しみと犠牲をもたらした。しかし目を上げれば、空には飛行機雲の傷跡がなく、街の空気は澄みきり、心地よい鳥のさえずりが通りに響いている。そして、以前から推奨されてきたオンラインでの仕事や会議が、今や当たり前になった。

2018年、IPCCは地球温暖化を1.5℃に抑える必要があると警告した。Image: IPCC

2018年、地球温暖化に関する特別報告書で、IPCCは、「地球温暖化を1.5[℃]に抑えるには、社会のあらゆる側面で迅速かつ広範囲に及ぶ、前例のない変化が必要だ」と指摘した。当時、短期間で前例のない変化を実現するのは至難の業に思えたかもしれないが、今は違う。パンデミックは気候変動を緩和する処方箋ではないものの、可能性を示している。

新型コロナウイルス危機のさなか、私たちの第一の責務は公共の利益を追求することにある。周囲の人々を気遣い、当局の厳しい指示に従い、不可欠なサービスの従事者や医療従事者の献身的な努力を支えることだ。しかし、この暗い時期もまもなく終わり、私たちは復興への道を歩み始める。

そのとき進むべきは、持続可能な世界へ続く正道だ。地球を汚染する使い捨てプラスチック、化石燃料の浪費的な燃焼、自然の無謀な破壊へ戻る道を選んではならない。人間の安全保障のため、より良い復興を実現しなければならない。ブルーグリーンな未来へ続く復興の道が、私たちの前にある。この復興における「ブルー」とは、持続可能な海洋経済を指す。海洋は地球の70%を覆い、気候変動に対する最大の緩衝役であり、食料からエネルギー、医薬品から雇用まで、あらゆるものをもたらしてくれる。私たちが呼吸する息の2回に1回分の酸素も、海洋が供給している。

新型コロナウイルス対策の制限が続く中、健全な海洋を支持する動きを前進させるため、6月第1週に大規模な世界オンラインイベント、バーチャル・オーシャン・ダイアローグが開催される。この誰もが参加できる一連のオンライン対話は、海洋資源の保全と持続可能な利用につながる実行可能な解決策の創出を目指し、世界経済フォーラムとフレンズ・オブ・オーシャン・アクションが企画・主催する。人々と地球双方の最善の利益のため、健全な海洋に向けた約束と行動を遅らせてはならない。

新型コロナウイルスのパンデミックがもたらす最大のリスクは、人類が直面する最も根本的な課題を見失うことかもしれない。すなわち、地球温暖化を1.5℃未満に抑える水準まで温室効果ガス排出量を削減することだ。その水準を超えれば、将来世代の幸福を大きな危機にさらすことになる。

新型コロナウイルスのパンデミック前、今世紀末までに地球温暖化が3.5℃を超える見通しだった。恐れられている2℃の温暖化の境界を越えれば、海洋の生物多様性の30%を支えるサンゴ礁が失われることになる。それは海洋の健全性にどのような影響を与えるだろうか。現段階では、実のところ分からない。ただ、少なくとも良い結果にはならないという点では一致できるだろう。これは存亡に関わる現実だ。健全な海洋なしに、健全な地球はあり得ない。

つまり、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスの排出は、私たち共通の敵だ。それが海洋の酸素濃度の低下と酸性度の上昇を招き、どちらの傾向も悪化して、海中の生命に負荷をかけている。増加し続ける温室効果ガスの排出が海洋を温暖化させ、その結果、サンゴが白化し、生態系が失われ、極端な気象現象が引き起こされ、海面が上昇し続けている。

だからこそ、この忌まわしいパンデミックが収束し、復興期という避けられない困難な時期に入るとき、より良い復興の中心に世界各地で人間活動に起因する温室効果ガス排出量の前例のない削減を据えることが、人類自身の利益にかなう。そうして初めて、海洋の健全性の低下を食い止め、自らを最もよく守ることができる。

海洋の生命を守るため、世界で合意された計画がある。SDG 14だ。これは国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の14番目の目標であり、海洋資源の保全と持続可能な利用を目指す一連のターゲットを定めている。

復興の進路を導く羅針盤が必要だ。「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とパリ協定を組み合わせた、信頼できる羅針盤がある。これらを通じて、短期的な復興策を長期的な開発目標や気候変動対策の目標に沿わせることができる。

パンデミック後のブルーグリーンな復興構想は、経済発展の促進と雇用創出を優先しつつ、社会的公正と福祉の向上も目指す。例えば、エネルギー部門の再生可能エネルギーへの移行では、革新的なエネルギー貯蔵、柔軟な電力網の整備、電気自動車の充電システム、グリーン水素をはじめとする多様なエネルギー開発技術を想定している。これらはすべて、雇用、雇用、そしてさらなる雇用を意味する。

ブルーグリーンな復興の道では、経済的な節目や環境協定を経て、人間社会のシステムと自然のシステムが、尊重と均衡に基づく新たな調和へと向かう。これは、国家管轄権外区域の海洋生物多様性に関する、今後開催される国連海洋条約会議の確かな柱となるはずだ。効果的で適切に管理された保全措置のもと、海洋の少なくとも30%が保護される世界に、私たちはまもなく暮らすことになるだろう。呼吸する息の2回に1回分が海洋から来ることを考えれば、その展望を歓迎する十分な理由が見つかる。

人間と自然が一つにつながったシステムの一部であり、自然が水、空気、医薬品、食料など多くの恩恵をもたらしていることを、私たちは常に知っていた。近年、私たちは自然の恩恵を乱暴に踏みにじり、当たり前のものとして過剰に享受し、利益と進歩という見栄えのよい装いで貪欲さを覆い隠してきた。ブルーグリーンな復興の道で、私たちはそれを正していく。

限りある地球資源を直線的に搾取するあり方から、持続可能な循環型経済の時代へと移行する。持続可能な食料システム、レジリエントな都市、再生可能エネルギーシステムへの迅速な移行を進める。そして、私たちの命が最終的に依存する自然の生物多様性を守る。

海洋の健全性を考えるなら、私たちが1兆本の木を植えると言うとき、マングローブ、海草、ケルプの再生も含めなければならない。これらは陸上の近縁種の4倍の炭素を固定することが分かっている。

ブルーグリーンな復興は、近年私たちがもたらしてきた、良心に背くほどの汚染と廃棄物に終止符を打つことを見据えている。石油、ガス、漁業などの部門をゆがめる有害な補助金を終わらせる必要がある。違法漁業、乱獲、海上での現代奴隷制という国際的な不祥事も終わらせなければならない。世界各国の政府に求められるのは、短期的な視点を超え、持続可能な未来と調和する公平な政策と投資判断を実行することだ。

長い目で見れば、人類の生存はサンゴの運命と本質的に結び付いているかもしれない。したがって、ブルーグリーンな復興の進路は、恐れられている1.5~2℃の地球温暖化の領域から、私たちを大きく遠ざけなければならない。子どもたちとその子どもたちを愛し、この地球を愛し、生命そのものを愛するなら、その進路を忠実に守ることが究極の責務だ。昔のやり方に戻れば、破壊的なハリケーン、沿岸部の洪水、大規模な山火事、飢饉や戦争の拡大、住民の大規模な移住、そして世界的なパンデミックの再発へと再び向かうことになる。

ブルーグリーンな復興は、人類の知恵、つまり革新する力や、逆境の中で共感をもってアイデアと資源を分かち合う力を信じている。この流れが役立つうちに、私たちはそれに乗らなければならない。このパンデミックがもたらした悲しみ、心の傷、犠牲の霧の向こうに、進むべき道がかすかに見えるからだ。鳥のさえずりの喜びと論理の鐘の音が、ブルーグリーンな未来へ続く道を選ぶよう私たちに告げている。

6月1日から5日まで開催されるバーチャル・オーシャン・ダイアローグに参加し、海洋由来の持続可能な食料供給、再生可能エネルギーへの移行、汚染の流れを食い止めること、海洋保護の優先、そして私たち皆が必要とし望む健全な地球を守るために必要なデータと海洋科学の確保に向けた解決策づくりに貢献できることを楽しみにしている。

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