COVID-19のパンデミックにより、これまでになく多くの従業員が自宅で働くことになりました。
ハーバード・ビジネス・スクールの研究者が、リーダーがチームを支え、従業員の福利を維持し、危機によって生産性が損なわれないようにする方法について助言します。
初めてリモートワークをする人が多いなか、ビデオ会議中に犬がほえたり、子どもがおやつをせがんだりして中断され、背景ではキャビネットの扉がバタンと閉まる音や製氷機の作動音が聞こえる、といった経験をした人も多いでしょう。もちろん、誰もがよく分かっています。私たちも同じ状況にいるのですから。
パンデミック下の新しいリモートワークの世界へようこそ。
新型コロナウイルスの感染拡大前、米国の従業員の5.2%が、ほとんどの時間を在宅勤務で過ごしていると回答し、43%は少なくとも一部の時間を在宅で働いていました。今やパンデミックで職場が閉鎖され、この割合は世界中で急増しています。
しかし、この異例の時期のリモートワークは、在宅勤務に慣れた人にとっても、決していつも通りの業務ではありません。従来のリモートワークのルールが当てはまる部分もあれば、そうでない部分もあります。ビジネスリーダーには新たな対応策が必要です。
多くの従業員が、自宅の騒がしさに気を取られるだけでなく、家の外で起きている危機に動揺しているなか、長期にわたる大規模なリモートワークを管理するための実践的な助言を、ハーバード・ビジネス・スクールの教授陣に求めました。
「管理職は大きな方針に関わる優先事項を決め、従業員が最善の仕事に集中できるようにすべきです。」
前例がなく先行きも不透明な時期に、リモートで働く従業員をリーダーが支える10の方法を紹介します。
1. 明確に伝え、迅速に決断する
ビジネスリーダーはすでに、オフィスの閉鎖や出張の中止など、難しい決断を迫られてきました。今は、こうした事業の混乱を受けて従業員の業務上の優先事項がどう変わるべきか、曖昧さのない言葉で伝える必要があります。
必須ではない業務のなかに自宅では実行が難しすぎるものがあれば、いったん対象から外すか、少なくとも当面は後回しにし、どのプロジェクトを優先すべきか従業員に知らせるべきだと、企業にリーダーシップ・コーチングを提供するHBS上級講師のジュリア・オースティンは述べています。
「今は信頼を育み、仕事を委ねる時期ですが、大きなプロジェクトをやるべきかどうかで議論させる必要はありません。何をすべきか迷う時間は、生産性に影響します」とオースティンは言います。「管理職は大きな方針に関わる優先事項を決め、従業員が最善の仕事に集中できるようにすべきです。」
多くのビジネスリーダーがスタッフを一室に集められない今、ビデオ会議やメールで「姿を見せ」、危機を乗り越えるために自社がどう方向転換しているのか、仕事を失う不安を抱える従業員をどう守るのかを、定期的に伝える必要があると、HBS教授のツェダル・ニーリーは述べています。ニーリーは経営学のネイラー・フィッツヒュー教授で、機能不全に陥ったグローバルチームの立て直し方を研究してきました。

「明日何が起きるかについて、従業員を完全に安心させることはできないかもしれません。しかし、自分の視点から見た全体像を垣間見せることはできます」とニーリーは言います。彼女は、米国企業の中国事業全体が停止し、11月以降、収益がなく、数千人の従業員が自宅待機している企業のリーダーについて、ケーススタディを執筆しています。
2. 自ら手本を示す
管理職は、ほかの人に期待する行動を自ら示すべきです。従業員にオフィスを離れてよい、出張を控えてよいと言いながら、管理職自身が職場に顔を出し、出張を続けていれば、従業員は自宅にとどまることに罪悪感を覚えるかもしれません。
「リーダーは、自分の行動が従業員にどれほど模倣されるかを過小評価しています」とオースティンは言います。「偽善は信頼を損ないます。従業員は何をすべきか指示されるだけでなく、管理職が口にしたことをすべて実行することも望んでいます。そうすれば、遅れまいとプレッシャーを感じたり、自分の働きぶりに疑問を抱いたりせずに済みます。」
3. いつも以上に柔軟に対応する
従来のリモートワークのよさは、従業員に余裕が生まれることです。散歩に出たり、洗濯機を回したり、夕食の支度を始めたりしながら、不要な社内会議や渋滞する通勤を避けることで、より多くの仕事をこなせます。
しかし今は、オフィスや学校、保育施設が閉鎖され、時間に余裕があるという利点は、多くのリモートワーカーから失われています。家に自分一人でいられなくなり、家族の要望に応えながら仕事に集中するという大きな課題に苦労しています。
教授陣によれば、だからこそ今は、これまでにない柔軟さが求められます。管理職は従業員がどのような課題に直面しているかを尋ね、仕事をする時間帯を自分で選べるようにすべきです。夜明け前でも、深夜でも、日中に休憩を挟みながら2時間ずつ働く形でもかまいません。
「管理職は部下の専門知識や経験を尊重し、今はいつ、どのように働くのが最適かを本人たちに決めてもらうべきです」とニーリーは言います。
チームが期限の厳しいプロジェクトに取り組んでいる場合は、従業員に対応可能な時間帯を尋ね、日中の特定の時間帯には即時の返信を期待できないことを全員で共有する方法があります。また、管理職が自分にとって都合のよい時間だからと日曜の朝にメールを送る場合、部下は月曜日まで返信しなくてよいと明確に伝えるべきです。
「雇用主は従業員の生活に根本的な変化が起きていると理解し、仕事に対する期待を大幅に変える必要があると認識すべきです。」
4. 仕事への期待を調整する
オースティンによれば、従業員の意見を踏まえ、管理職は現在の状況で各従業員がどれほどの業務量を担えるかを評価し、必要に応じてプロジェクトを振り分け直すとよいでしょう。
今は雇用主が業務量を減らし、勤務時間をいつ通常に戻すべきか再検討することも適切かもしれないと述べるのは、ラクシュミ・ラマラジャンです。彼女はアンナ・スパングラー・ネルソン・アンド・トーマス・C・ネルソン経営学准教授です。
彼女の研究によると、雇用主の期待は従業員の個人としての自分と職業人としての自分との間に葛藤を生み、業績や仕事への意欲を低下させる可能性があります。
「雇用主は従業員の生活に根本的な変化が起きていると理解し、この危機が収束するまで、仕事に対する期待を大幅に変える必要があると認識すべきです」とラマラジャンは言います。「幼い子どもが家にいる従業員、高齢の親族を介護する人、あるいはこの状況を受けて自分の身体的・精神的な健康に集中する必要がある人は、週40時間働くことはできません。」
ウィキペディアを運営する非営利団体ウィキメディアは、職員や契約社員に、週20時間働けば週40時間分の給与を支払うと伝えています。「今、人々の頭にあるのは仕事だけではありません。家族、請求書、育児、学校の休校、経済……私たちは皆、多くのことに対処しようとしています」とCEOのキャサリン・マーラーは書きました。「壁にクレヨンで絵を描く3歳児がいたり、階段を上るのに助けが必要な高齢の親がいたりするのに、1日8時間、仕事に完全に集中するよう期待するのは、無理であり現実的ではありません。」
一方で、今は普段以上に働いている従業員もいます。姿が見えないなかでも仕事を続けていると示そうとしている面もあります。「いつでも対応できるようにして、上司に『はい、ここにいます!』と伝えなければならないというプレッシャーがあります」とオースティンは言います。
オースティンによれば、管理職は従業員が「ヒーロー」になろうとするのを抑えるべきです。「ある従業員が在宅でも仕事をこなせる一方で、同僚が苦労していたとしても、その人に仕事をすべて割り振り始めてはいけません」と彼女は言います。「管理職は辛抱強く、皆が遅れを取り戻す時間を与えるべきです。誰かにさらなる負担をかけないようにしてください。」
5. 会議を見直す
管理職は、電話会議やオンライン会議を一日中続けてこなせない従業員もいると理解すべきです。「仕事や生活が大きく変わったにもかかわらず、人々はまだ会議に時間をかけすぎています」とオースティンは言います。
普段から会議の多い職場なら、会議の総数や長さを減らすことを検討するとよいとオースティンは述べます。会議の進行役が明確な議題に沿って進めれば、通常は職場で1時間かけていた集まりを、Zoomでの30分の打ち合わせに短縮できないでしょうか。
会議を減らす最も簡単な方法の一つは、情報共有やアイデア収集にメール、Slackなど文章ベースのツールを使うことです。会議は意思決定のためだけに開くべきだと述べるオースティンは、チーム会議を効果的に進める方法について執筆しています。「会議は物事を進めるために活用すべきです」と彼女は言います。
一方でニーリーは、組織によっては今、特にリモートワークへの移行初期に、スタッフとの接触や会議を通じたコミュニケーションを増やす必要があると指摘します。研究によると、気軽な会話はリモート勤務の従業員にとって有益です。そのため彼女は、会議の時間を使って従業員と個人的につながるよう管理職に勧めています。たとえば、皆がどう過ごしているか尋ねるとよいでしょう。
「対面の場合と比べて、オンラインで長時間の会議に集中するのは難しいことがあります。」
会議の後、管理職はメールなど別の手段を使って、会議で決まった重要事項を明確に伝えるべきです。「対面の場合と比べて、オンラインで長時間の会議に集中するのは難しいことがあります。大切なことが抜け落ちないよう、情報を重ねて伝えると役立つでしょう」とニーリーは言います。
6. 非同期型の仕事を増やす
午前9時から午後5時までの勤務形態が崩れていることを踏まえ、従業員が同時に行う「同期型」の業務を減らし、Googleドキュメント、Slack、メールなどを使って各自の時間に進められる「非同期型の仕事」を増やすべきだと述べるのは、プリトウィラージ・チョードリーです。彼の研究によると、従業員がリモートで働くと多くの場合、企業にも利点があります。チョードリーは、技術・オペレーション管理部門のラムリー・ファミリー経営学准教授です。
「危機によって、リモートワークを導入している企業がすでに理解していることが明らかになりました。仕事を同時に行う必要はないのです」とチョードリーは言います。「人々は異なるタイムゾーンや都市で目を覚まし、文書を開いて仕事を始められます。」
リモートワークに慣れていない人は、返信をどれほど早く期待するかについての考え方を変え、辛抱強く待つ習慣も身につける必要があると彼は言います。
「Slackにメッセージを投稿したら、皆が責任を持って、対応できるときに確認すると信頼してください」と彼は言います。「質問を深く暗い水の中に投げ入れて、数時間待っても何も問題はありません。すべてが今すぐ起きる必要はないと、私たちは皆、学んでいくでしょう。そうした新しい慣習を築く必要があります。」
7. 生産性が下がる可能性を受け入れる
チョードリーの研究によると、リモートワークで生産性が上がることはよくあります。しかし今は、こうした働き方をしたことのない従業員が、ほかの気がかりにも対処しながら慣れようと懸命です。この時期は、リモートワークの生産性を測るための最適な試金石ではないとチョードリーは言います。
実際、短期的には生産性が少なくとも10~20%低下する可能性があるという厳しい現実に、企業は向き合う必要があるかもしれないとオースティンは言います。「あるクライアントは、子どもたちから隠れる唯一の方法として、地下室にシーツを張りました。それでも私たちが通話している間、子どもたちはシーツの下からメモを差し入れてきたそうです」と彼女は言います。「どこでも同じようなことが起きているのですから、生産性が下がるのは避けられません。」
ラマラジャンによれば、ビジネスリーダーはこう伝えるべきです。「状況は分かっています。簡単ではありません。まず自分と家族を大切にしてください。」可能な限り、雇用主は生産性が下がっても不利益を受けないと従業員に安心させるべきです。そうすることで、組織への長期的な帰属意識が高まると彼女は言います。
「優れたリーダーは、隣の部屋でパートナーが電話会議をしている状況に自分がどう適応しているか、苦労も含めて共有するでしょう」とオースティンは言います。「自分以外の人は皆うまくやっていると思いがちです。誰にとっても簡単ではないと知れば、皆ほっとするでしょう。」
8. 行動の監視より成果に注目する
リモート勤務の従業員を管理した経験が乏しい上司は、従業員の様子を細かく把握しようとするかもしれません。一日中ウェブカメラをオンにさせたり、短い休憩を取るたびに管理職へ知らせるよう求めたりするのです。あるいは、まだオンラインかどうかを確かめるため、午後4時45分にメールを送ることもあります。ニーリーによれば、たとえばウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載された流出した社内メモに見られるような、こうしたマイクロマネジメントは、従業員に「私たちはあなたを信頼していない」という隠れたメッセージを送ります。
「危機によって、リモートワークを導入している企業がすでに理解していることが明らかになりました。仕事を同時に行う必要はないのです。」
「ひどく立ち入った、状況をわきまえない行為です」とニーリーは言います。「管理する相手の姿が見えない管理職は苦労しています。自分が主導権を失いつつあると感じ、不安が表に出てくるのです。」彼女は管理職に、恐怖で人を動かすことをやめ、採用した有能な人々が怠けていないと信頼するよう促しています。
ただし例外もあります。多くの従業員は細かく干渉されないほうが力を発揮しますが、チョードリーの研究によれば、入社したばかりの若手従業員は、リモート勤務中に追加の監督や指導が必要な場合があります。
しかし一般的には、従業員の一挙手一投足を監視するのではなく、企業は業務目標を設定し、成果に基づいて個人の生産性を測るべきだと彼は言います。
「従来型の企業でチームの一員として働いている場合、毎日出勤することは、生産性を測る不完全ながらも一つの指標です」とチョードリーは言います。「今は企業が従業員の姿を見られないため、ただ乗りしている人がいるのではと心配せずに済むよう、まずは生産性をより客観的に、本人にも測定可能な形にする必要があります。」
9. 共感する時間を取る
今は非常につらく、先行きの見えない時期です。管理職はその現実を認める必要があります。従業員が心配しているのは、仕事を維持できるか、自社の業績がどうなるかだけではありません。家族や友人の健康、自分の家計、さらには不安を抱えながら食料品店へ行く時間をどう確保するかまで、気がかりは尽きません。
管理職は、従業員同士が話し、支え合い、互いの話に耳を傾けられる場を設けるとよいでしょう。「今ほど、チームに共感が必要で、皆が一緒に苦しんでいると感じるべき時はありません」とオースティンは言います。「誰もが現実の危機に直面しています。管理職は『私たち皆がこの状況を感じています』と言って、自分の弱さも見せるべきです。9.11の後、同僚と一緒に泣いたことは、私のキャリアで最も大きな転機の一つでした。今の危機を通じて、仕事のチームが絆を深めることもあるでしょう。」
10. 従業員が息抜きできるようにする
不安や孤立を感じている従業員が多いなか、企業は参加自由のオンライン交流イベントを企画できます。コーヒーブレーク、ランチ会、仕事後の交流会、料理や手芸の教室、タレントショー、ペット紹介会などです。
最近は画面疲れを感じる従業員が多いと考えられるため、ビジネスリーダーは仕事の電話の合間に休憩や昼寝、散歩を取り入れるよう促し、セルフケアを勧めるべきです。
「管理職は『今は午後3時で、大変な一週間でした。午後は休みにして、大切な人たちと過ごしてください』と言えます。皆がストレスを感じていると認めることで、それぞれの状況に寄り添えるのです」とニーリーは言います。
チョードリーによれば、今のリモートワークの状況は通常とは異なりますが、明るい兆しもあります。リモートワークに長く抵抗してきた多くのビジネスリーダーが、その利点に初めて目を向けるかもしれません。従業員の満足度向上、オフィススペースの必要性の低下、そして一部では、ウイルスが落ち着いた後、長期的に生産性が上がる可能性などです。
「リモートワーク文化を取り入れる扉をいったん開いた今、元に戻るのは難しいかもしれません」とオースティンは言います。「リモートワークに適したソフトウェアへの需要が高まり、オフィス街に空きスペースが増え、リモート勤務の仕事を探す人が増えると予想しています。」

