医療システムは世界のCO2排出量の4%超を占めています。
気候変動は、人々の健康に幅広い影響を及ぼします。
医療システムは、持続可能な変革を推進し、より良い患者ケアを実現できます。
気候変動と汚染は、世界中の何億人もの人々の命と暮らしを脅かしており、最も脆弱な地域社会に大きな影響を及ぼすことも少なくありません。今年の第77回国連総会で、議長のチャバ・ケレシ氏は閉会の辞でこう述べました。「気候変動は徐々に私たちを破壊しています……それでも、経済成長と排出削減、生物多様性の保全を両立できると、まだ確信していない人がいるようです。」
2015年、ランセット委員会は「気候変動への取り組みは、21世紀における世界の健康にとって最大の機会となり得る」と述べました。また、米国に本拠を置く疾病予防管理センター(CDC)によると、気温上昇、異常気象、CO2濃度の上昇などの気候変動の影響は、健康に幅広い影響を及ぼします。
幸い、医療分野のリーダーたちはこのことを認識し、長期的な集団の健康目標を追求するうえで、サステナビリティが重要な役割を果たすことも理解しています。

連携して、今日の医療課題に取り組む
世界平均で見ると、医療システムは世界のCO2排出量の4%超を占めています。多くの先進国では、この割合は国内排出量の約10%に達します。これは航空部門や海運部門を上回る数値です。医療技術企業、医療システム、その他の関係者を含む業界として、私たちには行動する責任があります。医療の根幹である「まず害をなすな」という原則を、地球にも広げるべき時です。
幸い、今ここで、共に改善するためにできることはたくさんあります。持続可能な変革を推進し、パリ協定の気候目標を達成するには、連携が欠かせません。特に医療のような複雑な分野では重要です。バリューチェーン全体で顧客、同業者、パートナーと協力することで、私たち全体のカーボンフットプリントを削減し、将来の世代に、より健全な地球と、より強靱で持続可能な医療業界を残すことができます。
では、医療システムがこうした目標の達成に向けて採用できる戦略には、どのようなものがあるでしょうか。
再生可能エネルギーとエネルギー効率化で、直接的な電力消費を削減する
病院は公的資金で運営される建物の中で最もエネルギー消費が多く、商業施設の2.5倍の温室効果ガスを排出しています。そのため、再生可能エネルギーへの切り替えは大きな効果をもたらします。この分野では、同業者と連携して必要な規模を確保することで、大きな違いが生まれます。例えばフィリップスは、コンソーシアム主導の電力購入契約を通じて、欧州で再生可能電力の供給を確保しています。
医療機器のエネルギー消費も、病院のような大規模でエネルギー集約型の施設に大きな効果をもたらし得る分野です。欧州業界団体であるCOCIRの一環として行われている業界の取り組みは、例えば医用画像機器のエネルギー効率と資源効率の向上に役立っています。
画像診断機器のエコデザインによるエネルギー効率の向上は、排出量の削減と医療提供者の運用エネルギーコスト上昇への対応に有効です。EUの医療機器向けグリーン公共調達基準の一環として、COCIRは購入者が運用コストを計算し、ニーズに最適な機器を選べるよう、必要な情報を提供する手法を開発しました。
資源の持続可能な利用と循環型経済を通じて間接排出を削減する
世界のCO2排出量の約40~50%は、資源の採掘・供給や機器の製造に起因し、これは「内包炭素」と呼ばれることがあります。医療分野はこうした資源を大量に消費します。循環型の慣行や働き方を取り入れることで、医療提供者は医療システムや機器に使われる資源を、持続可能かつ低炭素または炭素フリーな方法で活用できます。
ヘリウムを例に挙げましょう。この希ガスは、MR診断を長期にわたり利用可能にするうえで不可欠ですが、世界的な供給量には限りがあります。この課題に対処するため、フィリップスはエコデザインの原則を適用し、必要なヘリウム量を大幅に削減する完全密閉型磁石を開発しました。
医療財源への圧力が続く中、病院には、既存の導入済みシステムの耐用期間にわたる価値、機能、使いやすさを、品質を損なわずに高める選択肢がほかにもいくつかあります。例えば、再生医療機器であるフィリップスのサーキュラー・エディション・システムを利用すれば、顧客は入念に再生・アップグレードされ、品質試験済みの技術を、より低コストで導入できます。
ほかにも、革新的な「サービスとしての提供」モデルの導入、資源の長期的な効率利用、スマートなデジタルソリューションの実装などがあります。
デジタルツールやソフトウェアは、最小限の資源で最大の価値を生む仮想リソースの創出を可能にし、「脱物質化」を支えます。これにより、資源集約型の臨床施設から、ネットワーク化された低コストの医療拠点や在宅医療への移行が進み、より多くの人が医療を受けられるようになります。また、患者と医療従事者が遠隔でやり取りできるため、予防医療や遠隔医療、すなわちバーチャルケアも支援します。その結果、関連する移動とCO2排出を回避できます。
さらに、クラウド、サービス、ソフトウェアを基盤とするソリューションへの移行も脱物質化の一例です。オンサイトの企業向けハードウェアに必要な資源を節約し、CO2排出を削減できます。調査によると、顧客がオンプレミスのインフラではなく、大規模な集中型クラウドデータセンターを利用すると、消費電力を84%削減できます。
サプライチェーンに働きかける
サプライチェーンにおける直接排出についても、透明性を高め、対策を講じる必要があります。サプライチェーン(スコープ3、購入した製品・サービス)は、EU域内のCO2排出量の71%を占めています。医療の脱炭素化を本気で目指すなら、バリューチェーンを端から端まで捉える視点が必要です。調達をサステナビリティへの取り組みの中核に位置づけ、サプライヤーが足並みをそろえて協力するよう促します。例えば、気候変動対策として具体的な行動を取り、科学的根拠に基づく削減目標を掲げるサプライヤーに、より有利な支払条件を提示できます。
ケア経路に沿って医療を抜本的に最適化する
エネルギーと資源を責任ある持続可能な方法で使うことに加え、治療の環境負荷を減らすため、ケア経路をさらに最適化することが不可欠です。現在、患者の受診過程は負担が大きいことが多く、診断、治療、経過観察のために何度も通院する必要があります。高齢化に伴って併存疾患が増えると、複数の専門領域で同じことが繰り返されるケースも少なくありません。医療技術の環境負荷を低減する一方で、予防、精密診断、低侵襲治療、治療後のケアに投資し、医療提供体制を改善することも不可欠です。患者と環境の双方のために。
共に行動を強化する
私たちが持つ専門知識、イノベーションを実現する力、そしてシステム全体の変革を進める必要性への共通認識を生かせば、持続可能な取り組みと、安全で効率的かつ効果的なケアの方法を組み合わせ、より良い健康成果、低い医療コスト、患者とスタッフ双方のより良い体験を実現できます。医療提供者、医療技術企業、政府、その他の関係者が一丸となり、戦略、ソリューション、サービスを実行に移し、次世代に向けて、より強靱で持続可能な医療を実現すべき時です。

