ベンチャーキャピタルは世界の保健医療をどのように変えられるか

Illustration photo shows various medicine pills in their original packaging in Brussels, Belgium August 9, 2019. REUTERS/Yves Herman/Illustration - RC1EA8FA8DB0
A venture capital model could bring new treatment options to patients in low and middle-income countriesent in LMICImage: REUTERS/Yves Herman
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  • ベンチャーキャピタルは、科学的発見を低・中所得国の患者に届く製品へと転換できます。

  • ベンチャーキャピタルは希少疾病治療薬の市場を一変させ、世界中の患者に大きな恩恵をもたらしました。

  • ベンチャーキャピタルモデルによって推進される低所得国での保健医療イノベーションは、同じ疾病課題を抱える高所得国にも恩恵をもたらし得ます。

過去数十年の間に、世界の保健医療では重要な進展が見られました。マラリアによる死亡率は半減しました。HIV/AIDSはもはや死の宣告ではなくなり、最近の臨床試験の成功からみて、エボラ出血熱についても同様のことがまもなく実現するかもしれません。多くの人命が救われ、それは経済的繁栄にもつながっています。健康な人々は健康な労働者となり、家族を支える存在にもなるからです。

こうした進展があったものの、SDG3(すべての人々の健康的な生活と福祉の促進)の達成に向けては、依然として取り組むべき課題が多く残されています。主要な課題の一つは大きな資金ギャップであり、推計で年間最大3,700億ドルに上ります。

感染症に加えて、糖尿病や心血管疾患などの非感染性疾患(NCD)も、低・中所得国(LMIC)に大きな負担を課しています。かつて高所得国の高齢者層と結び付けて考えられてきたこれらの疾患ですが、今日ではNCD患者の5人に4人はLMICで暮らしています。大きな未充足の医療ニーズと利用可能な治療選択肢の数との間に生じているミスマッチは、まさに市場の失敗を示す教科書的な事例にほかなりません。革新的な医薬品・医療機器企業は、主に高所得国を対象とする高価格の治療法を中心にビジネスを築いてきました。現在、グローバル・ヘルス分野に向けられているのは、年間わずか60億ドルで、民間研究開発支出全体の5%未満にすぎません。しかし、LMICは追い上げを見せており、まもなく世界経済の半分を占めるようになるため、こうしたモデルを見直すべき理由は十分にあります。

私はここ数年、がんや希少疾患などの分野のスタートアップ企業に投資してきましたが、ベンチャーキャピタルとアクティブ・オーナーシップのモデルが、有望な科学的発見を人々の生活を向上させる商業製品へと転換し、変革をもたらす力を目の当たりにしてきました。希少疾患も同様に魅力のない市場分野と見なされていましたが、規制上のインセンティブと高価格設定の後押しにより、その状況は大きく変わりました。2018年に米国FDAが承認した新薬59品目のうち31品目は希少疾患向けでした。ベンチャーキャピタルは、実績のない高リスクの技術に資金を提供し、患者においてその臨床的効果を実証することで、この変化において重要な役割を果たしてきました。

ベンチャーキャピタルはどのようにして世界の保健医療を変えられるのでしょうか。

新たな治療選択肢を患者にもたらして命を救うことに加え、LMICの経済発展にも貢献できます。革新的な製品は、多くの人々や地域に広げることができ、個別に技術革新へ資金を提供する能力が限られている国々においても、健康面で大きな成果を実現できます。

低所得国と高所得国が異なる疾病課題に直面しているという考え方は、ますます時代遅れになりつつあります。そのため、費用対効果の高い糖尿病治療薬など、LMIC向けのイノベーションは高所得国にも大きな影響を与え得ます。インパクト投資は大きな注目を集めており、グローバル・ヘルスは、財務的リターンと社会的リターンが共存し得ることを示す好例です。最後になりましたが、ベンチャーキャピタルは、大企業の関心をこの十分に注目されてこなかった、開拓の余地が大きい市場分野へ引きつける役割も果たし得ます。

世界の保健医療を改善するためのベンチャーキャピタルの手法Image: Emerging Health Ventures

批判する人々は、ベンチャーキャピタルのモデルは高価格設定を前提としており、低コストの環境では製品開発リスクを補えないと主張するかもしれません。しかし私は、従来のベンチャーキャピタルの手法に重要な調整を加えれば、それは可能だと考えています。段階的価格設定モデル、規制上のインセンティブ、そして販売・マーケティングに関する革新的なアプローチはいずれも活用できます。テクノロジー分野における最近の事例は、シリコンバレーの支援を受けた企業が、主に低所得国で展開される製品に基づいて、ユニコーン企業の評価額に到達できることを示しています。

ベンチャーキャピタルのモデルは完璧とはほど遠く、世界の保健医療が直面する課題すべてに対する万能の解決策として提案されているわけではありません。それでも、ライフサイエンスと消費者向けテクノロジーにおけるこの10年間は、このモデルが産業全体の変革をどのように支え得るかを示してくれました。これまでのところ、グローバル・ヘルス分野のベンチャーキャピタルという概念は、まだ初期段階にあり、ビル&メリンダ・ゲイツ財団が先導しています。ベンチャーキャピタルの少数株主モデルの持つ力を最大限に引き出すには、追加の資金が市場に参入しなければなりません。インパクト投資に向けられる資本が急速に増えている今こそ、世界の保健医療を変革する絶好の機会かもしれません。

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