気候変動下で心血管疾患と腎疾患のケアをどう適応させるか

A control monitor is seen during a heart catheterization at the Heidelberg University Hospital (Universitaetsklinikum Heidelberg) in Heidelberg, Germany, August 14, 2018. Picture taken August 14, 2018. To match Insight HEALTHCARE-MEDICAL TECHNOLOGY/AI REUTERS/Ralph Orlowski. climate
In a warming climate, there is a need to escalate global health adaptation efforts.Image: REUTERS/Ralph Orlowski
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  • 気温上昇は疾病を増大させ、医療システムに負荷をかけ、世界的な不平等を深刻化させる。

  • 緩和策と並行して、世界的な保健適応の取り組みを強化する必要がある。とりわけ、不均衡に大きな影響を受けている地域社会での取り組みが求められる。

  • 心血管疾患と腎疾患は気候変動によって悪化する。この課題にどう対処し、医療システム全体のレジリエンスを高められるだろうか。

気候変動はもはや遠い環境問題ではない。人々の健康の基盤を揺るがし、形を変える力となっている。気温上昇が疾病を増大させ、医療システムに負荷をかけ、世界的な不平等を深刻化させるなか、この問題の交錯を理解することが欠かせない。

緩和策と並行して、世界的な保健適応の取り組みを強化する必要がある。とりわけ、不均衡に大きな影響を受けている地域社会での取り組みが求められる。 気温が上昇する世界では、北欧、カナダ、米国の多くの住宅が、エアコンなしでは居住できなくなる。重要な医療インフラに被害をもたらす、予測不能で激しい嵐が発生し、エネルギー料金や食料品価格の急騰によって、貧困に陥る人がさらに増えるだろう。

2050年までに、気候変動は1,450万人の追加死亡、12.5兆ドルの経済損失、1.1兆ドルの医療費増加につながる可能性がある。保健適応に取り組むことで、気候変動をめぐる議論は、今ここでの現実的かつ緊急で、実行可能な課題となる。

心血管疾患と腎疾患を例に考えてみよう。 心血管疾患はすでに世界の死亡の32%を占め、年間1,790万人が死亡している。また、世界で6億4,000万人が罹患している。心血管疾患と密接に関係する慢性腎臓病は、世界人口の9%にあたる7億人が罹患している。

例えば、極端な暑さへの曝露、大気質の悪化、異常気象時の医療施設の機能不全を通じて、気候変動やその他の環境要因は心血管疾患と腎疾患を悪化させる大きな要因となっている。 その結果、心血管疾患と腎疾患の罹患率、有病率、死亡、疾病負担が増加し、適切なケアへのアクセスも遅れたり妨げられたりする。

気候変動によって悪化する心血管疾患や腎疾患などには、医療システム全体のレジリエンスを高めるため、複数の分野が連携して包括的に対処する必要がある。医療分野で事業を展開する企業にとっては、気候変動下で医療への公平なアクセスを守り、改善するため、影響を受ける地域社会での協働プログラムやパートナーシップへの関与を強めることを意味する。

温暖化する世界では、世界的な保健適応の取り組みを強化する必要がある。とりわけ、不均衡に大きな影響を受けている地域社会での取り組みが求められるImage: Our World in Data

これを最も効果的に実現するにはどうすればよいだろうか。この問いへの答えを探るため、Economist Impactは、2030年に向けたビジョンを発表した。そこでは、心血管、腎臓、代謝の健康に対する気候変動の影響を最小限に抑えられるよう、医療システムを支援する5つの要素からなる枠組みが示されている。

第1の要素は、心血管疾患や腎疾患のリスクがある人々に対するケアの質を、予防から早期発見、適切な介入まで改善することだ。この文脈で気候適応策を取り入れるには、極端な暑さや大気汚染などの有害な環境条件によって、どの集団が最も大きなリスクにさらされるかを考慮する必要がある。

予防の有効なモデルは、診療所内で対処する個人の代謝リスク要因にとどまらず、安全な生活環境や労働環境を定める政策や慣行にまで広げなければならない。心血管疾患のある人には、熱波の際に水分摂取を増やし、涼しい場所で過ごし、通常の活動量を減らすよう助言すべきだ。薬の用量調整が必要になる場合もある(多くの場合、臨床的経験に基づく判断となる)。

第2の要素は、医療提供体制の強化だ。これには、健康格差を固定化させる医療システムの既存の弱点に、先手を打って対処することが含まれる。気候変動によってこうした格差がさらに広がるため、これは極めて重要だ。例えば、遠隔医療サービスを活用してケアの継続性を高め、公平なアクセスを実現するため、ケア提供を分散化する必要がある。医療システムは、インフラの強化、災害管理計画の策定、心血管疾患や腎疾患に関する緊急時対応手順の整備を通じて、気候災害に備えなければならない。

第3の要素である医療システムの「グリーン化」は、より良い健康成果の可能性を高める質の高いケアの提供と密接に結びついている。それにより、関連する病院や診療所への受診、透析など多くの資源を要する末期治療の必要性を減らすことができる。疾病のスクリーニングや発見を改善する集団保健プログラムに加え、遺伝子検査やAIアルゴリズムを活用する精密医療によって、特定の治療から恩恵を受ける患者がその治療を受けられるようになる。

テクノロジーはセルフマネジメントも支援できる。個人が自分の症状をより適切に評価し、次に取るべき行動について個別の指針を得られるようになる。さらに、医療製品やサービスを提供する企業は、脱炭素化をバリューチェーン全体で加速させるとともに、発見、開発、マーケティングのライフサイクルの早い段階から、循環型設計と持続可能性の原則を取り入れることができる。

第4の要素は、意識向上と教育だ。これは、医療業界のリーダーが大きな影響力をもって貢献できる分野である。慢性の心血管疾患や腎疾患を抱える人々は、極端な暑さにさらされる危険性を認識していない場合がある。さらに、医療従事者1,000人を対象とした調査では、気候変動が腎臓の健康に及ぼす影響や、腎臓ケアが環境に及ぼす影響について知識を持つ人は半数に満たないことが分かった。

医療従事者を対象とする重点的な教育プログラムはすでに始まっており、学部および大学院のカリキュラムに気候と健康の内容を取り入れている。公衆衛生機関、学術団体、患者団体との連携により、質の高い情報を一般の人々に届けることができる。

第5にして最後の要素は、研究、データ、モニタリングの改善に重点を置く。気候と健康に関する研究分野を速やかに発展させるには、部門や国境を越えた強力な連携と協調が必要となる。心血管疾患や腎疾患を抱える人々を守る、エビデンスに基づく指針や政策の不足から、暑熱曝露に関連する根本的な病態生理学的・薬理学的メカニズムの解明まで、エビデンスの不足は深刻である。

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データに基づく早期警戒システムは、心血管疾患や腎疾患を抱える人々にとって役立つ情報を提供しなければならない。そのためには、地域社会の声に耳を傾け、そこから学ぶ必要がある。 心血管疾患の予防策として有効な暑熱警報システムの事例は、すでに発表されている。

これら5つの要素はすべて、分野横断的な連携、資金調達、リーダーシップという3つの横断的な推進要因に支えられている。ここに示した意欲的なビジョンは短期から中期に実行でき、ライフサイエンス企業は重要な推進役となり得る。気候の極端な現象によって心血管疾患や腎疾患を抱える人々のリスクが高まるなか、レジリエンスの高い医療システムの強化は、もはや選択肢ではなく急務である。ケアを守り、脆弱な立場にある人々を保護し、急速に変化する世界で医療へのアクセスが包摂的かつ公平に確保されるよう、今すぐ行動しなければならない。

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