小児科医を経て、希少疾患に特化する大手バイオテクノロジー企業のCEOを務める私は、希少疾患のコミュニティは医療における技術革新の恩恵を受けるうえで、他に類を見ない立場にあると考えています。小児病院で働いた年月を通じて、希少疾患のある子どもを持つ家族が直面する課題を自ら目の当たりにし、このコミュニティが満たされていないニーズを深く理解してきました。
私たちの第一の責務は、患者とその家族がより良い生活を送れるよう支援することです。そのためには、精度と迅速さをもって技術の進歩を取り入れなければなりません。
希少疾患がもたらす負担
これまでに約7,000種類の希少疾患が確認されていますが、重症で複雑なことも多いこれらの疾患の大半には、特定の治療法がありません。希少疾患はそれぞれ、比較的少数の患者に影響を及ぼしますが、すべてを合わせると、世界で最も支援が行き届いていない患者集団の一つである3億5,000万人に上り、患者や地域社会に大きな医療的・経済的負担をもたらしています。
また、最も弱い立場にある人々にも影響します。希少疾患の約半数は小児期に発症し、多くの患者が生涯にわたる苦しみを抱えます。残念ながら、希少疾患は寿命を縮めることも多く、希少疾患のある子どもの約3人に1人は5歳の誕生日を迎える前に亡くなります。

診断と患者の転帰を改善するテクノロジー
テクノロジーが大きな効果をもたらしうる分野の一つが診断です。例えば英国と米国では、希少疾患患者が正しい診断を受けるまでに平均5~7年かかります。その間に受診する医師は平均7.3人です。このプロセスの改善に向け、医療提供者は新たなテクノロジーを活用し、大規模なデータセットを利用して症状をより的確に特定し、診断を迅速化しています。
例えば医師は、患者の一連の症状を病院のシステムで照合し、院内の他の患者にも同じ症状が見られたと分かれば、その情報を使って、希少疾患の検査も含め、どのような検査を行うか判断できます。
企業も、蓄積された健康データを活用し、個別化医療を大規模に提供することで、患者の治療方法に変革をもたらしています。こうしたイノベーションは、希少疾患の患者を特定し診断する方法を大きく改善する可能性があります。
シャイアーが取り組むイノベーションの一つが、人工知能(AI)を活用したチャットボット技術です。患者が都合のよい時間と場所で、よくある質問への回答を簡単に得られるようになります。必要な時に患者サービス担当者が対応できない場合でも、担当者と直接やり取りすることなく利用できます。
AIに加え、有望な技術革新として、特に臨床試験におけるウェアラブル機器やセンサー技術の活用があります。これらのツールにより、患者からリアルタイムのデータをより円滑に収集できるようになりました。従来、モニタリングが難しかった小児患者には、とりわけ有用です。希少疾患の50%は小児期に発症するため、こうした疾患の臨床試験の多くは子どもの結果に依拠します。ウェアラブル機器やセンサーなどの進歩により、子どもの負担を最小限に抑えながら、実生活の環境でモニタリングできるようになります。
共有する未来に向けて
共有する未来をどのように築くかを話し合うため、今年の世界経済フォーラム年次総会に集う中で、新興テクノロジーがその未来を大きく形づくることは明らかです。さまざまな業界や背景を持つリーダーや関係者が一堂に会することで、デジタル時代にイノベーションを加速させ、取り入れる方法について重要な議論を促すことができます。
希少疾患の医療を前進させるため、医療分野の内外の専門家と今後も協力していくことを楽しみにしています。力を合わせれば、患者が切実に必要としている解決策を生み出せると確信しています。

