世界各地の医療リーダーは、「公衆衛生危機」という言葉をよく知っています。パンデミックの可能性から肥満の影響まで、私たちの対応は問題への反応にとどまり、根本原因への対処には至っていません。
これは医療における逆説となっています。米国を例に取ると、慢性疾患は、その大半が何十年にもわたる不健康な行動の結果ですが、高齢者の75%に影響を及ぼし、医療費として支出される3兆ドル超の71%を占めています。
人々を孤立させ、混乱させることで知られる米国の高額で分断された医療制度は、慢性疾患を抱えて暮らす高齢者人口の増加に対応するうえで持続可能ではありません。
しかし、これは米国だけの問題ではありません。80歳以上の高齢者の世界人口は、2050年までに3倍の4億4,660万人に達すると予測されています。現在、世界人口の50%が慢性疾患を抱えていることと相まって、世界各地の医療制度に大きな課題を突きつけることは間違いありません。
世界の医療リーダーは、受け身の断続的なケアから、健康を包括的に管理する取り組みへと転換しなければなりません。その焦点は、人々がより健康に暮らせるよう、生活習慣を変えることを支援することです。医療リーダーが取り入れられる取り組みを3つ紹介します。
1)健康と生活習慣が交わる領域で介入する
医師、患者、介護者が、慢性疾患につながる不健康な行動や患者の個人的な事情を変えるのは難しいということは周知の事実です。
影響を及ぼすには、医療保険の提供者が健康と生活習慣の交わる領域に関わる必要があります。食料不安、社会的孤立、孤独など、個人が不健康な行動を改める妨げとなる健康の社会的決定要因には、この段階で直接対処できます。
Humanaは、健康と生活習慣が交わる領域で、「大胆な目標」と私たちが呼ぶ取り組みを進めています。人々が最良の健康状態を実現しやすくすることで、私たちが支援する地域社会の健康状態を2020年までに20%改善するという目標です。
「Healthy Days」という集団健康管理ツールを通じて、過去30日間に身体面・精神面で不健康だった日数を把握し、数値化できます。

私たちは地域のフードバンクと連携し、食料不安の実態や、医療クリニックでのスクリーニングがどのように役立つかを学んできました。また、食料品店、YMCA、プライマリ・ケア医と協力して、糖尿病、栄養、健康リテラシーの課題に取り組んでおり、その結果、不健康な日数の減少につながっています。
ただし、こうした改善はケアへのアクセスにも左右されます。ケアへのアクセスを広げ、人々が手頃な費用でケアを受けやすくすることは重要であり、とりわけ在宅ケアでは重要です。多くの国で高齢化が進むなか、遠隔医療や遠隔モニタリングを可能にする技術の進歩は、介護者がケアする大切な人や医療チームとのつながりを保つ助けとなります。
複数の慢性疾患を抱える人にとって、在宅ケアは望ましい場所であるだけでなく、費用も抑えられます。健康と生活習慣が交わる領域で介入すれば、人々が地域社会で暮らし続けながら行動を変えられるよう支援できます。
2)量から価値へと転換する
世界各地の社会で広がる不健康な行動や座りがちな生活習慣は、大きな影響を及ぼしてきました。出来高払い制度、つまり成果ではなく、病院や医師などの医療従事者が提供したサービスに対して支払う、診療単位の支払いモデルも、問題の解決には役立っていません。

しかし、解決策はあります。価値に基づく制度では、医師はサービスではなく患者の健康に対して報酬を受け取ります。専門医が提供するケアの調整も含め、プライマリ・ケア医が中心的な役割を担います。この役割により、プライマリ・ケア医は薬の重複処方などの重複を特定できます。これにより、病気の進行を遅らせ、費用を抑えられるため、患者と介護チームの負担も軽減されます。
医師たちは、インセンティブが連動した価値に基づくモデルを取り入れつつあります。一方、米国家庭医学会による最近の調査では、職員の時間不足から、データの報告、検証、活用に必要なリソースの不足まで、ここ数年改善していない障壁が詳述されました。
こうした障壁があるにもかかわらず、私たちの提携医師は価値に基づくモデルを受け入れ、会員にとっての成果を上げています。
価値に基づくケアでは、患者が最適な健康状態を得られることに応じて医療提供者に報酬が支払われます。その成果を実現するため、医師には不健康な行動の是正を支援できるリアルタイムのデータが必要です。
3)デジタル時代に相互運用性を実現する
ワークフローやシステムに相互運用性があれば、医師、病院、医療保険プランが連携して患者の健康管理に取り組めます。それによって医師と患者の関係が深まり、早期介入の基盤が築かれます。
相互運用可能なシステムでは、患者の健康データや保険請求データに基づく個別化された情報を、医師がリアルタイムで取得できます。この情報は電子健康記録(EHR)を通じて、簡単かつ安全に共有されます。医師はEHRを使い、患者の不健康な行動が糖尿病につながっていると事前に知らせるなど、介入が効果を発揮する機会を見極めて対応します。
相互運用性の実現に向けた進展には、希望の兆しが見られます。最近の調査では、公的な予防接種登録システムとEHRの連携強化により、子どもや青少年の予防接種状況が改善したことが詳述されています。政府の取り組みの一つである21世紀治療法は、前述の相互運用性を推進するため、「信頼できる情報交換の枠組み」の活用に重点を置いています。
テクノロジーは今後もケアを大きく変えていきますが、すべてを解決するわけではありません。テクノロジーを包括的なアプローチの一要素として組み込み、個別化データを通じて、健康と生活習慣が交わる領域における不健康な行動や社会的決定要因に対処すれば、世界中で慢性疾患の進行を遅らせることができます。
世界的な課題
政府、支払者、医療提供者のいずれであっても、単独の組織が複雑で分断され、費用のかさむ医療制度を作り変えることはできません。国も単独では取り組めません。
医療は、健康と生活習慣が交わる領域で行動し、サービスではなく健康上の成果に沿って連携し、テクノロジーに依存する世界で技術を活用するために、完全な相互運用性を備えなければなりません。
政府、医療提供者、医療保険プラン、地域社会のすべてが連携の力を活用し、不健康な地球をもたらした障壁を取り除かなければなりません。


