2,500兆ドルの医療問題とその解決策

U.S. dollar and Euro banknotes are seen in this picture illustration taken May 3, 2018. REUTERS/Dado Ruvic/Illustration - RC1FE38CB160
Spending more on healthcare does not necessarily achieve better resultsImage: REUTERS/Dado Ruvic
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2040年までに、世界の医療支出は年間約25兆ドルに達する見込みです。これは2014年から150%という大幅な増加にあたり、世界のあらゆる地域に影響します。南アジアや東南アジアなど一部の地域では、2040年までの1人当たり支出が年平均5%から7%増加する見込みです。

この高額な支出は、医療費を賄おうとする政府、医療費支払者、個人に大きな負担をもたらす可能性があります。米国の家族向け医療保険料の年間平均額は、20年足らずで300%以上上昇しました。カイザー・ファミリー財団によると、1999年の約6,000ドルから2017年には約19,000ドルに達しています。カイザー・ファミリー財団。雇用主が保険料を負担しなければ、多くの家庭は支払えないでしょう。

図1:個人向けおよび家族向け保険の年間平均保険料、1999~2017年Image: 雇用主提供の医療給付に関するKaiser/HRET調査、1999~2017年

こうした支出によって、実際に何が得られるのでしょうか。支出を増やせば、必ず健康上の成果が向上するわけではありません。ノルウェーの1人当たり医療支出はギリシャの3倍ですが、両国の健康状態を考慮した平均余命はほぼ同じです。さらに顕著な例では、米国の1人当たり支出はエストニアの5倍を超える一方、両国の平均余命は同程度です。

治療や予防の方法が確立している疾病や症状であっても、患者の医療成果には大きなばらつきがあります。妊産婦死亡率は、OECDで最も成績の悪い国では最も良い国の13倍です。糖尿病に関連する切断の割合も、最も成績の悪い国では最も良い国の約10倍に上ります。

図2:特定の健康上の成果について、OECDで最も成績の悪い国と最も良い国の間に見られる差。注:各数値は、OECDで最も成績の良い国と最も悪い国の成果率の差を示します。例えば、糖尿病による下肢切断率が最も高い国では、最も低い国と比べて、1人当たりの切断率が9.7倍です。Image: OECD、BCGによる分析

なぜ各国は、多額の支出をしても一貫した成果を得られないのでしょうか。

最大の課題は、医療制度に関わるさまざまな主体が異なるインセンティブに反応していることです。その多くは、患者ケアの質や患者の医療成果とはほとんど関係がありません。

例えば、次のような状況があります。

- 病院や診療所などの医療提供者は、提供したサービスごとに報酬を受け取ることが多く(出来高払い方式と呼ばれます)、診療する患者数と提供するサービスの量を最大化しようとします。

- 通常は保険会社である医療費支払者は、コストの最小化を目指します。医療損失率、つまり保険料のうち患者への医療サービスに充てられる割合を重視しています。

- 医療技術企業やバイオ医薬品企業は、利益の最大化を目指します。

- 大学や研究機関は、発表する論文数の最大化を目指します。

このように、制度に関わる多くの主体は、論文数や収益総額といった量を重視する異なるインセンティブを持っています。しかし、これらのインセンティブは患者にとっての価値とはほとんど関係がありません。その結果、制度の中で患者の存在が見失われてしまいます。

医療制度は、患者を最優先するために、どのようにインセンティブを整合させられるでしょうか。

制度に関わる主体はそれぞれ独自のインセンティブを持つ一方、患者に価値をもたらす医療制度の強化という共通の利害もあります。例えば、多くの関係者は患者の医療成果に関するより良いデータへのアクセスを望んでいます。成果データは、製薬会社や医療技術企業が自社製品による患者の健康改善を追跡し、実証するのに役立ちます。また、医療提供者や研究者が医療サービスの構成をよりよく理解する助けにもなります。医療費支払者はこのデータを使い、サービスの量ではなく成果に基づいて医療サービスに報酬を支払えます。何よりも、成果を公に追跡・報告することで、患者に提供するケアの質も向上します。

政策立案者が医療制度全体を価値重視の形に再編するのを待つのではなく、民間・公共部門の関係者が協力し、共通の利害に基づく段階的な変革を進めることができます。例えば、世界経済フォーラムとボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は、複数の分野にまたがる連合体と協力し、アトランタ市およびオンタリオ州で、医療の価値を高める新たなアプローチを試験的に導入しています。これらの取り組みでは、特定の疾病(アトランタではうっ血性心不全、オンタリオでは2型糖尿病)を抱える患者に、より高い価値をもたらすよう、地域の医療制度の改革を進めています。

こうした取り組みは、通常は協力し合わない組織、例えば利益をめぐって競争する民間企業と、民間部門の活動を規定する規制当局を結び付け、現状を変えています。価値に基づく医療制度を目指し、現場から協力して制度を再設計することで、公共部門は価値を評価し、患者に最良の成果をもたらすエコシステムを後押しできます。民間部門は価値を軸に競争し、患者の成果を高める診療慣行や新たなイノベーションを生み出せます。医療制度を価値重視へと方向転換するため、こうした連携が進めている主な活動には、次のようなものがあります。

- 患者の成果に関する標準的な指標群を追跡し、公表する。

- 患者を中心に据えた新たなケア提供モデルを試す。

- どの価値に基づく支払いモデルが成果を高め、制度全体のコストを削減するかについて、根拠を集める。

もちろん、アトランタやオンタリオで進められているような地域の取り組みだけで、医療が直面する25兆ドルの問題を完全に解決することはできません。医療の資金調達と提供を再編するには、企業や政府の運営モデルを国内外で大きく変える必要があります。それでも、官民連携は医療制度の変革に欠かせません。多くの関係者がこうした困難な変革に取り組み、患者により高い価値をもたらす機会を生み出します。

官民協力を推進する世界的な組織として、世界経済フォーラムは現在、価値に基づくケアに向けて、医療制度の公共・民間部門の関係者が協力を通じてどのように連携できるかについて、より詳細な見解をまとめています。今後数か月のうちに、これらの知見を皆さまと共有できることを楽しみにしています。

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