地下に水を蓄えることで、植物は土壌の飽和を進め、雨水の流出を増やし、将来の河川洪水に拍車をかけると研究者らは報告している。
新たな研究で研究者らは、洪水において植物の生理機能が果たす新たな役割を説明している。大気中の二酸化炭素が過剰になることへの適応として、樹木や植物、草は気孔を狭め、取り込むガスの量を調節する。この仕組みによって、蒸発を通じて葉から放出される水分が抑えられる。
「植物は水をより効率的に使うようになり、炭素が豊富な大気のもとでは、地下の土壌水分が気孔から漏れ出す量も減ります」と、新たな論文の共著者で、カリフォルニア大学アーバイン校の地球システム科学准教授であるマイク・プリチャード氏は話す。この論文はNature Climate Changeに掲載された。
「特に熱帯地方のように日差しが強く、葉が生い茂る地域では、何十億枚もの葉についてこれを積み上げて考えると、地下に蓄えられる土壌水分が大幅に増えます。気候モデルによれば、その結果、降雨時に地面が飽和し、より多くの雨水が河川へ流れ込むことになります。」
将来の河川洪水に拍車
プリチャード氏によると、いわゆる森林効果は、赤道の北緯30度から南緯30度までの大半の陸地で、大気の反応を左右する。この地域には人口の大半が暮らしている。また、この植物に由来する現象は、ミシシッピ川流域の洪水に大きな影響を及ぼす可能性があるという。
「ミシシッピ川に強い関心を持ったのは、私たちの国のすぐ身近にあるからです」とプリチャード氏は言う。「複数の水源から水が流れ込む大規模で複雑な流域ですが、植物の生理機能の影響で、東海岸やアパラチア山脈の春の雨がより効率よく流出し、ミシシッピ川の流量が例年より早くピークを迎えるように見えました。これは理にかなっています。春の雨はより流出しやすくなるのです。」
米国南東部における植物の生理機能の影響と、ミシシッピ川流域のさらに北で大気の温暖化によって生じる降水量の異常という2つの要因は、「どちらも同じ程度に、将来の洪水統計を押し上げる方向に作用しています」。
筆頭著者で、かつて地球システム科学の大学院生だったミーガン・ファウラー氏は、「この研究では、気候変動が将来の河川流量に世界規模でどのような影響を与えるかを調べました。その結果、水循環における従来の要因、つまり地球温暖化による地域降雨の変化や、大気中の二酸化炭素増加によるその他の影響よりも、低緯度の植生が大気中の炭素増加に対して生理機能面でどう反応するかが、河川の動態に非常に大きな役割を果たすことが分かりました」と述べている。
研究チームは、結論を導くために広く利用されているツールを用いた。河川流量を詳細に示す水力学モデルと、世界で最も広く使われている地球システムモデルである。後者は、米国大気研究センターと米国エネルギー省の研究者らが開発した。
「どちらも珍しいツールではありません」とプリチャード氏は言う。「ただ、これまでこのような形で組み合わせられていなかったのです。」
気候モデルが可能にすること
この研究で珍しい手法の一つは、植物の生理機能の影響を気温の影響から切り分けたことだ。研究者らは、葉に与える二酸化炭素を増やす実験と、温暖化を起こすために大気中に二酸化炭素を加える実験をそれぞれ実施した。その後、両方を同時に行い、それぞれの要因が結果にどの程度寄与したかを明らかにしようとした。
「こうした、神の手によるような実験こそ、気候モデルを使う最大の目的です」とプリチャード氏は言う。「自然界では、気温と葉の生理機能に対する、大気中の二酸化炭素増加の影響を切り分ける方法はありません。しかし、モデルを使えばかなりうまく切り分けられます。」
「しかし今、熱帯の生態系で気孔の影響が実際にどの程度あるのかといった不確実性への対応も、同じくらい重要かもしれないと気づき始めています。現地での実験データが乏しいためです。衛星データによって制約条件がより明確になっている雲や降雨の問題と比べると、この点は十分に精査されていません。そろそろ地に足をつけて考える時期かもしれません。」


