アジアのビジネスリーダーを眠れなくさせているリスクとは?

A South Korean employee of a security firm reacts in front of a graph showing stock price in Seoul, 2003
Image: REUTERS/Kim Kyung-Hoon
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アジア太平洋地域のビジネスリーダーにとって、主な懸念は引き続き経済リスクですが、この地域の経営幹部が挙げるリスク上位5項目には、サイバーセキュリティや社会政治的不安定も含まれています。

これは、世界経済フォーラムのエグゼクティブ意識調査(EOS)2016~2017年版から得られる重要な知見です。その結果は、マーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズ・アジア太平洋リスクセンターの年次報告書『アジア太平洋地域で変化するリスクへの懸念』でも詳細に報告・分析されています。

アジアの2つの小地域(南アジア、東アジア・太平洋)では、アジアの経営幹部が挙げる経済リスク上位項目にほとんど変化がありません。高い失業率とエネルギー価格の急変は一貫して上位5項目に入っており、今年も例外ではありません。さらに、保護主義的措置の増加による経済成長の鈍化と国際貿易の先行き不透明感が、これらのリスクを一層深刻化させました。

図1:アジア太平洋地域の小地域における主なリスクに関するエグゼクティブ意識調査の見解(2015~2017年)Image: 2015~2017年エグゼクティブ意識調査、MMCによる分析

2016年にアジア全域で最も重要なリスクと見なされた高失業率への懸念は、2017年を迎える南アジアで特に深刻です。これは、年初にインドで雇用創出の停滞が予測されていたためです。一方、中国市場の変動が他のアジア経済に及ぼす影響に関連するリスクも依然として重大です。東アジア・太平洋地域では、過去3年連続で資産バブルが主要リスクとして挙げられていることにも表れています。

大規模なサイバー攻撃の脅威は、2017年に重要性が大幅に高まりました。サイバーリスクはこれまでも東アジア・太平洋地域の経営幹部が挙げる上位5つのリスクに含まれていましたが、年初に発生した注目度の高いサイバー攻撃を受け、経営幹部は攻撃による潜在的な損害により注意を払うようになりました。中でも特に注目されたのは、WannaCryランサムウェアによる今年5月の攻撃です。中国、インド、ベトナムなど主要なアジア経済国の企業活動に深刻な混乱をもたらし、これらの国は世界で最も大きな被害を受けた20か国に入ったと報じられました。

国家統治の機能不全の可能性は、過去3年間、南アジア諸国で一貫してリスク上位5項目に入っています。しかし、この懸念は、強権的な指導者の台頭、とりわけフィリピンや米国での動きに特徴づけられた2016年の激動する政治の波を経て、アジア太平洋地域全体にも広がっています。その結果、企業は権威主義の高まりに加え、長期的には政府による監督や説明責任が弱まることへの懸念を強めています。

この3つのリスク分野については、マーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズ・アジア太平洋リスクセンターが初めて発行した報告書『アジア太平洋地域で変化するリスクへの懸念』で、すでに詳しく論じられています。

アジアを揺るがす主なトレンド

しかし、EOSの調査結果は、アジアで続く主要なリスクトレンドを背景に検討する必要があります。経済格差の拡大、人口動態の圧力の高まり、根強い国際安全保障上の懸念、複雑な世界経済の移行、環境リスク、さらなる技術の進歩という相互に関連する6つのトレンドが、現在アジア太平洋地域全体で深刻に感じられています。下の図は、こうしたトレンドの一部が企業に大きな経済的損害をもたらす、いくつかの潜在的なリスクシナリオを示しています。そのため、経営幹部はこれらの動向を注意深く見守り、迅速かつ適切に対応する必要があります。

アジアで想定される主なリスクシナリオ、それに伴う経済的影響、企業に推奨される対応策Image: アジア太平洋リスクセンター

企業への影響

企業は、経済格差の拡大によって起こり得る混乱を予測する必要があります。これには、労使関係の緊張が高まり、ストライキや抗議活動が増加する可能性も含まれます。そのため、企業は労使関係の維持と人材管理プログラムの実施に注力すべきです。テクノロジーが将来の雇用に及ぼす影響や、労働力の高齢化の進展に備えるため、既存の年金制度の見直しが必要になる場合もあります。

企業は、貿易政策、税制、関税規制の突然の変更など、保護主義の高まりによる混乱に備えるべきです。国際政治の動向を継続的に注意深く観察し、対応する予防策(緊急時対応計画の策定、投資の保護、政治リスク保険によるリスク移転の確保など)を実施する必要があります。

環境リスクは発生可能性と影響の両面で高まり続けており、世界のサプライチェーンに重大な脅威をもたらしています。同時に、アジア各国の政府と民間セクターで環境や気候への関心が高まったことで、大きな投資機会となる新たな市場トレンドも生まれています。そのため企業は、混乱に備えて保険をかけ、準備するだけでなく、環境問題、とりわけ気候変動と持続可能性に対する顧客や規制当局の見方の変化が、自社にどのような影響を及ぼすかを理解する必要があります。

第4次産業革命と驚異的な速さで進む技術革新は企業に大きな利益をもたらし得る一方、経営幹部は新技術がもたらす広範な破壊的影響にも警戒すべきです。企業は、導入リスク、サイバーセキュリティの問題、未知の負債、仕事のあり方の変化など、将来の市場における幅広い混乱を軽減しなければなりません。

この複雑なリスク環境では、2つの主要リスクが際立っています。1つ目は、保護主義が高まる時代に国際企業が直面する、貿易をめぐる継続的なリスクです。ドナルド・トランプ大統領の政権はここ数か月、世界貿易の規模縮小や条件の再交渉を目指す意向を示していますが、関税などの保護主義的措置は実際には2009年以降増加しています。注目すべきことに、この傾向が弱まる兆しはありません。中国、インド、ASEAN加盟国などアジア諸国で続く経済移行が、この問題をさらに複雑にしています。

2つ目の重要なリスクは、仕事の未来に関するものです。技術の進歩(自動化、ビッグデータを中心とする業務、テクノロジーを活用した「ギグエコノミー」など)、急速な高齢化、経済格差の拡大に起因する労使関係の緊張が重なり、アジア各地の人材部門に難題を突きつけています。ビジネスリーダーは、人材をどう採用し定着させるか、良好な労使関係を維持しながら従業員の能力をどう最大限に引き出すか、テクノロジー主導の経済で従業員向けの研修や再教育をどう設計するか、高齢の従業員を支える持続可能な年金制度をどう設計するかといった複雑な問いに答えなければなりません。

不確実な未来

世界の政治情勢は不確実性に覆われ続けており、その結果、ビジネス幹部にとって世界情勢の複雑さを自社への影響に落とし込むことがますます難しくなっています。そのため、ビジネスリーダーは、自社が直面するリスクを評価し適切な対策を講じるうえで、各部門に合わせた指針となる質問集が役立つと考えるかもしれません。たとえば、2017年版の『アジア太平洋地域で変化するリスクへの懸念』に掲載された質問集がそれにあたります。

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