気候変動により飲料水の塩分濃度が上昇するにつれ、バングラデシュでは脳卒中や心疾患の患者数が増加する可能性があると、ある研究は予測している。
バングラデシュを襲う熱帯低気圧は海水の流入を招き、「地域住民が利用する河川や陸地の飲料水用池に、大量の塩分が流れ込む可能性がある」と、ロンドンのインペリアル・カレッジとダッカ大学による研究の共著者、エイドリアン・バトラー氏は述べた。海面上昇も、海水の流入が深刻化するリスクを高めている。
ナトリウムを過剰に摂取すると、高血圧や、脳卒中・心疾患などの心血管系の問題のリスクが高まると研究者らは述べた。非感染性疾患をテーマにインペリアル・カレッジで開かれたフォーラムでの発言だ。
推奨されるナトリウムの1日総摂取量は2グラム未満だと、 世界保健機関は述べている。飲料水中のナトリウム濃度について、欧州連合の基準値は1リットル当たり200ミリグラムである。
しかし、バングラデシュの人口の大部分は、1日2リットルの飲料水から、1日最大16グラムの塩分を摂取している可能性があると、 以前の研究 でインペリアル・カレッジの研究者パオロ・ヴィネイス氏と同僚らは指摘した。
ガンジス川、ブラマプトラ川、メグナ川がつくる広大なデルタ地帯の大部分を占める低地の国バングラデシュは、洪水、サイクロン、干ばつなどの異常気象にとりわけ脆弱だ。
2007年11月、 サイクロン・シドル がバングラデシュ南部を襲い、2,000人以上が死亡し、広範囲にわたる洪水が発生した。
しかしバングラデシュは、土壌劣化、土壌塩分濃度の上昇、河岸侵食など、長期的な環境問題にも直面している。異常気象の激化と海面上昇により、こうした問題は悪化する可能性が高いと、バングラデシュの気候変動と塩分濃度を研究してきたヴィネイス氏は述べた。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、 2014年の第5次評価報告書 で、海面上昇により飲料水の塩分濃度の悪化が「ほとんどの沿岸地域、特に低所得国における重要課題」になると予測した、とヴィネイス氏は述べた。
「バングラデシュは嵐などの自然災害に対して脆弱であることに加え、気候変動の将来的な影響にも脆弱であり、それによって自然災害がさらに深刻化する可能性がある」と同氏は語った。
バトラー氏と研究チームは、バングラデシュ南部のダコペ郡にある2カ所を調査し、共同利用の飲料水用池と、塩分に汚染された水を浄化する取り組みを研究した。
「現在、政府やNGOは、新鮮な飲料水源として雨水の貯留を支援しています。しかし、貯水設備は非常に(少なく)、大規模な設備は高価なことがよくあります」とバトラー氏は述べた。
研究者らが検討している解決策の一つは、帯水層への貯留と回収だ。このシステムでは、屋根から雨水を集めて地下に注入し、淡水の「レンズ」をつくる。その後、乾季に手押しポンプで水をくみ上げられる。
しかしバトラー氏によると、こうした帯水層の成果はまちまちだった。
「システムに適した水源から十分な淡水を集めるのが難しかったため、塩水濃度が依然として高く、性能はあまり良くありません」と同氏は述べた。
バトラー氏によると、研究の次の段階では、水の塩分濃度に対処するほかの解決策と、飲料水中の高いナトリウム濃度に関連する健康問題に対処するため、そうした解決策を開発する費用を検討する。
この記事は Thomson Reuters Foundation trust.orgとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムがその見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:カイル・プランツは、トムソン・ロイター財団で気候変動問題を担当するインターン記者。
画像:洪水から避難している仮設シェルターで水を飲む少女。REUTERS/Andrew Biraj


