インド経済は急成長しているが、最も貧しい地域は取り残されている。その状況が変わるかもしれない理由

The Lifeline Express, a hospital built inside a seven-coach train, parked at a railway station in Jalore, India
India has launched a new programme to transform its 115 poorest districts.Image: REUTERS/Danish Siddiqui
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インドは世界で最も急成長する大規模経済の一つである一方、順位はUNDPの人間開発指数で188か国中131位です。国内のいくつかの地域では社会経済指標が大きく改善した一方、遅れをとっている地域もあります。

州間および州内で、成果の達成状況に大きな格差があります。たとえば、施設で出産する女性(自宅出産ではなく)の割合は、2005~06年の38.7%から2015~16年には78.9%へと、全国で上昇しましたが、州によって異なり、プドゥチェリーの99.9%からナガランドの32.8%まで幅があります。国内の地区(州の行政区画)間にも同様の差があります。たとえばジャールカンド州では、サーヒブガンジ地区の施設出産率は48%であるのに対し、プルビ・シンブーム地区では82%です。

国のあらゆる地域で人間開発指標が同時に変革されなければ、持続的な成長は実現できないとの認識のもと、ナレンドラ・モディ首相は2018年1月に「アスピレーショナル・ディストリクツ・プログラム(ADP)」を開始しました。このプログラムは、誰一人取り残さないという「Sabka Saath, Sabka Vikas」(皆とともに、皆の発展)という首相の理念に沿ったものです。

政府のシンクタンクであるインド変革国家機構(NITI Aayog)の主導のもと、ADPは、主要な保健・教育指標および基礎インフラで国内の他地域に遅れをとっている28州の115地区の変革に重点を置いています。全般的な発展の遅れには、統治の弱さ、物的資源の保有量が比較的乏しいこと、長年の貧困と困窮による住民の意欲低下など、さまざまな要因が影響しています。これらの地域には2億5,000万人を超える人々が暮らしています。対象となった地区のうち35地区は、左翼過激主義の脅威にさらされています。

政府がこれほどの規模と範囲のプログラムを立ち上げるのは初めてです。このプログラムは、統治のあり方を再構想し、中央政府との関係を深め、地区行政により大きな当事者意識と説明責任を持たせ、データを継続的に利用できるようにし、市民が開発プロセスに貢献できるよう参加を促すことで、社会経済面の成果向上を目指しています。

開発プロセスを国民的な運動に

これまで、開発指標で遅れをとる国内の地域は「後進的」と呼ばれてきました。しかし、このプログラムでは対象地区を「アスピレーショナル(向上を目指す)」と名付けています。この名称変更は重要です。これにより、こうした地域は絶望の地ではなく、希望の島として位置づけられます。また、市民が地区の変革に積極的に参加するよう促します。

NITI Aayogが策定した広範な枠組みに沿って、政府当局者は115地区それぞれについて、2018~19年度から2022~23年度までのビジョンと行動計画を策定しています。計画は、地域コミュニティと協力し、各地区の強みと弱みを徹底的に分析したうえで作られます。人々は公共サービスを受け取るだけの存在ではないため、これは重要です。人々は開発活動における重要なパートナーであり、その効果を広げる担い手です。根強い課題に直面しながらも地区に変化をもたらしてきた、さまざまな分野の人々の参加を重視しています。

開発データを民主化し、地区間の競争を促す

NITI Aayogは、関係する政府省庁や知識パートナーとの詳細な協議を経て、主要業績指標を特定しました。これらは主に、保健・栄養、教育、農業・水資源、金融包摂、技能開発、基礎インフラに関する社会経済面の成果です。

これらの指標を用いて、地区を順位づけするための総合指数が作成されました。インドの開発優先事項を反映するため、保健、栄養、教育の指標には指数でより高い重みが付けられています。NITI Aayogは2018年4月、115地区の基準順位を公表しました。データは定期的に更新され、地区の改善状況はモニタリング・ダッシュボードに反映されます。

各地区は、基準値と比較した重点分野全体の進捗に基づいて順位づけされます。これにより、過去の実績の有無によって順位が偏るのを防げます。

Image: NITI Aayog

このデータは、統治と意思決定の透明性および説明責任を確保するため、公開されます。発展途上国でこれほど大規模に開発データの民主化が行われ、すべての関係者がアクセスできるようになるのは、おそらく初めてです。さらに、リアルタイムのモニタリングによって、開発指標の望ましい改善をもたらしている政策介入を特定し、適時に軌道修正できるようになります。

アスピレーショナル・ディストリクツ・プログラムのリアルタイム・モニタリング・ダッシュボードのランディングページImage: NITI Aayog

政府のあらゆる階層が連携するための制度的仕組み

インドの規模と多様性を考えれば、州や地区が自らの開発についてより大きな発言権を持つことが重要です。さらに、地域の課題は国内各地で大きく異なります。そのため、州政府と地方政府は開発課題を把握し、それぞれに合わせた政策介入を設計するうえで最適な立場にあります。この取り組みは、証拠に基づいています。資源と責任をより下位の政府階層に移譲すれば、公共部門の施設運営が改善し、公共サービスの利用が増え、望ましい社会経済面の成果がより大きく達成される可能性があることが示されています。

現場に最も近い政府当局者が上位機関の判断を待たずに意思決定できるよう、地区の行政責任者である地区コレクターが、このプログラムの中心的な担当者に指定されました。モニタリング・ダッシュボードに記録される、絶えず変化する各地区の状況に基づき、取り組みの実施と監視で重要な役割を担います。中央政府の上級当局者は、中央政府と州政府をつなぐ役割を果たすために任命されました。また、中央政府の主要な省庁・部局の行政責任者を含む委員会も設置され、既存のプログラムを改善し、地区から提起された問題を解決します。

政府のあらゆる階層が連携すれば、既存の施策をこのプログラムにより効果的に振り向けられます。実際、ADP専用の予算を割り当てるのではなく、既存の資源をより賢く活用し、同じ資金でより良い成果を得ることを政府は目指しています。また、協力して取り組むことで、現在は国内の一部または少数の地区に限られている革新的なサービス提供の手法を、他の地域にも広げられます。

政府の取り組みを超えて

民間部門、慈善団体、技術パートナーに門戸を開くことで、ADPは、開発は大部分において政府だけの責任であるという根強い一般認識を変えようとしています。こうしたパートナーシップは新たなアイデアをプログラムにもたらし、成果を大きく押し上げる力となる可能性があります。ビル&メリンダ・ゲイツ財団、タタ・トラスト、ピラマル財団など、これらの地区の変革に向けた政府の取り組みを補完する複数のパートナーシップがすでに構築されています。

ADPの開始は、インドの政府と統治のあり方を大きく再構想するものです。過去の失敗から学び、すべての地区が国全体の成長と発展に歩調を合わせられるよう、仕組みの整備を目指しています。インドの誰一人取り残さないことで、この取り組みは人間開発指数におけるインドの順位を改善するとともに、持続可能な開発目標の達成に向けた国の取り組みをさらに加速させる可能性があります。

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