南アジア、特にインドには、世界の農家のほぼ4分の1が暮らし、世界の耕作可能地の48%を有しています。国内の12億人に食料を供給するとともに、農産物の輸出を通じて国境を越え、多くの人々にも食料を届けています。同国はサービス業や工業生産など、多くの非農業分野で大きく進展してきましたが、農業は今も国の生命線であり、とりわけ農村部に暮らすインド人の64%にとって重要です。
インドの農業について何かを述べるとき、その反対もまた真実です。
インドの農業部門は、一部地域では高度に工業化されていますが、全体としては依然、小規模農家主導で、投入資材も生産量も少ない一方、大きな潜在力を秘めた仕組みです。また農業は、貧困、農村の生計、健康、栄養に複合的な影響を直接及ぼす唯一の部門であり続けています。
1947年にインドが独立した当時、同国は「船から口へ」と形容される状況にあり、人口の大半が海外からの食料援助や輸入に依存していました。技術と政策の力を示した緑の革命の到来により、インドは食料自給を達成しました。白い革命を含むさまざまな取り組みと、技術・戦略の組み合わせによって、インドは食料を十分に確保するだけでなく、食料の純輸出国にもなりました。
今日、インドは牛乳と豆類の世界最大の生産国であり、コメ、小麦、果物、野菜の世界第2位の生産国、そして食用穀物全体では第3位の生産国です。
インド農業の喜ばしい成果は、未解決・未対応の課題によって損なわれています。栄養不良(皮肉なことに、その多くは生計を農業に依存する人々の間で見られます)、低い生産性、農家が得る所得の恩恵の限界などです。
潜在力と実績の隔たり、そして市場の需要と供給の隔たりを埋めることは、農業にきめ細かな工夫を取り入れて初めて対処できる課題です。農業は、特にインドのような農業国では複雑な現象です。農業部門に万能薬や完璧なモデルはありませんが、最も有望な選択肢が二つあるとすれば、それは適切な 技術 と適切な 政策
です。
開発を推進し、その実現手段を探る過程で、私たちは極めて重要な二つのツールボックスの力を過小評価し、十分に活用してきませんでした。一つは技術ツールです。塩害や干ばつに強い作物を生み出す遺伝子組換え技術は、生産性の低い広大な土地や沿岸地を食料生産に転換する助けとなる可能性があります。バイオ強化技術は、人々が食料だけでなく栄養も得られるようにします。収穫後技術は、生産後から消費者に届くまでに失われる食料の37%超を救うことができます。もう一つは、技術の開発と普及を促進し、成長の恩恵が、その成長から取り残されている何百万人もの農家にも届くようにする政策です。
インドの農業の実態は、作物を育てることや家畜を飼育することだけではなく、その両方を組み合わせたものです。インドの牛乳の80%は、こうした「混合」農業システムから生産され、家畜の60%超が飼料として作物残渣に依存しています。また小規模農家の90%超は、作物農家でも畜産農家でもなく、わずかな土地と1~2頭の家畜に依存し、その間でリスクを分散する「混合」農家です。
毎年、非常に多くの「せっかちな」インドの農家が農業を離れ、農業以外の仕事に就きます。その結果、農業を引き継ぐ女性農家は、極めて重要な役割を果たしているにもかかわらず、その働きがほとんど認められていないことが少なくありません。「楽観主義者」たちは、ポリオ対策のように、農業の課題に多角的に取り組む、複数部門・複数の利害関係者が参加する多次元的なキャンペーンを求めています。複数の成長経路が重要であり、併存していることを踏まえれば、農業の急速な成長に応えると同時に、高成長の経路から取り残され、重要な、そしてしばしば唯一の生計手段として自給農業に依存し続ける非常に多くの小規模農家にも責任を持って対応しなければなりません。 本記事はビル&メリンダ・ゲイツ財団
との協力により公開されています。記事の公開は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。 アジェンダの最新情報を受け取るには、週刊ニュースレターにご登録ください
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著者:Purvi Mehta-Bhatt博士は、インドのビル&メリンダ・ゲイツ財団で南アジア担当農業部門のシニアアドバイザー兼責任者を務めています。


