ラテンアメリカ・カリブ海地域の雇用の未来:変化する雇用主の需要に応えるには、デジタルスキル格差を早急に解消する必要がある

A globe showing Latin America and the Caribbean.
Soft skills such as leadership, social influence and resilience are in increasing demand in Latin America and the Caribbean.Image: Pexels/Marina Leonova
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  • 世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2025」によると、ラテンアメリカ・カリブ海地域の雇用主の84%は、デジタル・テクノロジー人材の需要拡大に応えるため、自社で従業員のスキルアップを図る計画だ。

  • 自動化や気候変動が事業運営を変えるなか、リーダーシップ、社会的影響力、レジリエンスなどのソフトスキルの必要性も高まっている。

  • 組織文化や時代遅れの規制は、変革を妨げる最大の障壁とみなされている。雇用や解雇の慣行をより柔軟にすることが、最も望まれる公共政策上の施策だ。

ラテンアメリカ・カリブ海地域には、デジタル格差が深く根を下ろしている。インターネットにアクセスできる世帯はわずか3分の2で、OECD平均の約91%を大きく下回る。国によっては、また農村部では、接続率がさらに低い。

一方で、これは大きな前進の余地が残されていることも意味する。そのため、今後5年間に同地域の労働市場を変革する最大の要因の一つとしてデジタル化が見込まれている。「世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2025」が指摘するように、デジタルアクセスの拡大は、アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、メキシコで最も変革をもたらすトレンドと考えられている。

ほかに変化がデジタルアクセスやスキルと密接に結びついている分野として、気候変動緩和の取り組みと労働・社会問題がある。雇用主がこれらも2025~30年の自社の変化を促す最大要因の一つとみているのは、偶然ではない。「Future of Jobs Report」が示すとおりだ。

デジタルアクセスの拡大、炭素排出量削減の取り組み、労働・社会問題への関心の高まりは、ラテンアメリカ・カリブ海地域の雇用主が直面する最大の要因である。Image: 世界経済フォーラム「Future of Jobs Report 2025」

ラテンアメリカ・カリブ海地域の仕事の未来はどのようなものになるだろうか。現在とは異なる姿だ。ビッグデータ分析者、AI・機械学習の専門家の数は急増すると見込まれる。しかし、こうした新たな人材を惹きつけるには、企業側も変わらなければならない。多くの人が事業変革の障壁とみなす時代遅れの組織文化を見直し、給与・報酬体系を再設計し、従業員のウェルネスへの取り組みを再評価する必要がある。

ビッグデータ分析者、AI・機械学習の専門家は、最も急速に増加する職種になると見込まれている。Image: 世界経済フォーラム「Future of Jobs Report 2025」

ラテンアメリカ・カリブ海地域の労働市場をめぐる主なトレンド

熟練人材の需要を受け、ラテンアメリカ・カリブ海地域の雇用主から、リスキリングやスキルアップへの公的資金を増やすよう求める声が上がっている。雇用主の51%が、今後10年間にこれが必要だと回答した。コロンビアとメキシコでも、これが最も望まれる政策施策であり、調査対象の雇用主のそれぞれ60%、51%が支持している。

しかし、雇用主の84%にとっての答えは、自社で従業員のスキルアップを図ることだ。「Future of Jobs Report」によると、ブラジル、コロンビア、メキシコでは、今後5年間に雇用主が採用を予定する人材戦略の第1位にスキルアップが挙がっている。

同地域で最も急速に増加する職種の一つはサステナビリティ専門家で、2030年までに職務数は29%増えると見込まれている。

「世界全体、そして特にメキシコ市場では、今後数年間、スキルアップが極めて重要になることは明らかです」と、シンクタンクのメキシコ競争力研究所(IMCO)事務局長、バレリア・モイ氏は述べる。同研究所は「メキシコの労働市場における未充足求人」などの報告書で、同国の人材不足やスキル格差の原因を検証してきた。「AIとビッグデータの存在感は大きくなり、リーダーシップ、創造的思考、レジリエンスなどのソフトスキルの需要も高まるでしょう。メキシコはこうしたトレンドに応える形で人材育成に取り組む必要があります。そうしなければ、経済は世界水準についていけなくなるでしょう。」

地域全体では、企業の10社中8社が、今後5年間で従業員の人材育成が進むと予想する一方、公開市場で人材を確保しやすくなるとみる企業は3分の1をわずかに上回る程度だ。

ラテンアメリカ・カリブ海地域では、多くの雇用主が今後5年間に従業員のスキルアップを計画している。Image: 世界経済フォーラム「Future of Jobs Report 2025」

劇的な変化が予想されるだけでなく求められている地域では、組織文化と時代遅れの規制が事業変革を妨げる最大の障壁とみなされている。報告書の調査対象となった雇用主の約50%が、それぞれを障壁として挙げた。

この状況が最も深刻なのはコロンビアで、企業の61%が、時代遅れまたは柔軟性に欠ける規制の枠組みを変革の障壁として挙げている。アルゼンチンでは57%が時代遅れの規制が変化を妨げていると考え、48%は組織文化と変化への抵抗を原因に挙げた。

前進するには、雇用や解雇の慣行をより柔軟にする必要がある。これは同地域で最も望まれる公共政策上の施策であり、企業は人材の確保しやすさを高めるうえで最も効果が大きいと考えている。

テクノロジーに期待を寄せるラテンアメリカ

人材育成はスキル危機への解決策の一つだが、企業の81%にとっては、自動化の加速も解決策となる。

特にアルゼンチンとメキシコではこの傾向が顕著で、企業のそれぞれ96%、95%が、今後5年間にAIツールが自社の業務を変革すると予想している。

メキシコでは、ロボティクスが変革の中心になると予想される。同国は主要な製造拠点であり、産業用ロボットの輸入は2017~22年に4分の1増加した。メキシコの企業の合計63%が、今後10年間にロボティクスが自社の業務を変革するとみている。

それでも、こうした機械や企業運営を監督する人材は必要であり、今後数年間に特に需要が高まると見込まれるスキルには、管理能力や対人能力がある。73%がレジリエンス、柔軟性、機敏さの必要性が高まるとし、77%が創造的思考への需要増を、70%がリーダーシップや社会的影響力のスキルへの需要増を見込んでおり、いずれも世界平均を上回っている。

人材は魅力的な仕事に引きつけられる。そのため、ラテンアメリカ・カリブ海地域の企業にとって、従業員に提供する待遇の質を高めることが極めて重要になる。

この傾向はアルゼンチンでさらに顕著で、創造的思考への需要増は世界平均を大きく上回ると予想される。ほかのソフトスキルもすでに需要が急増しており、特にリーダーシップと社会的影響力が注目される。

「Future of Jobs Report」は、主に人的資本への投資を拡大する明確な必要性を示しています」と、アルゼンチンのアウストラル大学IAEビジネススクールのマルティン・カルベイラ氏とエドゥアルド・フラッキア氏は述べる。同校は2020年から同報告書の調査パートナーを務めている。「テクノロジーのトレンドが雇用を左右する主な要因であり、労働者が身につけるべき主なスキルは、テクノロジー分野全般に加え、創造的思考、レジリエンス、柔軟性に及びます。」

アルゼンチンでは、ソフトスキルの必要性がAIやテクノロジーの能力への需要とほぼ同じ速さで高まっている。Image: 世界経済フォーラム「Future of Jobs Report 2025」

気候関連スキルが雇用を生み出す

ソフトスキルとハードスキルの組み合わせは、排出量削減と気候変動緩和の推進にも生かせる。ラテンアメリカ・カリブ海地域の企業の約半数は、これらが2025~30年に自社の事業を変革するとみている。同地域で最も急速に増加する職種の一つはサステナビリティ専門家で、2030年までに職務数は29%増えると見込まれている。

コロンビアでは、再生可能エネルギー技術者が最も急速に増加する職種の一つで、今後5年間に22%増えるとみられる。これに続くのがサステナビリティ専門家で、21%増が見込まれている。

ラテンアメリカで2番目に大きな産油国であるメキシコでは、企業の69%が環境保全のスキルへの需要拡大を見込み、59%が炭素排出削減を組織変革の主要因とみている(世界平均は47%)。同地域最大の産油国ブラジルでも、企業は排出量削減の必要性(53%)と気候変動への適応(49%、世界では41%)を背景に変化が進むとみている。

「データ、AI、イノベーション、ESGの専門家に対する需要が高まっており、職務の変化に企業が適応する必要性を示しています」と、ブラジルのビジネススクール、ドン・カブラル財団(FDC)のディレクター兼教授、ウーゴ・タデウ氏は述べる。「企業が先行し続けるには、研修や能力開発プログラムへの投資が極めて重要です。従業員が新しいテクノロジーを活用し、生産性を高めるスキルを身につけられるようにする必要があります。

「全体として、ブラジルの雇用市場の見通しは引き続き明るいものです。自動化が雇用に取って代わるという懸念がよく聞かれる一方、データは専門人材への需要が高まっていることを示しています。このことは、変化する経済の需要に対応するために、継続的な学習と労働力の再教育が重要であることを裏付けています。」

ラテンアメリカ・カリブ海地域の次なる展開は?

人材は魅力的な仕事に引きつけられる。そのため、需要の高いスキルを持つ人々を増加するテクノロジー関連職に呼び込もうとするラテンアメリカ・カリブ海地域の企業にとって、従業員に提供する待遇の質を高めることが極めて重要になる。

アルゼンチンでは、企業の57%が労働者の購買力を支えるために給与・報酬戦略の再設計を計画しており、世界全体の33%を上回る。一方コロンビアでは、従業員の健康とウェルビーイング、キャリアアップの見通し向上に、より重点が置かれている。

学習機会の提供も、人材を引きつけ、定着させる方法の一つだ。「世界経済フォーラムのJobs Initiative」が示すように、この取り組みは業界や地域を越えて企業、政府、市民社会と連携し、すべての人に良質な仕事を促進している。

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