ケニア東部の農場で、膝ほどの高さに育った緑豆の列に身をかがめ、グレース・カーリさんは切れ味の鈍いなたで雑草を刈りながら鼻歌を口ずさんでいる。
2年前、カーリさんには朝に作物の世話をする時間などなかった。代わりに、12キロ(7マイル)離れた川まで水をくみに出かけていた。
「以前は一日中、水くみに費やしていました。疲れ果ててしまい、その日はほかに何もできませんでした」と、彼女はトムソン・ロイター財団に語った。
しかし、最近設置された太陽光発電式の揚水ポンプによって、今では貴重な水が村に直接届くようになった。村の貯水タンクが満杯になり、1エーカーの土地で終わりなく続くほかの作業に時間を使えるようになったという。
ケニア農村部で最も貧しい世帯の多くにとって、安全な水の利用は依然として困難だ。家族は、インフラ不足から、最も社会から取り残された人々を支援する政府の姿勢の欠如まで、さまざまな問題を原因に挙げている。
しかし、カーリさんが暮らすタラカ・ニティ郡など一部の郡では、農村部の電化が広く進んでいないなか、近くの川から村へ水をくみ上げるために太陽エネルギーを利用し始めている。
水は村の貯水タンクに送られ、各世帯の人々が無料でくむことができる。

「人々は水不足に苦しんできましたが、この郡には年間を通じて流れる川が3本あります。課題は水源から水をくみ上げ、家の近くまで届けることでした」と、郡の農業・水・灌漑・漁業担当執行委員であるジャスパー・ンカンヤ氏は語った。
ンカンヤ氏によると、この郡には日照が豊富にある。長年活用されてこなかった資源だが、状況は変わりつつある。
「太陽光発電装置はエネルギーを蓄え、蓄電池システムを使えば昼夜を問わず水のくみ上げに利用できます」と、同氏はインタビューで語った。
ンカンヤ氏によると、800万ケニア・シリング(8万ドル)を投じて設置されたこの太陽光揚水ポンプ事業は、4万人以上にサービスを提供しており、郡政府が資金を拠出している。
住民によると、水をより簡単に利用できるようになったことで暮らしに変化が生まれた。特に、従来水くみを担ってきた女性や少女たちにとって大きな変化だという。
「娘は母親について水をくみに行くため、以前は学校を休んでいました」と、マリマンティでバイクタクシーの運転手をするマーティン・ムウィティ氏は語った。
同氏によると、今では「娘はいつも学校に通えているので、成績が上がりました」。

「状況を一変させる」
ンカンヤ氏によると、政府は追加資金が確保できれば、同様の水の安定確保の問題に直面する郡内のほかの地域にも事業を拡大したい考えだ。
エネルギー省の首席次官ジョセフ・ンジョロゲ氏によると、世界銀行が資金を拠出する取り組みの一環として、ケニアのほか14郡でも、水へのアクセスを含む開発を促進するため、太陽光発電の導入が進んでいる。
2017年に始まった1億5,000万ドル規模の事業について、ンジョロゲ氏は「太陽エネルギーを活用して、ケニアの社会から取り残された地域に水、照明、暖房へのアクセスを含む開発をもたらすことが目的です」と語った。
ストックホルム環境研究所のアフリカ研究員、ムベオ・オゲヤ氏は、揚水や灌漑の動力に太陽光発電を使うことは、「ケニアで社会から取り残された地域のエネルギーと食料の安定確保において、状況を一変させる可能性がある」と述べた。
マリマンティでは、太陽光発電でくみ上げた水を利用できるようになった効果が、すでに目に見えて表れている。
ケニアで長らく最も貧しい地域の一つだったこの地域では、水が容易に手に入るようになり、新たな事業が生まれている。女性が使える時間も増え、草ぶきの小屋に代わって現代的な住宅が徐々に建てられている。
マリマンティの住民ジョン・キバーラ氏によると、保健センターには出産時の衛生を保つのに十分な貯水ができるようになり、子どもたちも授業時間を使って水をくみに行く必要がなくなった。
エネルギー省のンジョロゲ氏は、今後ケニアで太陽光発電の利用がさらに広がると見ている。
「私たちは自らの可能性を見据え、将来に目を向け、エネルギー需要を満たすために再生可能エネルギーを頼りにしています。これによってエネルギーコストが下がり、特に農村部で零細・中規模企業の成長が促されるでしょう」と同氏は語った。

