深刻な熱波で海水温が上昇するなか、ムンバイの女性魚売り4万人は売上の減少に直面している。
この異常気象は、漁獲量の少ない事業者にとりわけ大きな打撃を与えている。
熱波を受け、漁業部門全体で支援と保険を求める動きが広がっている。
うだるような暑さのムンバイの午後、魚売りのナヤナ・パティルさんは売れ残ったマナガツオを店頭から手に取り、ここ2週間でキロ当たりの価格が3倍になったと話した。
「今、誰が1,500ルピー(19.79ドル)で買うというの?」銀色の魚を尾の部分で持ち上げ、憤然として尋ねた。
数人の客が、まるで博物館の展示品を見るように並べられた魚を眺めるなか、パティルさんは、ムンバイの気温が急上昇して漁獲量が減ったと非難し、天候の不安定さで収入が落ちたのだから補償を受けるべきだと訴えた。
嵐で損失を被ったり船を損傷したりした漁師には政府から給付金が出る一方、農家は干ばつや洪水による作物被害への支援を受けると、55歳のパティルさんはトムソン・ロイター財団に語った。
「以前は、ここで女性たちは稼ぎで子どもを10人育てられました。今はお金がありません。母は私たちを学校に通わせられませんでしたが、自立できるように漁を教えてくれました。海に魚がいなくなったら、私たちはこれからどうすればいいのでしょう」と彼女は付け加えた。
ムンバイの熱波と地元漁業経済への影響
気象当局によると、ムンバイでは3月に深刻な熱波となり、少なくとも10日間、気温が平年を6~7度上回った。
インド洋のなかでも特に急速に温暖化が進むアラビア海に面したこの都市では、過去5年間に、季節外れの雨やサイクロン、極端な暑さが起きている。
こうした気候の変化が漁獲量に及ぼす影響は、勇敢で独立心が強く、機知に富み、金銭感覚に優れていることで知られるムンバイの女性魚売りたちが、何世代にもわたって享受してきた社会的地位に、今や暗い影を落としている。
先月の暑さは、近年彼女たちが直面してきた一連の困難のうち、最新かつ最も厳しいものだった。激しさを増すサイクロンのなかで漁に出られる日が減ったことによる損失から、オンラインの水産物宅配サービスとの競争まで、課題は多岐にわたる。
国立漁業開発委員会(NFDB)のデータによると、中央政府は漁業従事者に死亡・障害保険を提供しており、これまでに約28万人が加入している。
漁業労働者の組合は、不安定な天候による損失を対象とする同様の保険も必要だと述べている。
NFDBがまとめたデータによると、海面水温が1.2~1.4℃上昇したことを背景に、過去20年間でアラビア海のサイクロンは52%増加した。
「海は私たちの農場です。私たちも気候変動の被害者です」と魚売りのパティルさんは語った。
ムンバイの熱波で魚が移動
政府のデータによると、インドでは漁業と関連活動に約2,800万人が従事し、漁獲後の作業全体の70%を女性が担っている。
ムンバイでは、推定4万人の女性魚売りが、同市の先住民であるコリ人コミュニティに属している。彼女たちは魚の仲買人から仕入れ、選別、梱包して市場で販売する。
2020年、インドの海域での総漁獲量は約370万トンで、2012年の320万トンから増加した。一方、河川と河口域の漁獲量は倍増して1,000万トンとなった。
それでも、西ベンガル州を拠点とする全国小規模漁業労働者ネットワークを率いるプラディップ・チャタジー氏は、急激な天候の変化により、伝統的な知識や計算がもはや通用せず、加盟者が苦境にあると語った。
海水温の上昇で魚が本来の生息域からより冷たい海域へ移動していることに加え、乱獲によって魚の資源も減少していると科学者らは述べた。
「産卵期にも乱獲を続けたり、稚魚まで捕らえる目の細かい網を使ったりすることが、気候変動が漁業コミュニティに及ぼす影響をさらに悪化させています」と、ケララ州を拠点とするインド持続可能な水産物ネットワークの事務局長、スニル・モハメド氏は語った。
例えば、かつてケララ州とカルナータカ州の南岸に豊富に生息していたオイルサーディンは、現在では北寄りのマハーラーシュトラ州とグジャラート州の沿岸で見られる。
同様に、「ボンビル」と呼ばれる魚は、植民地時代の名称である「ボンベイダック」としても知られる。地元の漁師によると、以前はムンバイ沿岸で獲れていたが、今では隣接地区のさらに北で見つかる。
その結果、ディーゼル価格が急騰するなか、より沖合の深海まで出ていくために燃料を多く使わなければならないのに、漁獲量は減っている。
漁業労働者組合であるマハーラーシュトラ・マチマール・クリティ・サミティのデヴェンドラ・ダモダル・タンデル氏は、海洋研究者と若い地域住民の協力を得て、先月のムンバイの熱波による損失を組織で調査していると語った。
保険がないため、サイクロンの後には、漁獲量や就労日数の損失、トロール船のエンジンの大きさに応じて現役の漁師に臨時の補償が支給され、州の財政に繰り返し負担をかけていると同氏は指摘した。
しかし、何万人もの女性たちは、その多くが非公式に働いており、金銭的な支援を受けられない。
タンデル氏によると、サイクロンが襲来した際に女性たちが受け取る唯一の補償は、魚を保管する箱だという。
「それで何の役に立つのでしょうか」とタンデル氏は問いかけた。今週、同氏は不公正を訴える書簡を地元政府に送った。
仕事の減少
ムンバイ郊外のヴェルソヴァ港で、空になった竹製の魚干し棚を見渡しながら、退職した海洋科学者で漁師のサダシヴ・ラジェ氏は、父親と漁に出た子ども時代を思い出した。二人は「ボンビル」を籠いっぱいにして戻ったものだった。
ボンビルは、カリッと揚げたり、タマリンドとココナツのカレーにしたりと料理の用途が広いだけでなく、雇用を生み出す点でも重要だと同氏は述べた。
新鮮なものは魚市場でよく売れ、港の作業員が干したものは、年間を通じて保管・販売される。
「以前は3月いっぱい仕事がありましたが、先月は7日間だけでした」とマラマ・ランディ・コナルさんは語った。竹竿に魚を掛ける仕事で、海風にリボンのようにはためく魚を干し、1日200ルピーを稼いでいる。
政府は3月、地球温暖化がもたらす影響を認めた。インドの海洋漁獲量への影響を認めた一方、組合の指導者らは、気候関連の損失から漁業コミュニティを守るべき時だと述べた。
マハーラーシュトラ州の漁業担当大臣アスラム・シャイク氏は、コメントの要請に応じなかった。
漁業従事者保険を監督するNFDBの最高経営責任者、スヴァルナ・チャンドラッパガリ氏は、養殖魚やエビを対象に気候関連の損失を補償する保険制度を近く試験導入すると述べた。
ただし、内水域や海上での気象災害を対象とする保険については、まだ決定していないと同氏は付け加えた。
損失を抑えるその他の取り組みには、商業的に価値のある魚種を養殖するための海上いけすや、海藻の人工増殖がある。また、インフラを改善して突風から漁港を守ることも含まれると同氏は指摘した。
活動家のチャタジー氏は、零細事業者や社会的に疎外された事業者が最も大きな打撃を受けることのないよう、漁業部門全体で気候変動への強靱性を高める必要があると述べた。
漁獲量の減少はすでに、ムンバイの女性魚売りたちの収入に対する考え方を変えつつある。不安定な商売を辞めたり、次世代がこの仕事に就くのを思いとどまらせたりする人もいる。
ムンバイのコリ人コミュニティを研究してきた研究者のプラニタ・ハラド氏は、魚を彼女たちの「ラクシュミ」(ヒンドゥー教の富の女神)と表現した。
「彼女たちにとって魚は、主な生計手段であるだけでなく、自分たちの存在の象徴でもあります」と同氏は語った。「漁獲量の減少が続けば、女性たちは別の職業に移らざるを得なくなるでしょう。」



