2020年世界経済フォーラム年次総会の初日、ダボスでクリスタル賞を受賞したオーストラリア人アーティスト兼映画監督のリンネット・ウォールワース氏は、その週に行われる気候変動に関する議論の基調を示した。
「私は、新たな現実から来た旅人としてここに立っています。燃えさかるオーストラリアでは、絶え間なく降り続く灰の中で、最もはっきりと見えるのは、恐れられ、警告されていたことが、もはや未来の話でも、議論のテーマでもないということです。今ここにあるのです。」
「私たちは、気候変動が広げる翼を目の当たりにしてきました」と彼女は続けた。「この新たな現実がもたらすものに立ち向かうには、この時代にふさわしいリーダーが必要です。」
人々と自然とのつながりを探る没入型インスタレーションや映画で知られるウォールワース氏は、2016年の映画『Collisions』でエミー賞を受賞した。同作は、1950年代に英国がオーストラリア奥地で実施した原子爆弾実験と、何世紀にもわたりその地に暮らしてきた先住民族や土地への影響を描いている。
世界経済フォーラムの委嘱で制作されたこの映画は、バーチャルリアリティを用いて、視聴者を爆弾実験の現場へと近づける。舞台は、西オーストラリア州ピルバラ砂漠のパース北東約2,000kmに位置するマルトゥ族の長老、ニャリ・モーガン氏とともに訪れる場所だ。彼は、故郷で爆弾が爆発したときに何を見て、何を感じたのかを語る。それは彼にとって、西洋の技術、そして自分とは異なる文化に初めて触れた経験だった。
「神々の霊が立ち上がり、私に語りかけているのだと思いました。そして水場は煮えたぎりました」と彼は映画の中で語る。
オーストラリアでは今も火災が続く
60年以上後のオーストラリアの状況との類似は見逃せない。今も燃え続ける森林火災は、1,030万ヘクタールを超える土地を焼き尽くし、30人の命を奪い、推定10億匹の動物を死なせた。
オーストラリアの火災の規模、速さ、広がりは特に憂慮すべきものだ。ニューサウスウェールズ州だけで焼失した面積は、近年カリフォルニア、インドネシア、ブラジルで発生した火災の焼失面積を合計したものよりも大きい。火災はシーズンの早い時期に始まり、急速に広がった。最近の大雨にもかかわらず、当局は、今シーズンの火災は「まだ何か月も続く」と警告している。
科学者たちは、気候変動がオーストラリアや世界各地で火災を助長する、異常な高温と乾燥を引き起こしたことに「疑いの余地はまったくない」と、現在述べている。さらに、気温はかつてないほど高く、上昇を続けている。温暖化を抑えるために緊急の行動を取らなければ、火災のシーズンはさらに深刻化する。
「新たなリーダーが必要な時」
2020年1月20日、世界経済フォーラムは、包摂的で持続可能な変革への貢献を通じて世界の状況を改善している4人のアーティストに、第26回クリスタル賞を授与した。
この授賞式を皮切りに、世界経済フォーラムの第50回年次総会が始まった。テーマは、「結束と持続可能性のある世界のためのステークホルダー」。
気候変動と、政府や企業がどう対応すべきかは、政府、ビジネス、市民社会から集まった3,000人の参加者の間で主要な議論のテーマとなっている。
ウォールワース氏は、いくつか助言をした。
「今は新たなリーダーが必要な時です。若者のリーダー、女性のリーダー、先住民族のリーダー、そして彼らと協力できる人々が求められています」と、彼女は受賞スピーチで続けた。「世界はすでに変わりました。言葉に尽くせないほど変容しています。そして、この重大な変化は続くでしょう。文字どおり、どこまで変わるのかは、まだ分かりません。」
彼女は力強い警告で締めくくった。「しかし、私たちに分かっているのは、ここまで私たちを導いた人々が、地域社会より企業を、共有される人間性より特権と権力を、価値観より帳簿を選んできたということです。今、絶滅が進んでいます。役目を終えた古い仕組みが死につつあるのです。最後の激しいあがきがどれほど強大に見えようとも、恐竜のような産業は消えていくでしょう。今まさに消えつつあります。」

ウォールワース氏は、世界経済フォーラムのバーチャルリアリティと拡張現実に関するグローバル・フューチャー・カウンシルのメンバーである。

