インドは、経済成長と10億人を超える国民の人間開発の両面で、転換点に立っています。同国は世界第6位の経済大国で、2017年のGDPは2.6兆ドルでした。世界経済成長の主要な原動力であり続けるインドの2019年のGDP成長率は、ほぼ7.5%と予測されています。世界最大の民主主義国家であり、人口では世界第2位の同国には、約13億5,000万人が暮らし、数十万に及ぶ大都市、小さな町、農村地域に広く分布しています。
世界経済フォーラムのインサイト・レポート「急成長する消費市場における消費の未来:インド」は、ベイン・アンド・カンパニーとの協力のもと、所得の増加と、幅広い成長および利益の分配を軸とする将来像を描いています。インドでは中間層が拡大し、約2,500万世帯が貧困から抜け出しています。
同レポートは、インドの消費の未来について全体として明るい見通しを示す一方、将来に秘められた大きな経済的潜在力を引き出すには、主要な人間開発指標の向上を加速し、持続させるとともに、包摂的な発展を目指す必要があると強調しています。
未来は、インドが次の3つの大きな課題に取り組む機会をもたらします。
1. 将来の労働力に向けた技能開発と雇用
世界経済フォーラムのレポート「仕事の未来2018」によると、将来の人材需要に応えるため、インドの労働者の半数以上が2022年までにリスキリングを必要とします。平均して、一人当たりさらに100日間の学習が必要です。
雇用に必要な技能をめぐる課題には、4つの側面があります。第一に、教育制度は、就業可能性を高める実践的な技能よりも、概念的な知識の習得に重点を置いています。第二に、インフォーマル経済の雇用はフォーマル経済より多く、80%対20%となっています。第三に、雇用機会には州や地域による格差があります。第四に、インドの労働年齢女性の労働力参加率は世界でも最低水準の一つで、約25%です。
さらに2030年を見据えると、インドは中央値年齢が31歳の比較的若い国であり続けます(中国は42歳、米国は40歳)。また、労働年齢人口の増加数は、どの国よりも多くなる見込みです。今後10年間、インドでは毎年約1,000万~1,200万人の労働年齢人口が増え、「労働年齢人口が多数を占める」社会になります。そのため、想定される所得の成長、ひいては消費の成長を実現するには、適切な技能と実りある雇用を提供するための大規模な取り組みが必要です。企業、学術界、非営利団体、政府のリーダーを含む、あらゆる関係者の主導が求められます。
求められる取り組み
課題の規模に対処するには、官民連携を含め、国、州、地方の各レベルで介入し、現在および将来の労働力に適切な技能を身につけさせ、再訓練する必要があります。一例として、全国規模のインド技能ギャップ解消タスクフォースがあります。これは2018年10月、世界経済フォーラムとの協力のもと、技能開発・起業促進省が立ち上げました。同タスクフォースは、企業、政府、市民社会、教育・訓練分野のリーダーを集め、インドの技能ギャップに対処する行動計画を策定します。そのために、教育・訓練制度が労働市場の新たな需要に対応し続けられるようにします。
2. インド農村部の社会経済的包摂
2030年までに、インド人の40%が都市住民になります。一方、所得構成が似通い、都市部のインド人と願望が急速に近づいている小規模な都市(人口5万~10万人)が5,000以上、開発が進んだ農村の町(人口5,000~1万人)が5万以上になる見込みです。下図は、インドの都市部と農村部の人口分布について、2005年、2018年、および予測される2030年の状況を示しています。

現在、インドの農村部に暮らす人々の願望を妨げているのは、重要な「アクセス」上の障壁3つです。第一に、物理的な接続性の制約(全天候型道路や電力へのアクセスなど)、第二に、デジタル接続性の不足(インターネットへのアクセスなど)、第三に、金融包摂の不足(商業銀行や銀行口座の利用など)です。
インド農村部では所得が増え始めているかもしれませんが、都市と農村の格差が縮小しなければ、それに見合う生産性の向上や包摂につながらない可能性があります。2030年には農村人口が約60%を占めると見込まれるため、これは国民に奉仕する政府だけでなく、インドで新たな機会や成長市場を探す企業にとっても、極めて重要な課題です。
求められる取り組み
優先度の高い課題は、物理的およびデジタルのインフラ整備です。農村住民が、所得やニーズ、願望に合った製品やサービスを利用できるようにする必要があります。政府はすでに、主要なデジタル・インディアなどの旗艦プログラムを進めています。これは、デジタル技術で力を得た社会と知識経済へと国を変革する構想で、ブロードバンド接続やモバイル接続への普遍的なアクセスなど、重要なプログラムの柱を中心に据えています。また、行政手続きの「対面不要、ペーパーレス、キャッシュレス」化などの役割も掲げています。
こうしたデジタル・金融分野の革新的なプログラムを継続的かつ効率的に実施し、物理的インフラの改善(近隣都市への道路接続や、すべての農村世帯への安定した電力供給)を進めることは、インドの包摂的な成長を実現し、さまざまなレベルで都市と農村の格差を真に埋める重要な推進力となります。
3. 健康で持続可能な未来
インドは前進を続け、ポリオ根絶など主要な保健目標を達成してきましたが、健康と持続可能な暮らしをめぐる新たな課題に直面しています。深刻な渋滞や汚染に悩む都市と、不健康な人々は、インドの人口ボーナスと都市成長の恩恵を大きく損ない、国民の生活の質を急速に低下させるおそれがあります。
マクロレベルでインド国民の健康と都市の住みやすさを向上させるには、2つの重要課題を解決しなければなりません。第一に、医療サービスへのアクセスと利用しやすさ全般を改善する一方で、非感染性疾患(NCD)の増加に対処することが不可欠です。NCDは、現在、インドの全死亡の63%を占めています。不健康な食事や生活習慣の選択を背景に、NCDは都市部と農村部の両方で、また所得層を問わず増加しています。
第二に、大気・水質汚染、廃棄物管理、都市の交通渋滞をめぐる差し迫った危機に早急に対処しなければなりません。大気・水・廃棄物・渋滞の課題のうち、大気汚染だけを見ても、その深刻さを示す例として、世界で最も大気汚染の深刻な10都市のうち9都市がインドにあり、首都ニューデリーもその一つです。

求められる取り組み
インドは伝統的に、「持続可能で意識的な消費」を重んじる経済でした。企業、政府、市民社会が協力し、インドの人々を持続可能で健康的な暮らしの原点へと立ち返らせる必要があります。住居、道路、交通サービス、包装商品への需要の増大と、それが環境に及ぼす影響を調和させるため、最高レベルでの政策的取り組みが求められます。経済成長を維持し、大気の質や地下水資源を管理し、廃棄物を削減することは、あれば望ましいという程度の選択肢ではありません。インド国民の生活の根本的な質を左右します。
想定される成長の新時代を迎える今、インドのすべての人々が一丸となり、今日この国が直面する最も差し迫った社会課題、すなわち技能開発と雇用創出、インド農村部の社会経済的包摂、そしてすべての国民のための健康で持続可能な未来の構築に取り組む時です。こうした課題への協働、とりわけ官民連携は、若く、進歩的で活力ある国の潜在力を余すところなく引き出し、インドを世界の急成長する消費市場の手本にすることができます。
このブログは、世界経済フォーラムがベイン・アンド・カンパニーと協力し、2019年1月に発表したインサイト・レポート「急成長する消費市場における消費の未来:インド」をもとにしています。


